お手伝いさせてください!
朝食を食べ終えたライムはなにかお礼をしたいと言い出した。
「カインさんにお礼をしにきたのに、昨日からもらってばっかりです。それもこれもカインさんが優しすぎるからいけないんです。わたしにもなにか恩返しをさせてください!」
「そんなこと気にしなくていいけど」
「ダメです!」
自分の作った料理を美味しそうに食べてもらうだけで、あんなにうれしくなるなんて知らなかった。
それだけでも恩返しとしては十分すぎたんだけど、それじゃあライムは納得しそうにないなあ。
「うーん、それじゃあ、食器の片づけをやってもらおうかな」
「はい、わかりました!
……ところで、食器の片づけってなんですか……?」
まずはそこの説明からかあ。
☆☆☆
ライムに食器の洗い方や片づけ方を教えると、嬉々としてやりはじめた。
最初はハラハラしながら見守ってたけど、さすがにこれくらいなら失敗する心配もなさそうだ。
安心した僕は、さっそく荷物の整理をはじめていた。
昨日帰ってきたときに放り出したままなにもしてなかったからね。
やがて片づけを終えたライムがそばに寄ってきた。
「なにをしてるんですか」
「昨日のクエストを失敗しちゃったから、また行かないといけないからね。そのための準備だよ」
「おでかけですか? わたしもいっしょに行きたいです!」
元気よく手を挙げて主張する。
「気持ちはありがたいけど、けっこう遠いし、危険な旅だから連れて行くわけには……」
「危険ならもっと一人でなんて行かせられません! それに、こう見えてもわたしは強いですから、カインさんをいっぱい守ります!」
確かにライムの力は強い。
こんな細い腕のどこに、ってくらいのパワーがあって、抱きつかれたら僕なんかじゃまったくふりほどけなくなる。
だから僕よりも強いのは確かだ。
「そういってくれるのはうれしいけど、やっぱり危険だし……」
「逃げ足も誰にも負けない自信があります!」
世界最高のレアモンスターであるライムなら確かに逃げ足は誰よりも早いかもしれないけど。
説得しようにも、ライムは引く気のない表情で顔をぐいぐいと近づけてくる。近い近い。
これは諦めてもらうのは難しそうだ。
「わかったよ。ライムも一緒にいこう」
「本当ですか!? やったー! カインさんとおでかけですね!」
両手をあげて子供みたいに喜びを爆発させる。
これから危険なクエストに行くというよりも、まるでピクニックに行くみたいな感じだな。
まあ本当にいきなり高難度のクエストに行くつもりはないけどね。