二人の美少女
料理ができたのでさっそく騎士団の人たちに配ることにした。
でもさすがに全員分を配って回るのは大変なので、みんなで並んで取りに来てもらうことにしたんだ。
ちなみに渡すのは僕の他に、ライムとエルにも手伝ってもらった。
そんなわけで、僕とライム、エルのところにそれぞれ騎士の人たちが並びに来たんだけど……。
「やっぱりライムさんのところだよな。めちゃくちゃ美人でしかも強いとか、マジで憧れだわ」
「それにあの笑顔がたまらないんだよな。見てるこっちも癒されるよ」
「俺はあのエルって子の方が好みだな。かわいいだけじゃなく、あのなんともいえない神秘的な感じがグッとくるんだよな」
「そうそう。あのボーイッシュな感じがいいよな。実はドラゴンが変身した姿らしいけど……それがまた魅力的っていうか」
「マジでタイプ過ぎる……。このチャンスに告白しようかな……」
「やめとけ。二人ともあのカインってやつにベタ惚れらしいぞ」
「どうしてあんな冴えない感じのやつに……。くそう、俺もあんな美少女と一緒に暮らしたいなあ……」
「うちにはシルヴィア隊長がいるだろ」
「いるけど! 隊長も美人だけど! でも俺たちに笑いかけてくれたこととか一度もないだろ!」
「わかってないな。そこがいいんだろ」
「お前……」
様々な話し声が聞こえてくる。
ほとんどの騎士たちはライムかエルのところに並んでいた。
わずかにライムの方が多い気もするけど、エルの人気も中々だ。
まあ二人ともかわいいからね。
人気が出るのもわかる。
内心でうなずいていたら、エルが僕のほうに近寄ってきた。
「ちょっと聞いてもいいかな」
「いいけど、どうしたの?」
「ボクって人間の雄から見て魅力的なのかな?」
「えっ!?」
いきなり直球で聞かれたので思わず驚いてしまった。
「ドラゴン同士みたいに人間と魔力でコミュニケーションをとることはできないけど、何となく考えてることの傾向は感じられるんだ。それでボクのところに来る人間を見てたんだけど、みんな興奮してるんだよね」
「あ、そうなんだ……」
いくら厳しい修行を積んでいる騎士の人でも、中は人間だからね。
そう思ってしまうのは仕方ないよね。うん。
「中には交尾したいと思ってる人間もいるみたいだし、これってボクが人間の雄から見て魅力的だからなんだよね?」
「ああ、うん。まあ、そういうことになるかな……」
それにしても表現が直接的すぎて答えに困るよ……。
「でもボクはまだ人間のことがよくわからなくて。ボクのどこに雌としての魅力があるのか教えてほしいんだ」
「え、ええっ!?」
いきなりそんなこといわれても……。
「好みは人それぞれだから全員がってわけじゃないけど……。エルはかわいいからね。それで人気があるんだと思うよ……」
「かわいい? つまり見た目が整っているってこと?」
「そうだね。そういう言い方になるのかな……」
「それじゃあ……」
エルが僕の目の前にまで迫ってきた。
「キミから見てボクはどう? 交尾したいって思う?」
「えっ!? い、いや、それは……」
そんなこといわれたって答えられるわけない。
僕が困っていると、エルが表情を曇らせた。
「キミから見るとボクに魅力を感じないのかな。ボクはかわいくない……?」
「そ、そんなことはないよ! むしろ十分すぎるくらいかわいいと思うけど……」
「それじゃあ……」
さらに迫ってくるエルと僕のあいだに、さらなる美少女が飛び込んできた。
「わたしは!? わたしはかわいいですか!?」
ライムがエルを片手で引き離しつつ、僕の間近に顔を寄せてくる。
「も、もちろんライムもかわいいよ」
そういいながら、僕は恥ずかしくてつい視線を逸らしてしまった。
エルにかわいいといったときはそこまででもなかったのに、なぜかライム相手だと恥ずかしくて仕方ない。
うう……。なんなんだろうこれは……。
「カインさんにかわいいっていわれちゃいました……。えへへ……」
一方ライムは、嬉しすぎたのかトロトロに溶けていた。
そんなライムと僕の様子を、エルが興味深そうに眺めていた。
ちなみにそんなことをしているあいだ、配給の列は完全に止まっていたけど、二人とも全然気にしてないみたいだった。
うう……。みんなの視線が痛いよ……。