これは他の者には秘密にして欲しいのだが……◇
不思議がる僕に向けて、シルヴィアがさらに質問してきた。
「ところでひとつ確認しておきたいのだが、やはりカイン殿も一人でするのか……?」
一人で?
もしかしてマッサージの話かな?
「いや、僕は必要ないからしないよ。ライムがいるし」
なにせレベル1の僕は戦闘なんてしないし、あまり運動もしない。
もしなにかあっても、ライムなら大抵ワンパンで終わらせちゃうし。
だからマッサージが必要になることはないんだ。
シルヴィアは僕とライムを見比べるように見て、一人納得するようにうなずいた。
「そ、そうか……。確かにカイン殿にはライム殿がいるからな……。一人でする必要なんてなかったか……。すまない。愚かな質問だった」
「ああ、うん、別に気にしてないというか、そこまで気にするようなことでもないと思うけど……」
「お二人だから話すので、これは他の者には秘密にして欲しいのだが……」
かすれるような声でシルヴィアがそう言うと、顔を赤くしながら話しはじめた。
「……今さらもうバレているだろうが、昨日は、その、二人の声を聞いていたら、気持ちが昂ぶってしまってな……。それで眠れなかったのだ……。
なにぶんこういったことは経験がなく、自分でも自分の変化に戸惑っている……。こんな私は、おかしくなってしまったのだろうか? それとも、これが普通なのだろうか……?
不安になったのだが、相談できる相手もいなくてな……。それでライム殿に話を聞こうと思ったのだ……」
真っ赤になってうつむきながら、ぽつぽつと小さな声で話している。
ただのマッサージの話なのに、まるで重大な秘密を打ち明けるかのような雰囲気だ。
いつもの凛とした立ち姿からは想像も出来ない、まるで普通の女の子のような姿だった。
こういうことでもなければ忘れてしまいがちだけど、シルヴィアだって僕らと変わらない年の女の子なんだよね。
それを思い出したことで、出来る限り力になってあげたいって気持ちがより強くなった。
もしかしたらライムも同じような気持ちになったのかもしれない。
うつむくシルヴィアに向けて、ライムがにっこりと答えた。
「他の人間のことはわからないですけど、わたしはカインさんと一緒でとても幸せです」
「幸せ……。そうか、それが、女の幸せというやつなのか……。
二人ともありがとう。おかげでようやくわかった気がする」
僕にはよくわからなかったけど、シルヴィアは納得したみたいだった。
役に立てたのならよかったな。