表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/362

またマッサージをしてほしいの?

 シルヴィアはいつもの姿とは違っていた。

 薄手の寝間着を身につけており、身体のラインがうっすらと透けて見える。

 長い銀髪は背中に流すようにしておろされていて、いつもと雰囲気が全然ちがって見えた。

 それに、どことなく上気した頬のせいもあっていつも以上に大人びて見える。

 僕は思わず視線を逸らしてしまった。


「ええと、どうして僕の部屋に……?」


 見とれていた視線をごまかすようにたずねると、今度はシルヴィアがびくっと肩を震わせた。


「そ、それは、そのだな、ええと……。そ、そう! カイン殿は私の大切な客人なのだから失礼があってはならないからな! なにか不都合がないか様子を見に来たのだ、うむ」


 そんなこと使用人の人とかに任せればいいのに、さすがシルヴィアは真面目だなあ。


「大丈夫だよ。シルヴィアの家は快適で特に問題もないし」


「そ、そうか……」


 シルヴィアがほっとしたような、そうでもないような、なんともいえない表情を浮かべた。


 なんとなく気まずい沈黙が流れる。

 こんな真夜中だし、もう寝た方がいいよね?


「ええと、それじゃあおやすみシルヴィア」


「……ま、待ってくれ!」


 部屋に戻ろうとした僕の腕を、シルヴィアがつかんで引き留める。

 つかんだ手のひらがなぜだか燃えるように熱かった。


「……ど、どうしたの?」


「いや、その……実はな。最近はいち早く立派な騎士となるために、いつも以上に厳しい訓練に臨んでいるのだ」


「そ、そうなんだ。僕からしたらシルヴィアはもう十分に立派な騎士だと思うけど」


 突然どうしてそんなことを言い出したのかはわからなかったけど、シルヴィアが頑張っていることはよくわかるから僕はそういった。

 でもシルヴィアは小さく首を振った。


「なにをいう。私など諸先輩方に比べればまだまだ至らぬところは多い。それに、正式な騎士となったらカイン殿の想いに応えると約束したからな。だから一日でも早く立派な騎士を目指しているのだ」


 そういえばそんな約束をしていたっけ。

 確か虹の欠片を渡したときにそんなことをいわれたんだよね。

 このお礼は必ずするとかなんとか。

 気にしなくていいよといったんだけど、真面目なシルヴィアのことだからそういうわけにもいかなかったみたいだ。


「僕としてはいつでもいいから、シルヴィアこそ無理しないでね。僕のせいでケガとかされたらそっちのほうが嫌だし」


「カイン殿……」


 ぼーっと僕の顔を見つめていたけど、すぐに我に返ったように首を振った。


「……はっ。いやいや! これ以上私に優しくしないでくれ! 目標ができたことによってせっかく修行にも身が入っているのだ! こ、これ以上の雑念はその、私もどうにかなってしまうというか……」


 なにやらモゴモゴと口にしながらうつむいている。


「ただ、その、だな……。毎日厳しい修行をしているせいで最近は疲れがたまっているのを感じていてな……。それで、カイン殿にお願いがあるのだが……」


 なにやら言いにくそうにしていた。

 基本的にシルヴィアは言うべきことはハッキリと口にする性格だ。

 そんなシルヴィアが言いにくそうにするようなことといえば……。

 僕にはひとつだけ心当たりがあった。


「もしかしてまたマッサージしてほしいの?」


「……ッ!」


 どうやら僕の考えは当たりだったみたいで、シルヴィアは暗い廊下の中でもわかるくらいに顔を赤くしてうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました
「横暴幼馴染が勇者の資格を剥奪されたので、奴隷にして再教育してあげることにしました」
https://ncode.syosetu.com/n7380gb/

アーススターノベル様より9/14に書籍版が発売されます!
よろしくお願いします!
i000000
クリックすると特集ページに飛びます
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ