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アーストの町の門番にて

 僕はスライムを助けた後、アーストの町に戻ってきた。

 王都からも離れた場所にある田舎町で、僕が拠点にしている場所でもある。

 そのかわりに物価は安いんだ。

 だから僕みたいな底辺冒険者でもなんとか生活できる。


 だからといって不便かというとそんなこともない。

 近くには大したモンスターもいないし、野盗の類が出ることもないから、いたって平和な町だ。

 一応町を囲む柵と門があるけど、門はいつも開きっぱなし。門番の兵士も一人しか立っていないくらいだ。

 今日も一人で警備を続けている門番のおじさんが声をかけてくれた。


「ようカイン、クエストの帰りか? ご苦労さん」


「門番のお仕事もご苦労様です」


「ご苦労なもんか。仕事なんてなにもないよ。平和なもんさ」


 平和な町だから、門番の仕事らしい仕事はほとんどないって聞いたことがある。

 だからすごい暇らしくて、誰かが通りかかるだけでも、こうしてうれしそうに話しかけてくるんだ。

 それに小さな町だから、町の人全員が知り合いみたいなものだしね。


「今回の旅は十日間か? 結構かかったんだな」


「一角獣の薬が必要だったので、少し遠出をしてました」


 僕が答えると、門番のおじさんが驚いた。


「一角獣っていやA級モンスターじゃねえか! ベテラン冒険者でもてこずるランクだろう。レベル1のカインが勝てるのか」


 全部のモンスターには冒険者協会がつけたランクがある。

 レベルの低い冒険者がいきなり強力なモンスターに挑むことがないようになってるんだ。

 一番下がミニゴブリンのF級で、そこからランクが上がるごとに強くなっていく。

 A級になると、修行もしてない村人が百人でかかっても勝てないような相手だ。


「もちろん僕なんかが戦っても勝てないです。でも一角獣は比較的大人しいモンスターですから。素材となる角の欠片をもらうだけならなんとかなるんですよ」


 実際それで一度は万能薬を作ることにも成功したし。


「普通はそんなにうまくいかないと思うがね。相変わらずカインは器用というか、弱っちいくせにうまくやるよな」


「はは。弱いからこそですよ」


 レベル1でスキルもない僕は、戦いになったらすぐに死んでしまう。

 ミニゴブリンにすら勝てないくらいだからね。

 だからとにかく戦いにならなくてもすむ方法ばかり練習していたんだ。


「俺はもう町を出て冒険なんて年でもないから、こうして話を聞くくらいしかできないんだけどな。

 とにかく、クエストは成功したってことだな。万能薬って結構高いんだろ? しばらくは冒険に行かなくても良さそうだな」


「いやあ、それがクエストには失敗しちゃいまして」


 苦笑混じりに告白すると、おじさんが豪快に笑い飛ばした。


「はっはっは! なんだよ驚かせやがって! それは残念だったな!」


 笑いながら僕の背中をバシバシと叩いてくれる。

 この人なりの励まし方なんだろう。

 変に神妙になられるよりは、笑い飛ばしてくれたほうが僕としても気が楽なのでありがたい。


「それにしてもクエストに失敗したってことは、カインの嫁がまた怒るんじゃないか。ちゃんとフォローしておけよ」


「嫁? 僕は結婚なんてしてませんけど……」


「いつも一緒にいる子がいるだろう」


 誰だろうか。

 思い浮かべてみて、一人だけ心当たりがあった。


「もしかしてセーラですか? セーラはそんなんじゃないですよ。確かにによくしてもらってますけど……」


「なんだ。まだくっついてなかったのか。おまえたちならお似合いだと思うんだがな。とにかく謝るなら早い方がいいぞ。ほら、とっとと行ってこい」


 なんか勘違いをされたまま送り出されてしまった。

 うーん。僕とセーラは本当にそんなんじゃないんだけどな。

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