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王都パラフィン

「ううー、やっと着きましたー!」


 狭い馬車から解放されたライムが、空に向けて大きく伸びをする。

 ずっと馬車の中にいたからね。

 途中休憩を何度か挟むとはいえ、ほとんどを馬車に乗って移動するから体の節々が痛い。


 ライムが体を伸ばしながら、げんなりとした表情を浮かべた。


「この馬車って乗り物は苦手です~……」


 そういえば前も同じことをいってたっけ。

 揺れる車内に長時間いないといけないし、座り心地もいいとはいえないから、慣れてない人には辛いみたいなんだよね。

 もっとも、慣れている僕でも平気ってわけじゃないんだけど。


 僕たちが降りた場所は、停留所と呼ばれる馬車専用の建物。

 王都に来たすべての馬車はここに来ることになっている。


 僕たちはアーストの町を出発したあと、サイドタウンを経由してつい先ほど、ようやく王都パラフィンについたばかりなんだ。

 僕たちの町は馬車も一台しか来ないから気にならないけど、王都となると毎日何十台という馬車が行き来する。

 当然馬車によって向かう場所もバラバラだから、どの馬車に乗ったらいいか混乱しないように、行き先ごとに止まる場所が決められているんだ。


 降りた先にもたくさんの馬車が止まっている。


 もう一人慣れてないはずの女の子がいたけど、こっちは全然問題ないみたいで、たくさんの馬車を楽しそうに眺めていた。


「人間は走るのも遅いし、空も飛べないから、馬に引っ張ってもらわないといけないんだね。今まで遠くから眺めてたときはどうしてこんな物に乗っているのかわからなかったけど、なるほど。こういうことだったんだ」


 エルが感動したように停留所を見つめている。

 ライムとかエルとかは、本来の力で走ったほうが早いから、こういうのは珍しいんだろうね。


「お疲れさん。カインたちはどれくらい王都にいるんだ」


 御者のおじさんが声をかけてくれる。

 さすがに毎日乗っているだけあって疲れは感じられなかった。


「まだわかりませんけど、少し長くなるかもしれないです」


「そうか。ならこっちは三日後に別の町に向かうかな。戻ってくるのは往復で20日後ってところだ」


「20日ですね。わかりました」


 僕の町に向かう馬車はこのおじさんくらいしかいないから、こうして予定を合わせないといけないんだ。

 もちろん僕の予定が20日後までに終わっているかはわからないんだけど、そのときはまた相談して予定を合わせることになる。


 おじさんが先に停留所を出て行く。

 僕たちも、ライムの回復を待ってから外に出た。


「うわぁ……!」


 出た瞬間に歓声を上げたのはエルだった。


「すっごいたくさんの人間がいるね!」


 王都は僕たちの町とは比較にならないくらい大きい。

 詳しくは知らないけど、たぶん10倍とか、あるいはもっと大きいかもしれない。

 住民の数となるとさらに多くなる。

 人間大好きなエルが感動するのも無理はないよね。


 とはいえ、そんな言い方をする人は珍しいから普通は注目を浴びるんだけど、誰もエルの言動に気を止めなかった。

 それくらい王都にはたくさんの人が行き来してたんだ。

 ここは王都の入り口近くにある停留所だから、人が多くて騒がしい場所なせいもあると思うけど。


「ここは地面が石なんですね」


 ライムが珍しそうに王都の街並みを眺める。


 地面は地均しした土じゃなくて、馬車が通行しやすいように石畳が敷かれていた。

 建物もしっかりした作りの物が多い。

 僕たちの町とは大違いだけど、一番の違いは街の中央に見えているお城だと思う。


 王様などが住むといわれているそこは、離れているはずのここからでもその威容をはっきりと見ることができた。


「あそこに人間の偉い人が住んでるんだよね? 話には聞いていたけど、こんなに大きな場所だったんだね!」


 エルが子供みたいにはしゃいでいた。

 いつも自然体でいることが多い彼女が、こんなに興奮するなんて珍しいな。

 本当に人間が大好きなんだね。


「ボクちょっと探検してくるね!」


 そういうが早いか、人混みの中へと駆けだしてしまった。

 はやる気持ちを抑えられなかったみたいだ。


 広い王都にはたくさんの人がいる。

 いい人が多いけど、そうじゃない人だって多い。

 エルみたいなかわいい女の子が一人で歩くのは危険な場所も多いんだけど……。


 エルより強い人間はたぶんいないと思うから大丈夫かな……。

 それに、追いかけようにももう見えなくなっちゃってるし。


 前に僕の魔力だかなんだかを感知して家まで来たこともあったし、なにかあればきっと僕のところまで戻ってくるはずだよね。


「それじゃあ僕たちもいこうか」


「はい!」


 すっかり元気になったライムが勢いよく返事をする。

 そうして僕とライムは二人並んで王都の町へと歩き出した。

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