進捗状況報告
なんだかんだあったけど、最終的にはアルフォードさんの家にお世話になることになった。
やっぱり女の子の家に泊まるのは色々と問題があると思うからね。
なのでさっそくアルフォードさんの家に招かれたんだけど、その前に用事があるといって一度別れたんだ。
そしてやってきたのは、フィアと打ち合わせをしたあの店だ。
進捗状況として、素材を手に入れたら報告することになっていたんだ。
お店の人に話をすればフィアに連絡が行くとのことだったので、店員さんに話をして、奥の席で待たせてもらうことにする。
フィアはできるだけ人に見られたくないからと僕一人で来てほしがっていたけど、ライムがそれを許すわけもないので一緒に来ていた。
そのかわりエルは先にアルフォードさんの家に行ってもらっていたけど。
まあライムは前回も一緒だったし、これくらいならフィアも許してくれるよね。
しばらくして、黒い服に身を包んだ妖艶な女性が現れる。
フィアは僕らを見ると少し驚いたように立ち止まった。
「まさかとは思いましたけど、本当にこんな早く、しかも無傷で帰ってくるなんて……。疑うわけではありませんが、素材を見せてもらってもよろしいですか?」
「もちろん。これだよ」
アダマンタイマイの甲羅を取り出す。
本当に持ってきたこと、そして粉末ではなく薄切りの状態であることで、フィアは二度驚いた。
「まさかこれほどとは……。念のためにおたずねしますが、採取の最中に何者かに襲われませんでしたか?」
「確かに変な人に襲われたけど、よく知ってるね」
「ワタクシにも独自の情報網がありますので。それで、襲われはしたものの、無事だったんですね」
「うん、みんなに助けてもらったからね」
「あんな程度ならわたしの相手じゃないですよ!」
ライムが頼もしいことをいってくれる。
「あのときは助けてくれてありがとう」
「カインさんのためなら当然です! でもほめてもらうのはうれしいのでもっとほめてください~」
「うん、ありがとうライム」
頭をなでてあげると、ライムの表情がデレデレに崩れた。
本当に溶けちゃったらフィアにライムの正体を気づかれるかもしれないので、程々でやめておく。
フィアはそんな僕らを少しだけ鋭い視線で見つめていた。
「そうですか……。あれでもかなり上級の使い魔なのですが、相手になりませんか……。やはりワタクシが直接……」
「え? なにかいった?」
「いいえ。大したことではありません。やはりアナタの実力は本物なのですね」
「僕の力じゃないよ。ライムやシルヴィア……、他にも色々な人が助けてくれた。みんなのおかげだよ」
「フフ、謙虚なのですね。人とのつながりもまたアナタの力でしょう。ワタクシだってそうです。自分一人の力じゃない、力を貸してくれるお方がいる。それもまたワタクシの力といえるでしょう」
冒険者だって一人じゃなくて、パーティーを組むのが普通だしね。
そう考えたら、確かにそういえるのかもしれない。
「それで、素材としてはそれで平気そうかな」
「もちろんですわ。これ以上ない完璧な素材です。次の素材も期待して待っていますわね」
「次は生命の水かな」
必要となる三つの素材の中で、一番難しいと思われるものだ。
なにしろ存在する正確な場所も、入手方法も、なにひとつわかっていないからね。
いくつかの数少ない記録と、真偽も定かではない伝承を頼りに探すことになる。
今までで一番苦労することになりそうだ。
「フフ、その際にはワタクシも微力ながらお手伝いさせていただきますわ」
「むむっ、カインさんの身はわたしが守りますから、あなたの力は必要ないですよ!」
ライムの対抗意識に、フィアが微笑を浮かべて返す。
「もちろんワタクシに戦う力はありませんから、そこはお任せいたします。むしろ一緒に守ってもらいたいくらいですわ」
「うん、そのときはよろしくねライム」
「……カインさんがそうおっしゃるのであれば……」
ものすごく嫌そうながらもうなずいてくれた。




