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ニアの華麗なる名案

 ニアに宿屋を紹介してもらうつもりだったんだけど、さすがにこの時期はどこもいっぱいらしかった。

 こうなると本当に泊まる場所が見つからない。

 困る僕に向けて、ニアが意を決したような表情で詰め寄ってきた。


「そっ、それでしたら、……私の家はどうでしょうか!」


「ニアの家に?」


「はい! この時期はどこも宿は空いていないですし、私の家なら宿代ならかからないですし、もしよろしければ私と一緒に、なんて……」


 だんだんと声が小さくなっていく。

 いきなりの提案で驚いたけど、確かにそれは願ってもいない申し出だ。


「それじゃあニアの家にお邪魔しようかな。迷惑でなければだけど」


「迷惑だなんてとんでもないです! 来ていただけるだけで感激です!」


 喜ぶニアに、ライムが渋い顔つきになった。


「むむー、ニアちゃんのあの感じ、なんだかイヤな予感がします……。家に行くなんてキケンです! わたしは野宿でも大丈夫ですので是非そうしましょう!」


「いや、さすがに野宿はよくないと思うけど」


「師匠もこういってますし、私の家で決定ですね。

 それに、ライムさんはいつも師匠と一緒に寝ているんですよね? 本妻の座はライムさんに渡しますけど、愛人の座は私のものです。だから今日くらい私と一緒でもいいじゃないですか」


「ダメです! あいじんとかよくわからないけど、わたしのほうがカインさんを好きなんですから、わたしと一緒に寝るんです!」


 なおも反対するライムに、ニアがむっと顔をしかめた。


「ライムさんを批判するつもりはありませんが、私のほうが先に師匠に会ってるんですから、私のほうが師匠を好きなんです! これはゆずれません!」


「いいえー! わたしのほうがカインさんを好きですー!」


「私のほうが師匠を愛していますー!」


「「むぐぐぐぐぐぐ……!!」」


 なんだかものすごく恥ずかしい理由で喧嘩を始めた二人。

 僕としてはもう恥ずかしすぎて二人に目を向けることもできない。


 しかもここは王都の中心街。

 人通りの多い道のど真ん中でそんな言い争いをすれば、当然周囲の人に丸聞こえだった。


「こんなところで痴話喧嘩かよ。うらやましいね」

「おい、あれS級冒険者のニアじゃないか?」

「本当だ。師匠といってるが、あの男がそうなのか?」

「見た目はひょろい優男だが……。あのニアの師匠なんだ。恐ろしく強いんだろうな」

「それにしてもケンカ相手の女の子もものすごい美人だな」

「なんでもあの美人の子が本妻で、ニアは愛人らしいぞ」

「俺が聞いた話だとニアに『雌豚』とか『雌奴隷』とか言わせてるらしい」

「そこまで調教済みか……。ああ、師匠ってもしかしてそういう意味……」

「実にけしからんな。騎士団のみなさんこっちです」


 なにやらとんでもない誤解が広がっている気がするけど、言い争いを繰り広げる二人の目に周囲の状況は入っていないみたいで、いつまでもやめる気配はなかった。


「あの、二人ともケンカはよくないから……」


「ケンカじゃありません! これは雌のプライドをかけた決闘です!」

「そうです! 師匠はどっちが好きなんですか!?」


 止めようとしたら飛び火した。

 どっちが好きかと聞かれても、どう答えればいいんだろう……。

 僕が困惑するあいだにも二人のケンカは続いていた。

 これはしばらく終わりそうにないなあ……。

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