きっと仲良くなれるよ
グリフォンが咆哮と共にシルヴィアに襲いかかる。
予想外の襲撃に驚き固まっていたシルヴィアだったけど、僕の声で我に返ったみたいだった。
素早く盾を構え、空から襲いかかってきたグリフォンの一撃をなんとか受け止めた。
あの重い一撃を受け止めるなんてさすがだ。
僕なら軽く吹き飛ばされてるよ。
だけど突然の襲撃で騎士団はまだ浮足立ってるし、シルヴィアの体調も見たところ万全じゃない。
このままじゃ全滅は時間の問題だ。
「しょうがない。ここは僕に任せて」
「なっ……!?」
グリフォンに近づく僕を見て、シルヴィアが慌てて止めようとした。
「カイン殿の強さはもう十分承知しているつもりだが、それでも危険だ! 一人で勝てる相手ではないぞ!」
「大丈夫だよ。まあ見てて」
僕が近づいていくと、ライムがとなりに並んできた。
「ライムも待っててくれても大丈夫だよ」
「いいえ、わたしも一緒に行きます。カインさんをお守りするのがわたしの仕事なので! それに……」
「それに?」
「……いえ、なんでもないです。とにかく、わたしもカインさんと一緒に行きますから!」
「そう? それじゃあ一緒に来てもらおうかな」
僕とライムは並んでグリフォンたちのほうへと向かった。
子供を守るように、夫婦の二匹が並んで僕たちに牙をむいて威嚇する。
咆哮だけで空気を引き裂くような、敵意をむき出しにした声だった。
シルヴィアたちがはらはらと見守る視線を背中に感じながら僕は歩いていき……。
「はははっ! くすぐったいって、やめてよ!」
すっかり懐いたグリフォンたちが大きな舌で舐めてきた。
大きな口で甘噛みしてきたり、爪を隠した手で撫でてきたりするものだからくすぐったくて仕方がないよ。
そうやって三匹とじゃれついていたら、僕らのあいだにライムが無理やり割り込んできた。
「カインさんのとなりは私の場所なんです! 犬畜生はどいてください!」
自分の倍以上もあるグリフォンたちをぐいぐいと押しのける。
それからキッと鋭い表情で僕をにらんだ。
「これだから! やっぱりカインさんはすぐ浮気します! 着いてきて良かったです!」
「ええっ? 浮気なんてしてないけど……」
というかこれが浮気なら不倫になっちゃうんじゃ……。
でも家族総出で好かれてるしなあ。
やっぱり浮気とかじゃないと思うけど。
ペットがじゃれついてきただけなんじゃないかな。
「こ、これはいったい……」
シルヴィアが恐る恐る僕たちのほうに近づいてきた。
「グリフォンがこんなに人間に懐くなんて……そんなことが本当に可能なのか……」
「もちろんだよ」
僕はうなずいた。
「グリフォンといっても、獅子と鷲が合体したモンスターだから。獅子も鷲も人間と共存できる動物だ。ならその二つが合体したグリフォンとだって仲良くなれるに決まってるよ」
だからネコをあやすみたいな感じで接していたら、こうやって懐いてくれたんだ。
僕としては当然のことだと思うんだけど、どうやら他の人たちからしてみたらそうでもなかったみたい。
シルヴィアは声にならない様子で僕のことを見ていた。




