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こんなにかわいい子ならしかたないわね?

「……というわけで、ライムはゴールデンスライムなんだよ」


「はい! ゴールデンスライムのライムです! よろしくお願いします!」


 ライムが元気よくお辞儀をする。

 説明を聞き終えても、セーラは信じられないといった表情でライムを見つめていた。


「はあ……。あの幻の超レアモンスターと言われるゴールデンスライムが……、女の子の姿になってやってきたと……」


 驚くのも無理はないと思う。

 僕だっていきなりそんなことを言われたらきっと信じなかった。


 でも、ライムは目の前で金色の髪をわさわさと自由に動かし、毛先の先端を変化させて水滴を押しつぶしたような小さなスライムの形を作っていた。

 それが魔法でもスキルでもなく、ライムの体を変化させたものであることはセーラもさっき確認したばかりだ。


 だから信じるしかない。

 だけどまだ頭では理解できてないみたいだった。


「おとぎ話の中では聞いたことあったけど、こんなこと現実にあるのね……」


 ちなみにセーラの店は臨時休業になってる。

 こんなところに誰かが来たら大騒ぎになっちゃうから、一時的に閉めてもらったんだ。


 セーラがことさらに大きくため息をつく。

 色々いいたいことはあるけどいったん忘れて、まずは目の前の事実を受け入れようというため息だった。


「とにかく、ライムちゃんがゴールデンスライムだっていうのはわかったわ。一角獣の万能薬をモンスターに使うなんてどういうことかと思ってたけど、こんなにかわいい子なら仕方ないわね?」


 かわいい子、の部分をずいぶん強調するなあ。


「最初に会ったときは普通にスライムの姿だったけどね」


「わたしを助けていただいた薬がそんな貴重なものだったなんて知らなかったです……。なのにためらうことなく使ってくれるなんて、やっぱりカインさんはステキです!」


「薬はまた取りに行けばいいからね。でも命はひとつしかない。気にしなくていいよ」


「なんて優しいお言葉……!」


「すっかり懐かれてるみたいね」


 ニコニコ顔で僕の腕にべったり抱きつくライムを見つめながら、セーラが意地悪な笑みを見せる。


「それにしても、スライムだからライムちゃんか。ずいぶんわかりやすい名前なのね?」


「うっ、わ、わかりやすいならいいでしょ」


 僕だって自分のネーミングセンスのなさは自覚してるよ。


「ま、なんにせよ元気そうでよかったわ。また落ち込んでるんじゃないかと心配してたから」


「僕が?」


「そうよ。ずいぶん前だったけどクエストに失敗したとき、カインはずいぶん落ち込んでたじゃない」


「ああ、そういえばそうだったね」


 まだ駆け出しで自分に自信がなかった頃、レベル1でスキルもない僕はやっぱりダメなんだと思ったりもしたっけ。

 自信がないのは今でもあまり変わらないけど、でも昨日はライムのおかげで落ち込んでいる暇もなかった。


「ライムのおかげ、なのかもね」


「よくわからないですけど、お役に立てたのなら何よりです!」


 喜びを爆発させるライムに、セーラがぼそっと告げる。


「私のほうがカインと長くいるんだからね」


「そうなんですね。一緒にカインさんを助けましょう!」


「そういう意味じゃないんだけど……。なんか毒気が抜けるわね」


「セーラには昔からずっとお世話になってるからね。これからもよろしく頼むよ」


「こっちはこっちで……。はあ、もういいわ。それよりも、ライムちゃんのことを紹介しにうちに来たわけじゃないんでしょ」


 そうだった。

 本来の目的を忘れてたよ。


「ライムも一緒にいけるような簡単なクエストはないかな」


「ライムちゃんも一緒に行くの?」


「はい! カインさんは私がお守りします!」


 元気いっぱいな声で両腕を力強く握ってみせる。


「こういってくれてるから、まずは簡単なクエストをこなしてみようと思ってね。そうすればライムの実力もわかるから。町に置いていって正体がバレるようなことになっても大変だし」


「確かにそれもそうね」


 セーラが腕を組みながらクエストボードを眺める。

 ボードには様々な紙が貼られていた。

 セーラのところに依頼された様々なクエストをまとめたものだ。


「それじゃあこれなんてどうかしら」


 そういって一枚の紙を差し出してきた。

 それは近くの採取ポイントから薬草を採ってきてほしいというものだった。


「なるほど、これなら危険もないし簡単そうだね」


「簡単は簡単なんだけど、手間の割には報酬が低くて割に合わないっていうんで誰もやらなかったのよね」


 確かに報酬は驚くほど安い。

 今日一日の食費代で消えてしまうような額だ。

 ライムと二人でいくことを考えたらむしろ赤字になっちゃうかも。

 でもまあ今回の目的は報酬じゃない。ライムの実力を見るためのものだからね。


「じゃあこれを受けることにするよ」


「そう。ありがとう。じゃあお願いね」


 そうして、僕とライムは初めてのクエストに向かうこととなった。





お読みいただきありがとうございます。

ここまでがプロローグのようなもので、次からカインたちのクエストが始まります。

といっても雰囲気が大きく変わるようなことはないのですが。

笑いあり、涙あり、ちょっとエッチなこともありの二人の活躍を最後まで見届けていただけると幸いです。


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