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ニアの家

 ケンカするライムとニアをなんとかなだめると、僕たちはニアの家へとやってきた。


 ニアの家は中央街の近くにあった。

 王都の中央街といったらかなり一等地のため、土地代も高くなる。

 店を一軒出すだけでも相当の額が必要になるほどなんだよね。

 そんなところに家を持っているってことは、相当稼いでるってことだ。

 そして実際に目の前にしたニアの家は、僕の家も何倍もあるような大きな家だった。


「すごい家だね」


「いえいえ、大したことないです」


 ニアはそう謙遜したけど、二階建ての建物は外から見ただけでも立派で、部屋数もかなりありそうだった。

 だけど、夜も更けはじめているのに、明かりが一つも点いていないのが気になる。

 僕の視線に気がついたのか、ニアが少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。


「家は大きいんですけど、私一人しか住んでいないんです」


「え、それって……」


「だから遠慮せずに中に入ってください。久しぶりのお客さんですので、精一杯おもてなしいたします!」


 無理に作ったような明るい笑顔に押されて中に入る。


 外見に負けず、中も広くて豪華な家だった。

 だけどどこか寒々しく感じられるのは、そこに人の気配が感じられないからかもしれない。

 何をいったらいいのか迷っているあいだに、ニアが僕たちを振り返る。


「おもてなしするといいましたが、そろそろ夜も遅いですし、長旅から着いたばかりでお疲れでしょう。もうお休みになりますか?」


「うん、そうだね。そうさせてもらおうかな」


 旅の疲れに加えてご飯を食べたばかりだから、実はけっこう眠くなってきていたんだ。


「わたしも眠くなってきました~」


 ライムが半分閉じた目をこすりながらも、僕の腕をがっしりとつかんでくる。

 どうあっても一緒に寝るつもりのようだ。

 そこで僕はひとつ思いだしたことがあった。


「そういえばエルっていう子も一緒に王都に来てるんだ。今は別行動なんだけど、もしかしたらここに来るかもしれないから。そのときはもうひとつ部屋を貸してもらえるかな?」


 ニアの家に来ることはエルには伝えてないけど、彼女のことだから僕の場所を探知することは十分にありそうだからね。

 いきなりやってくる可能性は十分にある。

 僕がそういうと、ニアが急に据わった目つきになった。


「それは男ですか? それとも女ですか?」


「えっ? 女の子だけど……」


 どうしてそんなことを聞くのかと思ったけど、確かに男女じゃ必要になる部屋も違うだろうからね。

 そう思ったんだけど、ニアは更にこんなことを聞いてきた。


「その子はかわいいですか?」


「ええっ? まあ、かなりかわいいけど……」


 むしろ美少女といってもいいくらいだ。


「そうですか。かなりかわいい美少女ですか。そうですか」


 ニアが満面の笑みでうなずくと、その笑顔のままで答えた。


「わかりました。ちょうど犬小屋が余ってるのでそこを使ってもらいましょう」


「女の子だから普通の部屋にしてあげて!?」


 いや男でも犬小屋はかわいそうだけど。


「どうしても他に部屋がないなら僕が犬小屋で寝るから……」


「師匠にそんなことさせられません!」


 ニアが鬼気迫る声で叫んだ。


「もしそうなるくらいなら雌犬であるこの私が犬小屋を使わせていただきます!」


「いや……部屋がいっぱい余ってるんだから、それを使えばいいんじゃないかな……」


 やっぱり今日のニアはどこかおかしい気がするなあ。

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