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レベル1でドラゴンを戦闘不能にするたった1つの方法

「ドラゴンをパンチで倒した……? 君は、いったい何者なんだ……!?」


 アルフォードさんの驚愕の声が聞こえる。

 あんなのをいきなり見せられたらそりゃそうだよね。

 知ってた僕だって驚いたくらいなんだから。


「わたしですか? わたしはライムといいます! カインさんに付けてもらった名前なんですよ」


 元気いっぱいの答えに、アルフォードさんも面食らったみたいだった。


「あ、ああ。ライム君というのか。そうか、よろしく。しかし、私が知りたかったのは名前ではなく……。それにカイン君に名前を付けてもらったというのは、いったいどういう……。子供にも見えないし……」


「……?」


 ライムが首を傾げる。

 アルフォードさんの疑問が理解できてないみたいだ。

 二人の誤解を解いてあげたかったけど、今は説明している暇はない。

 急いで倒れたドラゴンのそばに向かう。

 血走った目が僕をにらみつけ、口のあいだからは炎のブレスが漏れていた。

 近づく奴には容赦しないぞというサインだ。これ以上近づいたらあっという間に丸焦げにされてしまうだろう。


「カイン君!? 手負いのドラゴンは危ない、逃げるんだ!」


 アルフォードさんの叫び声が聞こえる。いつのまにかライムもすぐ横に立っていた。

 ドラゴンは警戒しているけど、それ以上攻撃してくる様子もない。きっとライムを警戒してるんだろう。

 じゃあ今のうちだ。

 ここに来るまでのあいだに調合しておいたもう一つのアイテムを取り出す。

 さっきと同じ薬草だけど、こっちはドラゴンに合わせて少しだけ特殊な加工をしてあるんだ。


 火を付けて地面におくと、薄い煙が風に流れてドラゴンの鼻孔を通じて体内に入っていく。

 血走っていた目がとろんとしはじめ、やがてゆっくりと閉じていった。


「よかった。ちゃんと効いたみたいだ」


「カインさん、これは?」


「眠り薬だよ。ドラゴンだって生きてるんだ。無理に命を奪うようなことはしたくないからね」


 気がつくと、ライムがいつもニコニコしている笑顔をさらにニコニコとさせて僕を見ていた。


「どうしたの?」


「やっぱりカインさんステキです。えへへ」


「そ、そう? ありがとう」


 それがどうして笑顔につながるのかわからないけど。

 今までのライムにとっては、きっと戦うことが当たり前だったのかもしれない。

 でもこれからは、そういう殺伐とした生き方じゃなくて、もっと普通の女の子らしい毎日を送らせてあげたいんだ。


 ……あれ? 僕、今……。


「なんだ? 眠った、のか……?」


 アルフォードさんが恐る恐るといった様子で近づいてくる。


「眠り薬をかがせましたから、しばらくは目を覚まさないと思います」


「ドラゴンに睡眠薬……? そもそも竜族に状態異常が効くなんて聞いたこともないが……」


 竜の鱗はあらゆる攻撃を跳ね返し、魔術的な効果も無効化する事で有名だ。

 睡眠や麻痺の攻撃もまず無効化されてしまう。

 だから全部無効だと思っている人は多い。


「でも、ドラゴンだって生きてるんですから、眠ることもあるし、お腹が空けばご飯も食べます。眠らないわけじゃないんです。

 だから、眠り薬の中に鎮静効果のある薬草と、ドラゴンが好む果実を混ぜたんです。人間でも同じようなお香をたくことでリラックス効果が出て眠りやすくなるでしょう。ドラゴンだって、そうすることで効きやすくなるんですよ」


 ドラゴンは静かな寝息をたてている。

 リラックス効果のある薬草がよく効いてるみたいだ。


「ドラゴンって強い魔物として有名ですけど、本来は無差別に人間を襲うようなモンスターではないんです。だけど攻撃を受けて興奮していたり、怯えているときなんかは我を忘れて暴れてしまうことがあります。そういうときにはこの眠り薬を使うことにしているんです」


 僕がドラゴンの鼻先をなでると、気持ちよさそうにぶるるっと身じろぎをした。

 そこには先ほどまでの興奮した様子は感じられない。

 その様子をアルフォードさんは呆然と見つめていた。

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