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神が定めたもの

 不老と呼べる状態にはいくつかある。


 ゾンビなどのアンデッド。

 永遠に近い時間を生きるというヴァンパイアやエルフ。

 意思を持った魔力だというエルダードラゴンも、寿命というのはないかもしれない。

 そういう意味ではエルもきっと不老だろう。


 または、ゾンビパウダー、吸血鬼の牙、妖精の里の泉。

 それらを使えばそういった者たちの眷属になれるともいわれている。

 不死者の眷属なんてのはあまりにも有名だよね。


 しかしそれでも不死というのはないんだ。


 この世界に生きる者はいつか必ず死を迎える。

 千年を生きる種族でも、万年を生きることはできない。

 不死者たちにも弱点はある。

 エルダードラゴンもかつては何匹もいたというけど、今では世界に二匹だけだ。


 神様が定めたその理を覆すことはできない。


 病気を治すことはできるかもしれない。

 でも寿命を伸ばすことはできない。

 死者を復活させる薬があったとしても、やっぱり同じだ。


 死者を復活させる方法は、大まかに二種類あるとされている。

 ひとつが致命傷を治す方法。

 もうひとつが魂を転生させる方法。


 1つ目はいわゆる万能薬によってできるけど、2つ目は神様の御業だ。

 そもそも魂という存在自体よくわかっていないしね。

 すべての生命に宿る命の根本、なんていわれているけど、実をいえば僕もよくわかっていない。


 とにかく、そんなものを扱うなんて人間にできることじゃないってことだ。


 だから僕たちができるとしたら、それはひとつ目の「致命傷を治す」ということだけ。

 でもこれは、いってしまえばものすごく強力な薬草ってことだ。


 傷を癒すことはできても、寿命を伸ばすことはできない。

 魔物に倒された戦士を復活させることはできるかもしれないけど、寿命でなくなった人を生き返らせることはできないんだ。


 仮にできたとしても、生き返った瞬間にまた寿命で亡くなることになっちゃう。

 だから、究極的な意味で不老不死なんてものは不可能なんだ。


『うう……。難しくて頭が痛くなってきました……』


 ライムの声が頭に響く。

 そういえば僕の考えてることがライムには伝わっちゃうんだっけ。

 確かにちょっと難しい話だったからね。

 頭が痛くなるのは無理もないかも。


 僕が、不老不死はないとはっきり伝えたことで、カイゼルさんは興味深そうな目つきになった。


「不老不死は不可能ってことか」


「はい。申し訳ないですが……」


 忙しい中わざわざ会ってくれたのに断る形になってしまって申し訳ない気持ちになる。

 でも嘘を吐くわけにはいかないし……。

 気を悪くしてないかな、と心配になってみてみると、カイゼルさんが大声で笑い出した。


「そうかそうか! 不可能か!」


「えっと、あの……」


「この依頼をするのはあんたで十人目だ。必ずゴールデンスライムの涙を持ってくると約束した者もいたし、あんたのように同じ効果を持つ別の物を用意するといった者もいる。しかし誰一人としてできないといった者はいなかった。俺だってバカじゃない。不老不死が不可能なことくらいわかってるさ」


「それじゃあ……」


「とはいえ世界は広い。もしかしたらってこともあるだろう。はじめからないと決めつけてしまったら、見つかるものも見つからないからな」


「それは……確かにそうですね」


 本当に前向きな考え方だ。

 無いからとあきらめていたらなにもできない……。

 まったくその通りだと思う。

 スキルが0だからなにもできないとあきらめていた僕にも言える言葉かもしれないな。


『カインさんがなにもできないなんて、そんなことないです! わたしの命を助けてくれましたし、他にも色々なものをわたしに教えてくれました! カインさんはとってもとってもすごい人です!』


 そんな声が聞こえてきた。

 うん、ありがとうライム。


「不老不死は不可能だといってくれたが、その上で依頼したい。もしよければ俺からの依頼を受けてくれないか?」


「ええっ? 僕にですか?」


 ついさっき断ったばかりだから、そんなこといわれるなんて思っていなくてすごく驚いた。


「これでも商人だ。人を見る目には自信がある。正直に言ってくれたあんただからこそ信じられるんだ。

 もし必要なものがあったら何でもいってくれ。だいたいのものは入手するし、資金が必要なら最大限援助する」


「それはとてもありがたい申し出ですけど……、確かこの依頼って……」


 セーラに聞いたときの話だと、競争型のクエストだったはずだ。

 競争型とはつまり、一番最初に依頼の品を持ってきた人に報酬を支払う形式のこと。

 なのに依頼人自らが僕を支援したら、アンフェアになってしまうんじゃ……。


 僕の心配を感じたのか、カイゼルさんはニヤリと笑った。


「こいつは競争じゃねえ。目的はあくまで俺が必要なものを手に入れること。そのためならあらゆる手段を使うのは当然だろう。

 俺が他の冒険者に手を貸したらいけないってルールもないしな。もっとも、そのルールは俺が作るんだ。細かいルールなんざどうとでもなる」


 それは確かにその通りかも。

 考えが柔軟というか、本当に合理的な人だなあ。

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