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ライオネルとの再会

「カイン様、ライム様、お久しぶりです!」


 若い騎士の男性にそう挨拶された。

 僕に騎士の知り合いなんてほとんどいない。

 シルヴィア以外だとアルフォードさんくらいだけど、もちろんそのどちらでもないし……。

 ただ、初対面ってわけではなく、どこかで見たことがある気がするんだよなあ……。

 思いだそうと悩んでいた僕だったけど、ライムは彼に覚えがあったみたいだった。


「あっ、この匂いはえーっとたしか、草原に行ったときにいた……」


「はい、ライオネルと申します! 以前はお世話になりました!」


 それで僕も思いだした。

 確かハウンドドッグに襲われていたところをライムに助けてもらった人だ。

 そしてそのことに恩を感じていて、ライムをものすごく尊敬していたんだっけ。

 今もなんだかライムを見つめる目がやけに輝いているようにみえる。


 当時のことを思い出して、なんとなく胸がモヤモヤしてきた。

 うう……。どうしてこんな気持ちになるんだろう。

 ライムが慕われるのはいいことのはずなのだけど……。

 とにかく、妙な気分を打ち払うように努めて明るくいった。


「ええと、久しぶりだね。でもどうしてこんなところに?」


「実はシルヴィア隊長から、カイン様たちが王家の丘に向かうので護衛をしてほしいと頼まれたんです」


 それは初耳だったので僕は驚いた。


「シルヴィアはそこまで気を使ってくれたんだ。なんだか悪いね」


「気にしないでください。国民を助けるのが騎士の仕事ですから。といっても、私なんかよりもお二人のほうがはるかに強いですし、カイン様たちにとって危険となりそうなモンスターは王家の丘にはいないでしょうけど」


 ライオネルさんが苦笑混じりにつぶやく。


「そのかわりここはとても広くて、なにかを探すだけでも大変ですから。遠慮なくこき使ってください」


 確かに王家の丘はとても広いといわれている。

 いわれている、というのは、実は正確な広さは誰も知らないからなんだ。


 王都がまるまる十個も二十個も入るという人もいるくらいだ。

 とにかくそれくらい広いんだよね。


「それと実は、今日は私ともう一人きていまして……」


「ちょっとライオネル、一人で走って先に行かないでよ」


 遅れるようにして女性の騎士がやってきた。


「遅いぞマイヤー。騎士たるもの常に全力で任務に当たれとシルヴィア隊長よりいつもいわれているだろう」


「隊長の言葉はそういう意味じゃないと思うけど」


 そう反論してから、僕のほうに向き直ると笑みを浮かべて会釈した。


「カインさん、お久しぶりです」


 そういってきたのは、やっぱりシルヴィアの騎士団にいた人だった。


「ええと、君は確か……」


「マイヤーといいます。今日はよろしくお願いします!」


 満面の笑みを浮かべて僕の手を握りしめる。

 騎士の人とは思えないやわらかな手のひらに、思わずドキッとしてしまった。


「……むっ」


 ライムが急にしかめ面になり、マイヤーさんに握られた手を引きはがすように僕の腕に抱きついてきた。


「カインさんはわたしがお守りするので、人間の雌の助けなんか必要ないですよ!」


 引き離される形となったマイヤーさんだったけど、気を悪くした様子もなく素直に手を離した。


「ありゃあ、やっぱり怒られちゃいましたか。あいかわらずお二人は仲が良いんですね。ライオネルもせっかくのチャンスだったのに、これじゃあ入り込む余地はないんじゃない」


 急に話を振られたライオネルさんが慌てた。


「な、なにをいってるんだ! 今日は隊長から頼まれた正式な仕事だぞ! そうでなくてもお二人にはさんざん世話になっているんだ。真面目に仕事をしろ」


「相変わらず硬いわねえ」


「だいたい、そういうマイヤーだってライムさんには勝ち目がないだろうが。人のこといえるのかよ」


「私はいいのよ。ライオネルと違ってそんな不埒な動機で来てないから」


「俺だって仕事だ!」


 怒るライオネルさんに、マイヤーさんが気安く笑って応じる。

 騎士の人って固いイメージがあるけど、シルヴィアの騎士団にいる人はみんな親しみやすいよね。

 それはシルヴィアの騎士団の良いところだと思うんだ。

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