新たな同居人2
皆様のおかげで日刊59位に入りました!
ただだだ感謝です。本当にありがとうございます……!
なので記念にしばらく1日2回更新を敢行することにしました!
死ぬ気で書くのでよろしくお願いします!!
そういうわけで自分の家に戻ってきた。
「ただいま」
「ただいまー!」
僕に続いてライムも元気よく声を上げる。
誰もいないのについ挨拶してしまうのはなんでなんだろうね。
それはともかく、誰もいないんだから返事なんてない。
そう思っていたんだけど。
「あ、おかえり」
家の中にショートカットの美少女、エルがいた。
エルはアーストの町に着くなり「人間の町を探索するのが夢だったんだ!」と目を輝かせてどこかに走って行っちゃってたんだけど、僕の家に戻ってきてたんだね。
少し心配だったから僕はほっとしたんだけど、ライムは瞳をつり上げていた。
「やっと邪魔者がいなくなったと思っていたのに、なんでわたしとカインさんの家にいるんですか!?」
「人間の町を探索するのも楽しかったんだけど、暗くなってきたからそろそろ家に戻ろうと思って」
「そうじゃなくて! どうしてうちに来てるんですか!」
「人間の友達はキミたちしかいないから、住むところもここしか知らないんだ」
怒るライムに、エルはいつもと変わらない雰囲気で答える。
いつでも元気いっぱいで感情豊かなライムに対し、エルはいつでも自然体というか、意外と感情の起伏は小さくて、喜怒哀楽の喜びと楽しいしかない感じだ。
それが、ショートカットで中性的な姿と相まって、神秘的な魅力になっているんだよね。
「人間は他の人間が住んでるところに勝手に入ったりしないものなんでしょ? ボクちゃんと知ってるんだよ」
エルが得意気に話す。
「うん、そうだね。エルは本当に人間のことが好きなんだね」
「人間はいつも楽しそうだから、こうしてボクも人間になれるのがあこがれだったんだ」
そういって自分の体をうれしそうに眺めている。
地上最強の生物とされているエルダードラゴンが、脆弱な人間にあこがれるっていうのもなかなか興味深いよね。
もっとも、エルダードラゴンは世界で二匹しかおらず、そのうちの一人は竜の里と呼ばれる空間に閉じこもって暮らしていたんだから、残された一人であるエルが外の世界にあこがれるのも当然なのかもしれない。
エルはドラゴンの中では若い方だっていってたし、なおさら外の世界にあこがれる気持ちは分かるよね。
「一応ボクは人間の姿のまま外で過ごしても平気なんだけど、でもせっかくだから人間の家に住んでみたいんだ。ダメかな?」
「もちろんダメに決まっています! ここはわたしとカインさんの家なんです!」
ライムが当然のごとく反対する。
でも、いくらエルが大丈夫だからっていっても、女の子を一人で放っておくのはさすがにかわいそうだよね。
「わかったよ。僕の家でよければいくらでも使っていいよ」
「カインさん!?」
「まあまあ、困ったときはお互い様っていうでしょ」
「うう……。それはそうなんですけど、でも……」
葛藤するライムのとなりで、エルがふわりと笑みを浮かべる。
「ありがとう。うれしいよ」
「ところで、どうして僕の家の場所がわかったの」
住所までは教えていなかったと思うんだけど。
「町の人間に、カインていう人の家はどこですかって聞いたら、教えてくれたんだ」
なるほど、いわれてみれば簡単な方法だったね。
「ところで、僕の家を聞いた人って誰だかわかる?」
こんなかわいい女の子が僕の家を探していたら、それだけで騒ぎになってもおかしくない。
すでにライムとのことで十分噂になっているのに、場合によっては新しい噂が広がりかねないよね。
話好きの門番のおじさんとか、やけに町の噂に詳しい野菜屋のおばちゃんとかだとかなり危険だ。
カインが新しい女を連れ込んだとか、ライムちゃんとの二股が発覚とか、ありもしない噂を広めてしまうから困ったものなんだ。
エルは思いだそうと少し考えてから答えた。
「えーとね、たしか、くえすとや? っていうなまえの店にいたかわいらしい人間の雌だったよ」
「よりにもよってセーラかあ……」
まあセーラならむやみに噂を広めたりする心配はないけど……。
また冷たい視線を向けられるんだろうなあと思うと胃が痛くなってくる。
うう……。なんて言い訳しよう……。
いや、やましいことは何もしていないんだから、言い訳なんて必要ないんだけど……。
なんかこう、セーラに冷たい目で見られると、僕が悪いみたいな気になってくるんだよね。