運命の再会
ライムのおかげでお店は大騒ぎになっていたので、そっとその場を抜け出してきた。
騒ぎの中心にいたライムだったけど、周りのお客さんたちもすっかりできあがってしまっていたため、ライムが店を出たことにも気がついていないみたいだ。
あんまり注目を集めるのも困るからちょうどよかったかな。
店を出て本来の目的だった宿屋探しを再開する。
ライムが目立つのか客引きの人にすぐ声をかけられるんだけど、宿を探しているといったら、全員からこの時期はもう空きはないといわれてしまった。
やっぱりどこもいっぱいみたいだ。
王都の中心地は人であふれているため、光水晶をつかった街灯のおかげで夜になっても明るい。
でも空には星が見えはじめていたから、もうだいぶいい時間のはずだ。
このまま宿が見つからなかったら、最悪野宿することになってしまう。
さすがにそれは避けたいよね。
「カインさんどうしましょう」
「一応あてがあることはあるんだけど……」
とはいえこんなに混んでるなんて思ってなかったから準備してなかった。
今日中に見つかればいいんだけど……。
悩んでいる僕の耳に、懐かしい声が聞こえてきた。
「師匠!」
僕をそう呼ぶのは一人しかいない。
人混みをかき分けるようにして小柄な女の子が駆け寄ってきた。
「お久しぶりです師匠!」
僕の両手をつかむと、満面の笑みで見上げてきた。
「うわっ、久しぶりだねニア」
まさかこんなところで会うなんて思ってなかったから、びっくりしてしまった。
ニアは、一角獣の万能薬のクエストをしているときに出会った冒険者だ。
僕よりも若いのに、一流の証であるS級冒険者の称号を持っていて、レベルも50を超えている。
僕なんかがニアの師匠だなんておこがましいというか、むしろ僕が色々と教えてほしいくらいだ。
でもニアが幼い頃に、僕がニアを助けたことがあった。
それがきっかけで冒険者を目指すようになったらしくて、僕のことを師匠と呼んでいるんだ。
「それにしてもこんなところで会うなんてすごい偶然だね」
「はい! 私と師匠はやっぱり運命で結ばれているんですね!」
キラキラに輝いた笑みを弾けさせる。
ライムがむっと顔をしかめると、僕の腕を引き寄せるようにして抱きついてきた。
「わたしだってカインさんに運命的な出会いをして助けてもらって夫婦になったんです! いくらニアちゃんでも渡しませんよ!」
僕らは夫婦じゃないんだけど、と言う前にニアが首を振って否定した。
「もちろんライムさんから師匠を取ろうなんて考えていないです。私は師匠の愛人になれれば……いいえ、愛をもらおうだなんておこがましい考え……! 召使い……なんでしたら奴隷で十分です! 雌豚とお呼びください!」
「ええっ。奴隷だなんて、そんなひどいことできないよ。ニアは僕の仲間なんだから。前みたいに仲良くしようよ」
「ああっ! 私如きを人間扱いしてくれるなんて、なんてお優しいのでしょう!」
感極まった様子で身悶えるニア。
さすがに感動のハードルが低すぎないかなあ。
普段どんな生活してるんだろう。
ちょっと心配になってきた。




