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最強モンスター襲来

 ドラゴンの咆哮が辺り一帯に響きわたる。

 声のするほうに目を向けると、空の彼方に、小さな黒い点がひとつ浮かんでいた。

 この位置からだと小指の先ほどもない小さな姿だけど、それでもその声はうるさすぎるほどに響いてくる。


「アルフォードさんたちが言ってた危険な魔物っていうのは、あれのことだったんだ」


 ドラゴンは世界でもっとも有名で、もっとも強いモンスターだ。

 ランクは個体差があるけど、最低でもS級。数百年以上生きたものになるとSSS級にまでなるって聞いたことがある。

 そこまで行くと、数カ国の連合軍が総力を挙げて挑んで勝てるかどうかってレベルらしいけど。

 ライムのSSSS級には及ばないけど、それは幻のモンスターともいわれるレア度から来るもので、強さによるランクじゃない。

 真に強さだけでランク付けしたらドラゴンが最強だ。


 ドラゴンの姿はまだ小さな豆粒みたいだけど、このくらいの距離ならあっというまにやってきてしまうだろう。

 街道の先では、アルフォードさんたちがドラゴンの姿を見つけ、街道をそれて僕たちの町とは反対方向へと移動をはじめた。


 被害が及ばないように、少しでも離れて戦いをはじめるつもりなんだろう。

 それにその方向には森がある。

 空を飛ぶ敵との戦いでは障害物のあるほうが戦いやすい。それもあって移動したんだろう。

 だけど……。


「ライム。僕たちも行こう」


「どこへですか?」


「アルフォードさんたちのところだよ。助けないと!」




 アルフォードさんたちを追いかけて一生懸命走ったけど、騎馬に乗ったアルフォードさんたちとの距離は開くばかりだった。

 自慢にもならないけど僕は体力も脚力も人並み以下だからね。

 ライムのほうが足は速かったくらいだ。


 そのあいだに、炎の弾が頭上を横切って飛び、ドラゴンに直撃した。

 どうやら騎士団の魔術師による魔法みたいだ。

 耳を裂く悲鳴がとどろき、ドラゴンの巨大な影がものすごい早さで移動する。

 魔法攻撃はまるで効いていない。むしろ逆に怒らせただけだったみたいだ。

 翼を一度はためかせると、次の瞬間にはアルフォードさんたちの真上へと移動していた。


 号令をかけるときの声と、殺意にあふれた咆哮が響く。

 ついに戦いがはじまってしまったみたいだ。


「急がないと……!」


 走る僕の横をライムが苦もなくついてくる。

 息を切らせる様子もなくたずねてきた。


「どうしてあの人たちを助けるんですか?」


「そんなの……!」


 当たり前のことだろう!

 僕にとってはそうだ。

 でも、ライムは本当に、純粋に疑問だというような表情をしている。


 ずっと逃げ隠れて生きてきたライムにとっては、自ら危険な場所に飛び込むなんて、きっと考えられないことに違いない。

 そんなことをしていたら命がいくつ合っても足りなかっただろう。


 いや、ライムに限らず、野生動物はみんなそうかもしれない。

 肉食獣に襲われた草食動物がいたとしても、助けるために戻る動物なんていない。

 そんなことをするのは人間だけだ。


 困ってる人がいたら助けるのは当然。

 そう思っていたけれど、なぜなのかと聞かれたら、うまく答えることができなかった。


「どうして助けるのかと聞かれたら、僕にもわからない。でも、困ってる人がいたら手を差し伸べられるような人に、ライムもなって欲しい」


「よくわからないですけど……」


 戸惑うようだった表情が、にっこりと笑顔になる。


「カインさんがそういうなら、そうします」


「……ちがうよライム」


 僕は足を止めた。

 遅れて止まったライムが不思議そうな顔になる。


「僕が言ったからじゃない。ライムが自分でそう思って欲しいんだ」


「……?」


 ライムは首を傾げるばかりだった。

 やっぱり伝わらないのかな……。


 直後にドラゴンの叫ぶ声が再び響いた。


「とにかく、今は急ごう!」


 僕たちは再び走りはじめた。

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