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陸亀のスープ

 さっきのような襲撃者対策として、マイヤーが結界を張ってくれた。


「これでさっきの使い魔が入ってくることもないわ」


「そんなこともできるんだ。すごいね」


「一応シルヴィア隊長の騎士団に所属してるからね。まあまあ優秀なのよこれでも。カインやライムたちに比べたら全然だけど」


「そうです! カインさんはなにがあってもわたしが守るんですから、気にしなくて平気ですよ!」


「そういえばさっきもライムが守ってくれたんだっけ。ありがとう。おかげで助かったよ」


「わたしの命はカインさんに救ってもらったんですから、カインさんの命をお守りするのは当然のことです! でもカインさんにほめてもらえるのはうれしいので、もっとほめてください~」


「うん、ありがとうライム。いつも助けてもらって感謝してるよ」


「えへへ~」


 頭をなでてあげると、デレデレの表情になった。


「お二人は本当に仲がいいですね」


 ライオネルがどことなくうらやましそうにつぶやいた。




 いろいろあったあと、料理を再開することにした。

 といっても、すでに甲羅は水に入れて火をかけているし、スープの味付けもすんでいるから、ほとんど完成している。

 後は甲羅が煮えて柔らかくなるのを待つだけだ。


 それからさらにしばらくして、出来上がりを確認した僕はうなずいた。


「……うん、これくらいでいいかな」


「完成ですか!?」


 待ちきれないといった様子のライムが勢い込んでたずねてくる。

 甲羅の姿煮なんて初めてだったから、柔らかくなるまでこんなに時間がかかるとは思わなかったんだよね。

 そのせいでだいぶ待たせちゃったけど、そのぶん美味しくできたと思う。


 柔らかくなった甲羅を四つに切る。

 あんなに硬かった甲羅はゼリーみたいに軟らかくなってて、味もばっちり染み込んでいる。

 スープと一緒に器に盛りつけると、みんなに配った。


「はいライム」


「ありがとうございます! はあ~、匂いだけでもう美味しいです~」


 器から立ち昇る匂いを堪能したあと、中身の甲羅をすくい上げた。

 軟らかく煮込んだアダマンタイマイの甲羅は、持ち上げると、甲羅だということも忘れるほどプルンプルンに震えていた。


「はわぁ~、生きてるみたいですぅ~」


 ライムが目を輝かせながらそれを口に運んでいった。

 噛みしめるごとに表情がトロトロに溶けていく。


「んん~! 歯ごたえがプルップルで味も染み込んでて、とっても美味しいですぅ~」


 至福の表情を浮かべている。

 良かった、満足してもらえたみたいだ。


「じゃあ、こっちはライオネルとマイヤーの分ね」


「えっ、私たちの分もあるんですか」


 なぜだかライオネルがとても驚いていた。


「もちろんだよ。ライオネルたちだけ無いなんてそんなひどいことはするわけないし、それにご飯はみんなで食べたほうが美味しいからね」


「アダマンタイマイの甲羅といえば、食べるだけで能力が上がるともいわれる高級素材……。それをこんな簡単に振る舞えるなんて……」


「お金よりも、みんなに喜んでもらえることのほうが僕はうれしいから」


 確かにこれを売れば大金持ちになれるのかもしれない。

 でも僕はそういうのはいいんだ。

 それに、たくさんのお金があっても使い道なんて思いつかないし……。


 気がつくとライオネルが僕に尊敬のまなざしを向けていた。


「カイン様はさすがですね。シルヴィア隊長が、騎士の鑑だというだけのことはあります」


「ええっ、そうかな。そんなに大したものじゃないと思うけど」


 僕はただみんなの分のご飯を作っただけなんだけど……。


「いえ、カイン様のおかげで、私もまだまだ修行が足りないと気づくことができました。ありがとうございます」


 なぜだかそんなことまでいわれてしまう。

 相変わらずライオネルは固いわねえ、とマイヤーがとなりで笑っていた。

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