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お二人はご結婚されているのですか

 僕とコルドさんが話しているあいだ、ライムはおとなしく僕たちの話を聞いていた。

 シルヴィアが来ると聞いたときみたいな反応はない。

 どうやらコルドさんには敵対していないみたいだ。


 てっきりまた「人間の雌が……」とかいうかと思ってたんだけど。

 今は渡された書簡を珍しそうにのぞき込んでいる。


「これがあると人間の縄張りに入れるんですか? なにか不思議な匂いがします」


「偽造防止のインクを使っているからじゃないかな。特別な魔力が込められているらしくて、本物かどうか調べればわかるようになっているらしいんだ」


 それに水につけてもにじまないし、消そうとしたり上書きしようとしたりしてもわかるようになっているんだ。

 公文書でよく使われる技術だ。

 ライムがうーんと唸っている。


「難しいことはわかりませんが、自分の縄張りを主張するために匂いを残しておくようなものでしょうか」


「うーん、あってるような、ちょっと違うような……」


 どう説明したらいいのか僕が悩んでいると、コルドさんが一歩近づいてきた。


「不躾な質問で恐縮なのですが、お二人はご結婚なさっているんでしょうか?」


「ええっ!?」


 本当にいきなりな質問だったので驚いてしまった。

 ライムが首を傾げる。


「けっこん、ってなんでしたっけ? 聞いた覚えがあるのですが……」


「夫婦となる儀式のことでございます」


「交尾のことですか?」


「ちがうよ!」


 僕は慌てて否定したんだけど、コルドさんは恭しく首肯した。


「そうでございます」


「コルドさん!?」


 ずいぶん丁寧で物腰も低い人だなと思っていたけど、意外とそうでもないのかな……。

 ライムは少しだけ不満そうな表情になった。


「わたしはいつも交尾をしようといっているのですが、カインさんは全然してくれないんです」


「つまり婚姻の契りはまだ、ということでございますね」


「ええと、うん、まあ、そうかな……」


 実際ライムと夫婦ではないからその通りかな。

 コルドさんが契りをどういう意味で使っているのかはわからないけど……。


 悩む僕に、コルドさんがさらに一歩ずずいっと近づいてくる。


「実はシルヴィアお嬢様からの仕事だけではなく、使用人代表としてカイン様にひとつ質問があるのですが、よろしいでしょうか」


 冷静なままの表情を変えることはないけど、なぜだか妙な迫力があって僕は気圧されてしまった。


「う、うん。もちろん構わないけど」


「ではぶっちゃけて聞くのですが、カイン様はシルヴィアお嬢様のことをどう思っているのでしょうか」


「ええっ!? どう思うっていうのは、どういう……」


「異性としてどう考えておられるのでしょう。好きですか、嫌いですか」


 さらにずずいっと近づいてくる。


「どうしていきなりそんなことを……」


「どうしても早急に確認する必要があるというのが、シルヴィアお嬢様に仕える使用人全体の総意でございます」


 有無をいわせない迫力でせまってくる。

 なぜだかライムまでとなりから僕のことをじいっと見つめてきた。

 どうあってもここで答えなければいけない雰囲気だ。

 僕は覚悟を決めて口を開いた。

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