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アダマンタイマイの甲羅

「あれがカインさんの探していた亀ですか?」


「うん、そうだよ。ありがとうライム」


「えへへー、カインさんのお役に立ててうれしいです!」


 ライムが無邪気な声を上げる。

 その声は広い洞窟内に反響したけど、奥にいるアダマンタイマイは反応を示さなかった。

 大きな頭を伸ばしたまま地面に寝そべっているから、警戒してるわけでもなさそうだ。


 アダマンタイマイは一日に一歩しか動かないといわれるほどのんびりしているからね。

 いくらなんでもさすがにそんなことないと思うんだけど、いきなりねぐらにやってきた僕らのことを気にしていないのは確かみたいだ。


 遠くからでも大きいと思ってたけど、近くで見るとさらに迫力がある。

 手足がなかったら、本当に岩と間違えていたかもしれないね。


「じゃあさっそく甲羅をもらおうか。ちょっとだけ削らせてもらうね」


 甲羅に手をふれながら声をかける。

 アダマンタイマイは瞳を開いて僕の方を一瞬だけ見たけど、すぐに閉じてしまった。


 アダマンタイマイは非常におとなしいモンスターだ。

 その甲羅は非常に固く、どんな攻撃も全く効かないため、そもそも戦う必要がない。

 だからこうしてのんびりしているんだろうね。


 僕は加工用の工具を取り出した。


「カインさん、それはなんですか」


「これはアダマンタイマイの甲羅を削るための道具だよ。この甲羅はとても固いからね。これで削って持ち帰るんだ」


 ゴツゴツした甲羅に道具を当てて削るように動かす。

 落ちる粉をこぼさないように受け取っていると、やがて道具の方がダメになってしまった。


「もう壊れちゃったんですか?」


「固い甲羅を削っているからね。道具の方が先に壊れちゃうんだ」


 そのために予備の道具をいくつも持ってきてある。


「ライムもやってみる?」


「はい! でも、この甲羅を削ればいいんですよね?」


「そうだけど……」


「ならこっちのほうがいいです」


 そういうと、いつのまにかライムの手に一本のナイフが握られていた。


「えっ、今どこから……」


 そばで見ていたマイヤーが驚きの声を上げた。


 最近ライムは料理の勉強を僕としていたため、自分の一部をナイフに変えて持つことが出来るようになったんだ。

 知らない人が見たら、いきなり手の中に出現したように見えちゃうかもしれないね。


 そんなマイヤーの驚きを気にすることなく、ライムは自身の刃を甲羅に当てる。

 まるでバターを切るように、スッと薄い円盤状の甲羅が地面に落ちた。

 持ち上げてみると、向こう側が透けて見えるくらい薄く切り取られていた。


 ゴールデンスライムであるライムは、自分の体をオリハルコンに変えることができる。

 きっとあのナイフもオリハルコン製なんだろう。

 かつて勇者が魔王を退治する際に装備していたともいわれる伝説の金属だ。

 アダマンタイマイの硬い甲羅も簡単に切れちゃうみたいだね。


「すごいねライム。こんな薄く切れるなんて思わなかったからビックリしたよ」


「えへへ、ありがとうございます。わたしはカインさんをお守りするためにいるのですから、こんな亀ごときに負けません!」


 ぐっと拳を握って宣言する。

 僕たちのすぐそばでは、ライオネルとマイヤーがそろって立ち尽くしていた。


「アダマンタイマイの甲羅って、ダイヤの何倍も硬いのよね……」


「これほどの芸当、王都でも何人ができることか……。やっぱりライム様はすごいですね……ははは……」


 ライオネルの乾いた笑い声が聞こえてきた。

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