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よく聞こえなかったからもう一度いってくれないか

 ちょっと興奮気味だったシルヴィアだけど、やがて冷静に戻ったみたいだった。


「初めはレベル1の冒険者なんて……と思っていたが、今やカイン殿の実力を疑うことはないからな。機会があったら遠慮なく頼らせてもらおう」


 そういったシルヴィアは、肩の力が抜けたようにふわりと微笑んだ。

 いつも凛としてる人が急に笑顔になると、ギャップでものすごく魅力的に見えてしまうよね。

 力の抜けたシルヴィアの笑みはどこか晴れやかで、思わずドキリとしてしまった。


 ちょうどそこにエルがやってくると、僕を見てこう言った。


「キミは今そこの人間に雌としての魅力を感じたね」


「「えっ!?」」


 思わず僕とシルヴィアの声が重なってしまう。


「あれ? そっちの雌もだんだん発情してきて……」


「いいいきなり何を言ってるんだ!? 私なんかを魅力的とか、発情してるとか、なんの根拠があってそんな……!」


「ボクは人間の感情がある程度わかるんだ。だからなんとなく感じるんだよ。さっき人間がボクのところに並んでる時と似た感情を、二人のあいだに感じたんだ。だから交尾でもするのかなと思って見に来たんだけど」


「こ、交尾って……」


 シルヴィアが絶句したように口をパクパクとさせている。

 顔も真っ赤だ。

 そりゃいきなりこんなこと言われたら誰だって驚くよね。


 最初からこんなに言葉を話せるのはすごいんだけど、やっぱりどうしても言葉の機微にまでは対応できないみたいで、だからこうした直接的な表現になっちゃうことが多いみたいなんだ。

 僕は慣れてるから平気だけど、シルヴィアには刺激的過ぎたみたいだ。


「それで、キミはどうして人間の雌に魅力を感じたんだい」


「ええっ!? そ、そんなことまで聞くの!?」


 いくら慣れてるとはいってもこれはさすがに刺激的すぎるよ。


「ボクは人間の生活に興味があるし、できれば一緒に暮らしていきたいと思ってる。だから人間の考え方はなるべく早く知りたいんだ」


 うう……。そんなことを直球で聞かれても……。

 シルヴィアも赤い顔で絶句しながらも、なにやら興味深そうにチラチラと僕を見てくるし……。


 どっちみち感情が見えるというエルに嘘は付けない。

 ここは正直に言うしかないかな……。


「えっと、さっきのシルヴィアは、すごくかわいかったんだ……。それでつい見とれちゃったというか……」


「……っ!!」


 シルヴィアの背筋がビクンとはねるように伸びた。


「戦ってる時のシルヴィアはすごくカッコいいんだけど、さっきの笑ったシルヴィアはとてもかわいくて魅力的で……」


 正直に言うのはとても恥ずかしかったけど、いつもライムにもっと素直なことを言われているせいか、わりと素直に口にすることができた。

 シルヴィアのほうが顔を真っ赤にして恥ずかしがっているくらいだ。

 やがて真っ赤な顔のまま、おずおずと僕に視線を向けてくる。


「それは、つまり、私のことが好きということか?」


「あ、えっと、まあ……好きか嫌いかでいえば、好きだけど……」


「そ、そうか……」


 なにやらモジモジとしながらうつむいた後、僕に向けてもう一度行った。


「悪いが良く聞こえなかったからもう一度言ってくれないか?」


「ええっ!? わりと目の前で言ったと思うんだけど……」


 この距離で聞こえないなんてことはないはずなんだけどな……。


「ね、念のための確認だ。それで、先ほどカイン殿は何と言ったのだ」


「あの、好きか嫌いかで言えば、好きだけど……」


「……。ううむ。またしてもよく聞こえなかったな。もっと具体的にいってほしい。カイン殿は誰のことをどう思っているのだ?」


「ええっと、僕はシルヴィアが、好きだけど……」


「~~~~~~~っっ!!」


 顔を隠すように両手をあてると、そのまま座り込んでしまった。


「もうしんでもいい……」


 なにやら物騒というかよくわからないことをつぶやいてるけど……。

 そんなシルヴィアを見下ろしながら、エルが不思議そうに首を傾げた。


「この人間もキミもこんなに発情してるのに、どうして交尾しないの?」


 そんなこと僕に聞かないで……。

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