シルヴィアに気持ちよくなってもらいたいんだ◇
「そんなに恥ずかしいことなの?」
「ああああああ、当たり前だろう!? さっきからカイン殿はなにを言ってるんだ!?」
「うーん、そうなんだ。まあ考え方は人それぞれだからね」
ベッドの前まで来た僕を、シルヴィアが少しうるんだ瞳で見上げる。
「え、あ……。ほ、ほんとうに、するのか……?」
「僕はそのつもりだけど……。もしかしてシルヴィアはしたくないの?」
「し、したくない、というわけではないというか、うぅ……。カイン殿は、私の気持ちを知っているのだろう……。そんなこと、聞かないでくれ……」
「でもシルヴィアの口から聞かないとわからないし」
「ううぅ……。ライム殿が、カイン殿は夜になると急に強引で意地悪になるといっていたが、こういうことだったのか……」
「シルヴィアが嫌なら無理にしたくないんだ。シルヴィアの気持ちを大切にしたいから」
「私の、気持ち……」
しばらく考え込むように黙った後、やがて意を決したように告げた。
「わかった、正直に言おう。……私も、カイン殿と一緒に、したいと思っていたのだ……」
「そっか。よかった」
「ううう……。恥ずかしくて死んでしまいそうだ……」
じゃあさっそくマッサージをはじめようとして、シルヴィアが鎧を着たままなことに気が付いた。
さすがに鎧の上からマッサージなんてできないよね。
「じゃあまずは脱いでくれるかな」
「……ッ! はい……。わかりました……」
なぜだか急に言葉遣いが丁寧なり、しおらしい態度になっていた。
ぎこちない動きで鎧の留め金を外す。
中から現れたのは、薄手の布服に身を包んだ、華奢な女性の姿だった。
普段着となったシルヴィアは、とてもきれいで美しかった。
いつもの勇ましい姿を見ているから忘れがちになってしまうけど、シルヴィアだって女の子なんだ。
それに、なんというか、鍛え抜かれた騎士の体は引き締まっていながら、女の子としての部分は豊かに育っている。
鎧越しではわからなかった意外な部分に、僕は思わず息が止まってしまった。
よくよく考えてみたら、女の子のマッサージをするって、ものすごいことなんじゃないだろうか。
勢いでつい引き受けてしまったけど、やっぱりやめた方がいいのかな。
「あ、あの……。あんまり見られると、その……」
「あ、ああ、ごめん! そうだよね!」
慌てて視線を逸らす。
確かにじろじろ見られたら恥ずかしいよね。
とにかく、よけいなことは考えないようにしよう。
シルヴィアは純粋にマッサージをしてもらいたがってる。
なのに僕が邪な考えでいるわけにはいかない。
これはマッサージ……。これはマッサージ……。
頭の中で何度も言い聞かせる。
鍛えられた体からは、引き締まった筋肉のしなやかさと、肌の柔らかさが感じられた。
どこをどう見ても健康的な身体で、正直マッサージをする必要なんて感じられないけど……。
でも、シルヴィアが疲れてるのは確かだ。
少しでも楽になってもらいたい一心で背中をマッサージをはじめることにした。