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宝石のプレゼント

 やがてエルの話も終わったみたいだったので、僕たちは竜の里を出ることにした。

 もやもやとした景色が、急に見慣れた草原の景色に変わる。

 どうやら戻ってこれたみたいだ。



 そして僕たちはアーネストの町に戻ってきた。

 行きは大変だった草原だけど、帰りはエルもいるし、なにより騎士団の団結力が上がっていたおかげでスムーズに帰ってくることが出来た。

 さすが王都騎士団の人たちはすごいね。

 この短期間にみんなレベルアップしたみたいだ。


「無事に戻ってこれたのもカイン殿のおかげだな」


 シルヴィアはそういってくれたけど、もちろんお世辞だよね。

 僕はちょっと手伝っただけだし。

 頑張ったのは僕じゃなくてみんなだ。

 それは隊を率いるシルヴィアが一番よくわかっているはずだからね。


「ふ……。出会ったばかりのころは、貴様の手などかりん、などといっていたが、今となっては恥ずかしいばかりだ」


「あはは。いきなり僕がレベル1だなんて言われたら、信用できなくて当然だよ」


「私は今まで一人で何でもしなければと思っていた。それが騎士であり、隊長としての使命なのだと。だがそれは間違っていたのだな。カイン殿のおかげで、一人よりも二人のほうがきもちい……い、いや、よりよい成果を上げられるということに気が付いたんだ。私一人では草原の果てにたどり着くことはできなかっただろう。それどころか、虹の欠片すら手にすることもできなかった」


 今何かとんでもないことと言い間違えそうになった気がしたけど。


「まだまだ完璧な騎士など程遠い私だ。だから、その……なんだ。カイン殿にはこれからも支えてほしいというか、できればずっとそばにいてほしいというか……」


「もちろん、こちらからもお願いするよ。僕なんかでよければいくらでも力になるし。

 あ、そうだ。シルヴィア」


「どうしたのだ?」


「これを渡しておこうと思って」


 僕は竜の里から持ち帰った虹の欠片をシルヴィアに渡した。

 最初は僕しか触れなかったけど、里を出ると他の人でも持てるようになってたんだ。

 丸い宝玉の形になった虹の欠片はとてもきれいで、まるで宝石みたいだった。


 受け取ったシルヴィアが、それを見てなぜだか顔を真っ赤にした。


「男が女に宝石を贈るということは、やはり……カイン殿も私のことを……。

 やはり……これはプロポーズということとしか……」


 なにやら小さな声でつぶやいていたけど、やがてなにかをこらえるようにぐっと目を閉じた。

 それからしばらくして目を開くと、真摯なまなざしで僕を見つめた。


「カイン殿の気持ちはうれしい。それに、私も同じ気持ちだ。だからこの宝石はありがたく受け取りたいと思う。だが、やはり私はまだ修行中の身……。今その気持ちにこたえるわけにはいかないのだ。

 だが、その、騎士として一人前になれば、そういうことも可能となるだろう……。だから、私の修業が終わるまで待ってもらえないだろうか。もちろんこれは私のわがままだとわかっている……。だが、必ず一人前になって戻ってくる。返事も必ずその時にする。だから、どうか待ってくれないか……」


 そういいながらも、シルヴィアはとても辛そうな表情を浮かべていた。

 待ってくれって、なんのことだろう。

 もしかしてお礼かな。


「そんなこと気にしなくていいのに」


「そ、そういうわけにはいかない! これでも騎士を志す身なのだ! やはり限度というものはある! カイン殿はまた私を悪魔の道に誘おうというのか!」


 ええっ。

 悪魔の道って、僕そんなのに誘った覚えはないんだけどなあ。


「大げさだなあ。シルヴィアは真面目だね」


「うう……。カイン殿から見れば確かに私たちの掟は堅苦しいものに見えるのかもしれないが……」


「でも、そういうところがシルヴィアのいいところだと思うよ。僕はいくらでも待つから。シルヴィアの準備が出来たら教えてよ」


「そ、そうか。よかった」


 シルヴィアは明らかにほっとした表情を見せた。

 よっぽど心配してたみたいだね。


「いや、もちろんカイン殿の気持ちに気がついてはいたんだが、こうして言葉にして確認しないと不安でな……。こんな浮ついたことに意味などないと思っていたが……ふふっ。なかなかどうして、うれしいものなのだな」


 恥じらうような笑顔に思わずドキッとする。


「どうした?」


「い、いや、なんでもないよ」


 さっきの笑顔がかわいかったから、なんてもちろんいえるわけなかった。

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