変化していくもの◇
夜になり隊が寝静まった。
いつもなら見回り達の緊張した空気が流れてくるころ合いだ。
しかし今日はいい意味で緊張がほどけているのを感じる。
緊張感は大切だが、過剰に緊張しては体が硬くなり、いざという時に動けない。
そういう意味で、今の状態は理想的な空気ともいえるだろう。
だがその変化は、己を律することを第一とする騎士団において、好ましい変化とはいえないかもしれない。
歴史ある騎士団の方々からは苦言をいただくことになるだろう。
だが、私たちは『自由の風』団だ。
普通の隊とは違う。
これまでの騎士団にはない自由で新しい風こそ、私のたちの気風といえるのではないだろうか……。
ここのところ隊の雰囲気が変わってきているのを感じている。
空気がゆるんだというか、騎士同士での会話も多くなり、仲がよくなったようだ。
それはよく言えば、明るくなったといえるだろう。
騎士同士の会話が多くなり、仲も深まったようだ。その変化は連携にも現れている。
私の指示がなくても、騎士同士で助け合い、動くようになった。
もちろん私の意図しない動きになることもあるから、一概に良いことだけとはいえないかもしれないが。
「変化、か……」
それは自分にも感じている。
なによりも考えが柔らかくなった。
今までなら、まず騎士としてどうあるべきか、を最初に考えていた。
だが今は、騎士であることの意味を考えるようになっている。
騎士としてあるとはどういうことなのか。
そのためにするべきことはなんなのか。
してはならないこととは、なんなのか……。
わかっている。
志さえ強くあれれば騎士である、などというのは詭弁だ。
たとえそうあったとしても、やはりしてはならないことというのはある。
私はきっと疲れているのだ。
慣れない隊長を任されたため、肉体はもちろん、精神的にも疲弊している。
だから、癒しが必要なのだ。
頭はいつしか、カイン殿とライム殿のことを考えていた。
今日の夜も二人はテントにいるのだろう。
二人がなにをしているのか、具体的にはわからない。
ただ、テントの布ごしに動く二人の影から想像するしかない。
気がつくと私は鎧を着たまま、ベッドの上にぐったりと沈み込んでいた。
「また……、やってしまった……」
私は罪悪感と共に濡れた息を吐き出した。