すでに実績は十分なので
僕の冒険者カードを受け取った職員のお姉さんが、そこに書かれた情報にさっと目を通した。
その内容を見てきっと失望していることだろう。
なにしろレベル1のスキル0なんだから。
依頼を断られることは確実だ。
それは仕方ない。
実力がないのは事実なんだから。
それよりも、依頼を受けることはできなくても、せめて話だけでも聞けないだろうか。
そう考えていると、お姉さんが興味深そうな顔で僕の顔をのぞき込んできた。
「やっぱり、あなたがカイン様だったのですね」
「……え? 僕のことを知っているんですか?」
「ええ。セーラから話は聞いています。とても腕の立つ冒険者だと」
その言葉を聞いて驚いた。
「セーラの知り合いだったんですか」
「実はセーラとは幼なじみなんです。子供の頃に私が王都に来ちゃったので今は別々なんですけど、今も仲良くさせてもらっています」
そうだったんだ。
セーラとは昔からのつきあいなんだけど、僕があとからアーストの町に来たんだよね。
その頃にはもうセーラがいたから、それより前のことは知らなかったよ。
「セーラに王都で一緒に仕事しようっていっても、なぜか全然来てくれないんですけどね」
「そうなんですか。どうしてだろう」
僕らの町なんかよりも、王都みたいな大きなところで仕事した方が儲かると思うんだけど。
「ふふふ。どうしてでしょう。きっと大好きだからなんでしょうね」
大好きって、アーネスの町がかな?
王都に比べたら色々と劣るところが多いかもしれないけど、住みやすい町だからね。
「セーラの話はまたにするとして、クエストの件ですが。
本来なら何らかの実力を示す必要がありますが、カイン様はすでにいくつものS級クエストを達成された実績がありますから、こちらから推薦しておきましょう」
「いいんですか? ありがとうございます」
冒険者協会からの推薦ということになれば、他の何よりも確実な証明になる。
これで依頼人にも会えるはずだ。
「ただ、これから連絡するため今すぐというわけにはいきません。明日また来てもらえますか?」
確かに今から連絡してすぐに会うってわけにもいかないよね。
向こうにだって予定もあるだろうし。
「わかりました。それではまた明日来ます」
そう答えたんだけど、まだ用事があるのか、職員のお姉さんが僕のことをじいっとのぞき込んできた。
「それにしても、あなたがあの『カインさん』ですか。なるほどなるほど……」
「あの……なにか……?」
困惑する僕だったけど、お姉さんは笑みを深くするだけだった。




