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シルヴィアによるたったひとつの冴えた提案

「王家の丘に行きたいのなら私が許可を取ろう」


 そういってくれたのはシルヴィアだった。


「これでも王都騎士団の団長だからな。それくらいの権限はある」


「それはありがたいけど、迷惑じゃないかな?」


「迷惑なことなどあるものか。カイン殿の力になれるのならこれ以上の喜びはない。それにカイン殿の頼みといえばアルフォード様も喜んで手を貸してくださるだろう」


 そういってくれるのは本当に嬉しかった。

 あまり迷惑をかけたくはなかったけど、今回はライムのためでもあるからね。


「それじゃあお願いしてもいいかな」


「もちろんだ。任せてくれ。では許可が取れ次第連絡するようにするが、カイン殿は今どこの宿にいるのだ?」


「それがどこも宿がいっぱいで部屋が取れなかったんだ。だから今はニアの家に泊まらせてもらってるんだけど……」


「ちびっ子の家、だと……?」


 なぜかシルヴィアの顔つきが険しくなった。

 対してニアが上機嫌に答える。


「私の家なら部屋も余ってますし、食事代も部屋代もかかりません。いいことずくめですからね。私としては一生住んでくれてもかまわないのですが」


「さすがにずっとお世話になるわけにはいかないよ」


「私と師匠の仲なんですから、そんなこと気にしなくていいといいますか……できればずっとお世話したいといいますか……」


 なにやらうつむいてモジモジしているニア。


「一緒にベタベタくっついているだけでなく、一緒の家で寝泊まりしているだと……? そんなの私だってしたことないのに……!」


 険しい顔つきで話を聞いていたシルヴィアだったけど、名案を閃いたかのように不意に表情を明るくさせた。


「なるほど。そういうことなら私の屋敷に来るといいではないか!」


 急にそんなことを言い出した。


「シルヴィアの家に?」


 どうしてそんなことになったのかわからなかったけど、シルヴィアは「うむ」と自信満々の顔でうなずいた。


「私の屋敷ならば客人を泊めることが多いから気にすることもないし、許可の件で連絡をしなければならないしな。屋敷にいてもらえれば連絡もスムーズになってありがたい。いいことずくめだ。これはもう私の家に泊まるしかないだろう」


「そ、そんな必要はありません! 貴族の屋敷なんて堅苦しくて居心地が悪いだけです! 私の家のほうがリラックスできていいですよ!」


 なぜかニアが強硬に反対した。

 シルヴィアが余裕のほほえみを返す。


「ふっ、そんな心配は必要ない。何度も客人を泊めているといっただろう。時には貴族だけでなく、庶民を招くこともあるくらいだ。そういったことは心得ている」


「そうだね。いつまでもニアの家にお世話になるわけにはいかないし、今日はシルヴィアの家にお邪魔させてもらおうかな」


「師匠!?」


 ニアが悲鳴のような声を上げる。


「こんなむっつりスケベな女騎士の家に行ったらなにをされるかわかりませんよ!」


「なっ! だ、誰がむっつりスケベだ!」


 言い争いをはじめた二人。

 ニアはやっぱり一人だと寂しいから、僕がいなくなることに反対してる面もあるかもしれないね。

 とはいえ、やっぱり女の子一人の家に男の僕が何日も泊まるのはまずいと思うし……。

 ニアは気にしないといってくれたけど、その優しさに甘えっぱなしというわけにはいかないと思うんだ。


 その点、シルヴィアの家ならきっと使用人とかもいると思うし、女の子の一人暮らしってわけじゃない。

 ゲストを泊めることも多いといってたらか、変な噂も立たないと思うし。

 貴族の家に僕なんかがお邪魔して問題がなければ、だけど。


「もしシルヴィアがよければ、ニアも一緒に泊まってもいいかもしれないね」


「私が……この女騎士の家に……?」


 一人では寂しいだろうからそう提案したんだけど、ニアはこれまでに見た中でも最も嫌そうな顔をした。

 どうしてそこまで嫌なのかな……。


「私はかまわないぞ。うちの館は広いから何人来てくれても問題ないし、客人に合わせて様々な種類の部屋を用意してある。好きな子供部屋を使わせてやろう」


「ぐぐぐ……! 師匠と離れるのは嫌ですが……そこの女の世話になるのも……!」


 なんかものすごく葛藤していた。

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