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人とドラゴンの共生

 ライムが僕の顔を覆うように抱きついてなかなか離してくれなかったけど、今はちょっと落ち着いて腕に抱きつく形に戻ってくれた。

 といってもなんだか怒っていることには変わりなかったんだけど。


「やっぱりカインさんはすぐ浮気します!」


「ええ……。浮気なんてしたことないと思うけど……」


 それともさっきまでのはライムにとっては浮気になってしまうのだろうか。

 そもそも僕らは付き合っているわけではない……と思うし……。

 じゃあなんなのといわれたら説明に困るんだけど……。


 ライムはまだ怒ったように僕の腕をつかんで離さない。

 ニアはなにやらニヤニヤしながらイスに座っているし、シルヴィアは放心した表情でイスの上に腰を落としている。

 普通にしているのはエルくらいだった。


「そういえばエルは今までどこに泊まっていたの」


 今までこの王都にいたっていってたけど、僕でも泊まるところはなくて困っているくらいだ。

 いきなり王都にやってきたエルは、なおさら困ったんじゃないだろうか。

 そう思ったんだけど、エルはそうでもないみたいだった。


「平気だったよ。人間に泊まるところがなくて困ってるっていったら、みんな泊めてくれたから」


「えっ。それは、知らない人にお願いしたってこと?」


「そうだよ」


「それは、その、平気だったの……?」


 エルみたいなかわいい子が知らない男の人に泊めてもらうなんて危なすぎる。

 なんて考えたんだけど、エルは静かに微笑して答えた。


「ちゃんと人間の習性に合わせて雌に頼んだよ」


「そうなんだ。それならとりあえずは安心かな」


「キミが前に、人間の雄に誘われてもすぐについていったりしたらダメだよ、といってたからね」


 そう答えるエルはどことなく自慢げだった。

 エルは人間が大好きで、人間のように生活したいからいつも勉強している。

 普段はあまりはっきりとは感情を表したりはしないんだけど、人間のように振る舞えるととてもうれしそうにするんだよね。


「そうだね。それなら安心だよ」


 むしろ同じ女性だからこそ、一人で宿もないエルのことを心配して泊めてくれたのかもしれないね。

 まあエルなら危険なことに巻き込まれても心配はないんだけど……。


 それでもやっぱり、女の子が一人で出歩いていたら危ないし、知らない男の人の家に泊まってたなんていわれたら心配になってしまう。


 特にエルは人間の生活について詳しいわけではないからね。

 ライムよりは落ち着いて見えるけど、その分なにをするのか読めない危うさがある。

 王都に着いたときも、いきなり駆けだして探検に行っちゃったくらいだし。

 いきなり、人間の子供を作ってみたかったんだ、とか言い出しかねない怖さはあるよね……。


「いくらボクでもそんなこといわないよ」


「うわっ、僕の考えてることがわかったの?」


「人間の感情がある程度はわかるからね。それにキミのことはよく見てるから、他の人間以上にわかるんだ」


「カインさんはわたしのですよ! ドラゴンなんかには渡しません!」


 ライムが強く僕を抱き寄せる。

 おかげでイスから落ちそうになってしまった。

 エルは薄い微笑を浮かべたままだった。


「ふふ、大丈夫だよ。ライムからカレを取ろうなんて思ってないから」


「ほんとうですか?」


「もちろん。ボクは人間にあこがれているけど、人間にはなれないこともちゃんとわかってるから。だからキミたちには特に注目してるんだ。人間と、人間以外の種族がどうやったら仲良く暮らせるのか知りたいからね」


 その言葉を聞いて僕は少し感動すると共に、エルのことを侮っていたと反省する。

 エルはエルなりにちゃんと人間との共生のことを考えていた。

 なのにエルはまだ人間のことを知らないからと決めつけてしまっていたんだ。

 決めつけていたのは僕の方だったね。


 ライムが警戒しながらも少し首を傾げる。


「つまり、どういうことですか?」


「キミたちみたいな夫婦になりたいってことだよ」


 エルがそう答えると、ライムの表情がデレデレになった。


「え~、それってつまりわたしとカインさんがラブラブの夫婦に見えるってことですか~? そんなこといわれると照れちゃいます~」


 照れるといいながらとてもうれしそうだった。

 というかいつもそうだけど、ラブラブの夫婦って、そんな言葉どこから覚えてきたんだろう……。

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