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冒険者協会にて

 ニアの家を出た僕たちは、まずは冒険者協会へと向かうことにした。

 例のクエストの件で話を聞かないといけないからね。


 冒険者協会が開く時間とほぼ同時に来たんだけど、すでに何人もの冒険者が先に来ていた。

 いいクエストは真っ先に取られちゃうからね。

 こうやって朝一番にやってきて確保しないといけないんだ。


 特に王都は冒険者の数も多いだろうから、割のいいクエストほど早くなくなっちゃう。

 集まった冒険者たちは我先にと協会の一番奥、壁一面のクエストボードへと向かっていた。

 奪い合うみたいにして走っているから、ちょっと殺気立っている。

 その様子をライムが物珍しそうに見ていた。


「ここってセーラのお店と同じような場所ですよね? どうしてみんな急いでるんですか?」


「クエストは基本的に早いもの勝ちだからね。いいクエストはみんなすぐに取られちゃう。だからみんな急いでるんだよ」


 答える僕にニアも補足する。


「王都は地方から一攫千金目当てにくる冒険者も多いですから。冒険者の本分は困ってる人を助けることなんですけど、それを忘れてお金儲けに走る冒険者が多くて嘆かわしいです。その点、報酬がなくても依頼を受ける師匠はさすがです」


「僕もお金がないと暮らしていけないから必ずそうというわけじゃないけどね」


「やっぱりお金は大事ですよね!」


 あっさり意見をひっくり返した。

 僕のことを慕ってくれるのはうれしいけど、ちょっと行き過ぎてて心配になるなあ。


 そうこうしてるあいだにも冒険者たちは次々にやってくる。

 下手に近づくとトラブルに巻き込まれそうだ。

 殺到する冒険者たちをさけるようにしながら協会の中へと足を踏み入れた。


 協会の職員さんも殺到する冒険者たちの対応に追われていたけど、その中の一人だけが僕の姿を見つけて近寄ってきた。


「おはようございますカイン様」


 セーラの知り合いだという職員のお姉さんだ。


「おはようございます。昨日のクエストの件、どうでしたか?」


「依頼人に話をしましたところ、ぜひ会いたいとおっしゃっていました」


「そうですか。それはよかったです」


 とりあえず話を聞くことが一番の目的だったからね。

 そのとき、お姉さんがとなりのニアに気がついたようだった。


「あら、ニア様ではありませんか。カイン様とお知り合いなのですか?」


「師匠は私の人生の師匠なんです!」


「まあ、S級冒険者として名高いニア様のお師匠様とはさすがですね。それにニア様は美少女冒険者として隠れファンも多いお方。ふふふ。セーラも大変ねえ」


 なにやら楽しげな笑みを浮かべている。


「それはともかく、例のクエストの依頼人ですが、こちらでお会いになるそうです」


 そういって僕に住所の書かれた紙を差し出してきた。


「昨日の夕方に頼んだばかりなのに、もうそこまで連絡してくれたんですか」


「他ならぬセーラのお気に入りであるカイン様ですから。最優先で対応させていただきました。

 それを抜きにしても、いくつものS級クエストをこなしているカイン様の依頼ですから、優先的に対応するのは当然のことです」


「そうなんですか。ありがとうございます」


「いえいえ。こちらとしてもいつもお世話になっておりますから。これくらいは当然ですよ」


 どうやらセーラのおかげでだいぶ優遇されているみたいだ。

 帰ったらよくお礼を言っておかないとね。


「師匠。セーラって誰ですか?」


 ニアが若干低くなった声でたずねてきた。

 なんだろう。どことなく怖い感じもするけど……。

 きっとクエスト屋の店主ということで、ニアも仕事モードになっているんだろうな。


「セーラは僕の町に住んでいる幼なじみだよ。クエスト屋をやっていて、いつもクエストとかの仕事はセーラからもらうことが多いんだ。それ以外にもお世話になってるし」


「セーラはとっても優しいし、カインさんの次に好きな人です!」


 ライムも同じようにいってくれた。

 二人は仲がいいからね。

 僕らの話を聞いたニアが難しい顔になった。


「ライムさんまであんなに手懐けて……。むむむ……。これは強敵です……!」


 どうやらセーラをライバル視しているみたいだ。

 ニアにそこまで思われるなんてセーラもすごいな。

 自分の知り合いが他の人から高い評価を受けたりすると、なぜか自分までうれしくなっちゃうよね。


 そう思っていたら、急に大声が僕らに向けて放たれた。


「お前みたいな弱っちいやつがS級クエストだなんてふざけるんじゃねえぞ!」

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