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先に行っててもらえますか

 なんか色々あったけど、結果的には何事もなく冒険者教会を出ることができた。


 手には職員のお姉さんからもらった依頼人についてのメモがある。

 依頼人の住所が書かれていたけど、予定日は明日になっていた。


 さすがに昨日の今日だと準備もあるだろうし、仕方ないよね。

 でもそうなると今日のところは特に用事もないし、どうしようかな。


 考えながら歩いていると、急にライムが足を止めた。


「どうしたの?」


 なにか忘れ物でもあったのかなと思ったけど、ライムは無言のまま後ろを見つめていた。

 表情は見えないけど、雰囲気はいつもと違っている。

 僕には見えないなにかが見えていて、それがなんなのかをじっと確認しているかのようだった。


 やがてライムが僕を振り返る。

 その表情は奇妙なくらいに平坦だった。

 笑顔でも怒っているわけでも、かといって無表情でもない。

 とにかく、はじめて見る表情だった。


「カインさん、先に行っててもらえますか?」


「え? どうして?」


「少しやることができたみたいです」


「???」


 ライムがなにを言い出したのか僕にはわからなかった。

 いつも僕と一緒にいたがるライムが別行動をするなんて珍しい。

 少し心配な部分もあったけど、僕はライムのその意見を尊重することにした。


 ライムの自立性……なんていったら偉そうになっちゃうけど、ライムが一人でなにかをしたいというのなら、僕はそれを応援してあげるべきなんじゃないかと思うんだ。


 最近のライムは出会った頃に比べて色々と変わりつつある。

 それはきっと成長ということなんだと思うんだ。

 だったら僕にできることはそれを見守るだけ。


 僕の助けが必要ならもちろん喜んで手をさしのべる。

 でもライムだって一人の女の子なんだ。

 いつまでも僕がそばにいるってわけにはいかないし、一人になりたいときくらいあるよね。


「うん、わかったよ。すぐに戻れそうかな?」


「うーん。たぶん大丈夫だと思います」


「じゃあ昨日ライムがたくさんご飯を食べた場所覚えてるかな? そこで待ってるよ」


「おいしいお肉をいっぱい食べたところですね! わかりました!」


 元気いっぱいに答えると、来た道を戻るようにして王都の道を引き返していった。


「ライムさん、どうしたんでしょうね」


 ニアも不思議そうにしている。

 といっても心配している感じじゃなかったけど。

 ライムの正体を知っていれば、ライムをどうこうできるはずもないことはわかってるからね。

 それにライムは僕なんかよりもはるかに危険を察知する能力は高い。

 そのライムが平気だというのなら、きっと大丈夫なはずだ。


 そうわかっていたはずなんだけど、その背中を見て僕はほんの少しだけ胸騒ぎを覚えていた。

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