仲がさらに良くなっている
王家の門に戻ってくると、待機していた馬車に乗って王都に戻ってきた。
御者のおじさんは、まさか僕たちが一日で戻ってくるなんて思ってなかったらしくて、すごく驚いていた。
マイヤーもいってたけど、一ヶ月はかかるって思ってたみたい。
ちなみにライオネルとマイヤーは、そのまま王家の丘の詰め所に残るみたいだった。
丘の警備も騎士の仕事だから、もうしばらくは詰め所に二人で寝泊まりするんだって。
騎士の仕事も大変なんだなあ。
そういうわけで、僕たちだけで王都の停留所に戻ってきた。
さっきまで大自然の中にいたから、行き交う人々の喧噪がなんだか懐かしい。
「人間の街はやっぱりにぎやかですね。それで、これからどうするんですか」
「とりあえず冒険者協会に向かおうか。先に済ませたい用事もあるからね」
僕は王都を出発する前に、冒険者協会にいって王家の丘に向かうことを伝えていた。
滅多に行ける場所じゃないから、素材系のクエストでなにか役に立てることがあったら、ついでに一緒にこなしていこうと思ったんだ。
だからそのクエスト達成の報告と素材の納品をすませたいんだ。
冒険者協会の扉を開けると、相変わらずの喧噪が響いてきた。
停留所のにぎわいとはまた別の、活気のある声だ。
冒険者は血の気の多い人がたくさんいるからね。
そういう人が集まる冒険者協会も、自然とそういう雰囲気になる。
協会内を見渡していると、見知った人がいることに気がついた。
向こうも僕に気がついたみたいで声をかけてくる。
「師匠! もう帰ってきたんですね」
「さすがはカイン殿だ。信じてはいたものの、まさか本当に戻ってくるとは」
「ニアとシルヴィアも! こんなところでどうしたの」
まさか二人にこんなところで会うなんて思わなかったから、とても驚いた。
「カイン殿のことだから、千年苔くらいなら一日で手に入れて戻ってくるだろうと思ってな」
「さすが師匠です。普通なら一ヶ月はかかるはずなのに、本当に一日で戻ってくるなんて」
「それでわざわざ来てくれたの? 本当に戻ってこれるかもわからないのに。ありがとう二人とも」
お礼を言うと、二人ともそろって顔を赤くしてうつむいた。
「だって、少しでも早く師匠に会いたくて……」
「カイン殿に会えるかもしれないと思うと、いても立ってもいられなくてな……」
なにやら二人ともつぶやいているんだけど、声が小さくて聞き取れなかった。
「でもすぐに見つけられたのは僕の力じゃなくて、ライムのおかげだよ」
「ニアちゃんとシルヴィアと会うのもなんだか久し振りですね!」
僕に抱きついたまま上機嫌に挨拶するライム。
いつもならニアやシルヴィアがいると警戒するんだけど、今日は全然気にならないみたいだった。
ちなみに王都についてからここにくるまで、ずーっと僕の腕に抱きついたままだ。
馬車の中でも離してくれなかったから大変だったよ。
ニアとシルヴィアが、そんな僕らを見て同時につぶやいた。
「仲が……」
「さらに良くなってる……」
なんだかうろんな目つきになっていた。
「あの、師匠? お二人の仲がいいのはいつものことなのですが、今日はその、一段と距離が近いといいますか……」
「二人のことを私がどうこういうつもりはないのだが、なんというかその、二人のあいだになにかイイコトでもあったのだろうか……?」
「いいこと……?」
ライムがその言葉を口にすると、にへらーっと表情をとろけさせた。
「……えへへへへ~」
見てる僕が恥ずかしくなるくらいのデレデレな笑みを浮かべる。
そんなライムの表情を見て、ニアとシルヴィアがますます表情を曇らせた。
「二人きりの小旅行……」
「大自然の中で開放的になる二人……」
「縮まる距離……」
「犯される過ち……」
なにかを確認するように二人でつぶやきあっている。
気のせいか、二人の仲が良くなってるようにも見えるよね。
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