まずはお試しクエストから
家を出た僕たちは、セーラの店に寄ることにした。
セーラの店はクエスト屋だ。
そこでライムがいてもクリアできそうな簡単なクエストを受けようと思うんだ。
それでライムが満足してくれればいいし、もし本当にライムが強かったら、一緒に一角獣のクエストに向かってもいい。
あのクエストは本当に大変だから、手伝ってくれる人がいると僕としてもすごく助かるんだよね。
「おはようセーラ」
「あらカイン、今日も早いのね。さっそくクエストに……」
そこまで言ったセーラが、僕のとなりに目を向けた。
ライムが僕の腕にしがみつくようにべったりとくっついて、辺りをきょろきょろと見回してている。
「その子は、誰?」
セーラの声が二度くらい低くなった気がしたけど、怒らせるようなことなんてなにもしてないと思うし、気のせいだよね……?
「この子はライムっていうんだけど、ええと……なんて説明したらいいのかな」
幻のレアモンスターを助けたら恩返しに来てくれたんだ、と正直に言っても信じてもらえるだろうか。
僕が迷ってると、自分の話題だと気がついたライムがキョロキョロさせていた視線をセーラに向けた。
「カインさんのお友達ですか? こんにちは、ライムといいます! カインさんに付けてもらった名前なんです!」
ニコニコと嬉しそうに報告する。
セーラは困惑するような顔になった。
「カインが名前を付けた? どういうことなの?」
「それは……」
僕は店の中を見渡した。
お客は僕たちしかいないため、店内は僕たちとセーラしかいない。
これなら本当のことを言っても他の人に聞かれる心配はなさそうだ。
「実はライムは……」
「はい! わたしたち夫婦なんです!」
「………………は?」
セーラの口から聞いたこともないほど冷たい声が聞こえてきた。
「先日わたしがケガをして動けないでいたところ、カインさんがやってきて、わたしの傷を治すためといって強引に交尾を迫ってきたんです。そのときの責任をとって一緒に住ませてもらいました。
カインさんはいつもは優しいのに、交尾の時はすっごく強引で、そのギャップにわたしはすっかりメロメロになってしまって……」
恍惚とした表情で語るライム。
うん。色々と言葉のチョイスがおかしいね。
まだ人間の生活に慣れてないから仕方ないのかな?
今さらライムの言葉を止めても手遅れなため、達観した心境で僕が聞いている間に、セーラの顔から表情が消えた。
冷たい視線が僕を突き刺す。
「どういうことか説明してもらえる?」
「……はい」
うなずく以外に僕に選択肢はなかった。