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まさか本当にいるなんて……

「ありがとう。といっても、ライムなら簡単にアダマンタイマイを見つけられるんじゃないかと思うんだ」


 ライムが首を傾げる。


「わたしがですか? でも、そのアダマンなんとかって聞いたことないです。どんなモンスターなんですか」


「うーんと、どう説明しよう……。前にライムと薬のレシピを勉強しているときに出てきたんだけど、覚えてるかな」


「……うう、ごめんなさい、カインさんの顔ばかり見てたので本の内容までは……」


「そ、そうなんだ……」


 恥ずかしそうにつぶやくライムに、僕まで恥ずかしくなってしまう。

 僕の顔なんか見てもしょうがないと思うんだけど……。


「ええっと、そうだなあ……。大きな亀みたいなもので、すごく年をとってると思うんだけど……」


「その亀は美味しいですか?」


「どうだろう。食べたって話は聞いたことがないけど、甲羅を素材にした薬は特に味はしないかな……。それに、ライムも味は知らないっていってたから食べたことはないと思うけど……」


「うーん、よくわからないですけど……」


 困ったようにうなりながらも、すんすんと鼻を鳴らした。


「亀みたいなのなら何匹かいますね。一番近いのはあっちです」


 そういって山の向こうを指さす。

 ライオネルがその様子をぽかんとしながら見ていた。


「あっちって、まさかもう見つけたってことですか?」


 驚いたというよりは、冗談と思っているようだ。

 とはいえライムはいつも通りの表情で、冗談をいっているようには見えない。


 もっとも、ライムはあまり冗談をいわないけどね。

 いつだって素直で真剣だ。

 だから困ることもあるんだけど……。


「こっちです!」


 ライムに案内されてしばらく歩く。

 道をはずれて森の中に入ると、大きな岩の裏で立ち止まった。


「ここですね」


「といっても、なにも見あたらないけど……」


 マイヤーが不思議そうに周囲を見渡す。

 あたりは普通の森で、特に変わったものも見あたらない。

 もちろんアダマンタイマイの影もなかった。


 ライムがにっこりと笑顔になる。


「そっちじゃなくて、こっちです」


 そういって、腕を地面に振り下ろす。

 叩かれた地面が崩れたかと思うと、その先にぽっかりと空いた空洞が現れた。

 穴といっても大きさは僕の身長の二倍以上はある。ほとんど洞窟だ。


 ライオネルが驚いたように近づく。


「まさかこんな洞窟があったなんて……。王家の丘に来るのは初めてではないのですが、こんな場所は初めて知りました。もっとも、広大な場所なのですべてを知ってるわけではないのですが……」


「ライムは初めてここにきたのよね。どうやってこの場所がわかったの。それがライムのスキルなのかしら」


「すきる? それはよくわかりませんが、この奥から亀の匂いがします」


「匂い……?」


 ライオネルたちはますます困惑していた。

 普通はそうだよね。慣れてるはずの僕だってやっぱりちょっと驚いちゃうし。


 入った洞窟は地下深くにまで通じているみたいで、真っ暗で先が見えなかった。

 マイヤーが魔法で光の玉を生み出す。

 明かりに照らし出されたのは、誰かが無理矢理掘り返したみたいに荒削りな洞窟だった。


「まさか、アダマンタイマイが掘った洞窟なのか……?」


「亀はこの奥ですー」


 ライムが軽い足取りで下っていく。

 荒削りな道のためゴツゴツとしてて歩きにくいけど、ライムには問題ないみたいだった。

 どんどん進んでいく彼女の背中を追うように僕らも下っていく。


 しばらく進むと、やがて広い空間に出てきた。

 元々大きな洞窟だったけど、天井はさらに倍以上も高くなり、周囲もちょっとした街の広場くらいはありそうなほど大きくなっている。

 そしてその奥に巨大ななにかがうずくまっていた。


「あれは、まさか……」


 マイヤーが光の魔法を強める。

 明かりが空間内に満ちあふれ、暗闇で見えにくかったものをはっきりを照らし出す。

 僕らの前に現れたのは、巨大な亀だった。


「アダマンタイマイ……。まさか、本当にいるなんて……」


 ライオネルの驚く声が洞窟の中に響いた。

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