まあカイン殿だからな
「カイン様、これはなんですか?」
納品した素材をまとめていた職員のお姉さんが、別の荷物に気がついた。
「ああ、そっちは今回の納品用とは別に採ってきた素材なんだ」
「中を見せてもらってもいいですか?」
「うん、もちろんいいよ」
別に隠してたわけじゃなくて、混ざるとわかりにくくなるかなと思ってわけてただけだからね。
それでは失礼します、といってお姉さんが中身をテーブルの上に取り出した。
出てきたのは乾燥させた千年苔や、念のために持ってきた苔周辺の土、その他の珍しい食材などだ。
「本当に千年苔も手に入れたのですね……」
お姉さんが声を漏らす。
驚いたいうよりは、どこか苦笑気味だった。
他にも色々見ていたけど、やがて薄い円盤状のものを手に取った。
「カイン様、これは? 初めて見るものですが……」
「ああ、それはアダマンタイマイの甲羅だよ」
「なるほど、アダマンタイマイの……ええっ、アダマンタイマイの甲羅ですか!?」
ものすごく驚いた。
「アダマンタイマイの甲羅っていったら普通は硬くて切れないから、削った粉末になるじゃないですか! それをこんな、まるまる切って持ってくるなんて聞いたことありません……。鑑定結果は……もちろん本物ですよね……」
そりゃまあ本物だからね。
とはいえ驚くのも無理はないかな。
実際こんなに早く見つけられたのも、甲羅をこんな形で切り取って持ってこられたのも、全部ライムのおかげだからね。
僕一人だったらなにもできなかった。
ちなみにシルヴィアたちは気にしていないみたいだった。
甲羅の薄切りを珍しそうに見ている。
「へー、アダマンタイマイの甲羅ってはじめて見ましたけど、こんな感じなんですね」
「硬いといわれているが、これほどの薄切りでもこの硬さか。生半な剣では傷ひとつ付けられないというが、やはりライム殿が切ったのか」
「はい、カインさんがほしいというので、ちょっとだけ切ってきました」
ニアとシルヴィアも見るのは初めてみたいで、興味深そうに持ったり叩いたりしている。
そんな風に和気藹々と話す僕らだったけど、職員のお姉さんは信じられないみたいだった。
「あの、みなさんは驚かれないのですか?」
「驚く? なにをだ?」
「だって、アダマンタイマイの甲羅なんですよ? それをこんな風に切って持ってくるなんて、前代未聞といいますか……。私もこの仕事はそれなりにしていますけど、こんなのははじめて見たのですが……」
お姉さんの言葉に対して、ニアとシルヴィアが苦笑したように顔を見合わせただけだった。
「まあ師匠ですし」
「まあカイン殿だからな」
あっさりと答える二人に、お姉さんは絶句したまま声を失っていた。
「セーラからも話は聞いていたのでカイン様の実力を疑っていたわけではないのですが……、隠れSSランクといわれる理由がわかった気がしますね……」
「えっ、僕そんな風に思われてたの?」
「最初にいったじゃないですか。カイン様は冒険者協会の中では有名なんですよ。今回のことで、ますますファンが増えるかもしれませんね」
そういえば確かにそんなことをいってた気がしたけど、まさか本当だなんて思わなかったからなあ。
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