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キミは人間の交尾の仕方を知ってる?

 カインさんが戻ってくるのを、わたしはベッドの上で寝転がりながら待っていた。

 離れるのは少し寂しい気持ちもあったけど、同じ家の中だからすぐ戻ってくると思うし、フカフカなベッドの魅力に逆らえないのもあった。

 それに、なにやらお仕事っぽい雰囲気もあったから、カインさんのお邪魔になったら悪いし。


 それでもやっぱり、近くにいないと物足りなさを感じてしまう。

 あの人間の家だというこの部屋は広いし、明かりも明るすぎるくらいについていたけど、一人の夜は寂しい。

 やっぱり一緒に行けばよかったかも。


「カインさん、早く帰ってこないかなあ……」


 思わずそんなため息をもらす。

 すると、まるで私の願いを聞いていたかのようなタイミングで部屋の扉が開いた。


「カインさん! おかえりなさ……」


「やあただいま。カレじゃなくて悪かったね」


 入ってきたのはあのドラゴンだった。

 そういえば人間好きなこのドラゴンは、この家に興味があるからとかいって探検に出ていたんだっけ。

 どうでもいいからすっかり忘れていた。

 わたしはがっくりと枕に顔を埋める。


「せっかくカインさんが帰ってきたと思ったのに、喜び損です」


「カレなら一番上の部屋で話し込んでいるみたいだったから、もう少しかかるんじゃないかな」


「うう……。そう聞いたらよけいガマンできなくなってきました……」


 一秒でも早くカインさんの匂いをかいで、体温を全身で感じたい。

 今すぐにでもカインさんのもとに向かおうかな。

 でもお仕事の邪魔をするわけには……。うう……。


 もだえていると、ドラゴンはわたしが寝ころぶベッドのそばにやってきた。

 なにやら意味ありげな笑みを浮かべている。


「……なんですか」


「キミは人間の交尾の仕方を知ってる?」


 急に聞かれて、とっさには答えられなかった。


「詳しくは知らないです……。カインさんにはいつも気持ちよくしてもらっていますから、きっとこれが交尾なんだって思ってたんですけど、いつも受精させてくれませんし……」


 わたしはいつでも細胞分裂の用意はできているんだけど。

 すると、ドラゴンがさらに笑みを深めた。


「実はね、この街をあちこち探検してたくさんの人間を観察してきたから、人間の交尾の仕方が少しだけわかったんだ」


 その言葉に興味を引かれて、わたしは体を起こした。

 カインさんとは、いつかちゃんと交尾の仕方を教えてもらう約束をしている。

 だからその日まで待つつもりだったけど、事前にちゃんとした知識を得ておくのも悪くはない。

 もしかしたら初めての交尾では失敗して、うまく受精できないかもしれないし。


「人間の交尾はどうやるんですか」


「ふふ、知ってるかい。人間は本当におもしろいんだ。ライムは、交尾はなんのためにするか知ってる?」


「もちろん子供を作るためです」


「そうだね。ボクもそう思ってた。でも人間は違う。子供を作る気がないのに交尾をするんだ」


 その言葉にわたしは混乱した。


「どういうことですか?」


 交尾とは子作りのための行為だ。

 他に理由なんてないはず。

 子供を作るため以外に交尾をする理由なんてあるのだろうか。


「ふふふ。それどころか、人間は雄同士、または雌同士でも交尾をするんだよ」


 わたしはますます混乱した。


「人間は雌雄同体ということですか???」


 でなければ同姓で交尾なんてできないはずだ。

 ドラゴンはゆるやかに首を振る。


「わからないよ。だからわかりたいんだ」


 そういってベッドの上に乗り、わたしの方へとにじり寄ってくる。

 口元を妖しい笑みの形に変えた。


「キミは雌同士の交尾に興味はないかな?」




 アルフォードさんとの打ち合わせを終えて僕が部屋に戻ってくると、ベッドの上にはライムとエルが仲良く並んで眠っていた。

 いつの間にかエルも帰ってきていたみたいだね。

 ライムはエルを敵視している様子もあったんだけど、この感じだと仲良くなったのかな?

 それはとてもいいことだと思う。


「それにしても……」


 ライムはなんだかぐったりとシーツの海に沈み込んでいて、エルはどことなくつやつやとした表情をしていた。

 それにぐっすりと眠っている。

 まるで激しい運動のあとみたいだ。


「いったいなにがあったんだろう」


 理由はわからなかったけど、もう夜も遅かったし、とりあえず二人に布団を掛けてあげて、僕はソファで寝ることにした。

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