表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/362

女騎士の葛藤◇

 カイン殿に教えてもらった場所で昼休憩を終えた後は、モンスターと戦闘になることもなく予定の場所までたどり着くことができた。

 おかげで野営地の準備もスムーズに進んでいる。

 ちなみに場所は、昼と同じハウンドドッグたちが嫌う草の群生地だ。

 カイン殿が場所を把握していたため、迷うこともなくすぐに着くことができた。

 草原は果てしなく広いが、目印となるものが少ないため迷いやすい。

 なのに、こんな目立たない草の群生地の場所まで正確に誘導できるとは、やはり彼はただものではない。


 ここならばモンスターに襲われる心配がないため、夜の見張りは最小限にした。

 二日続けて戦闘があったため、部下たちも疲れ果てていることだろう。

 それもあって休養を多めに取るように命令した。

 おかげで宿営地はずいぶん静まりかえっている。

 普段では考えられないほどだ。

 もちろんそれが出来るのは、この場所をカイン殿に教えてもらったおかげである。


 剣を持って戦えば私のほうが強いだろう。

 だが、無益な殺生をしないカイン殿のほうが、騎士としての理想に近いのではないか。

 そんな思いが私の中に生まれはじめていた。


 騎士は国を守るためのもの。

 真の騎士は戦わずして勝つものだ、といっていたアルフォード様の言葉を思い出す。

 殺さなくてもいいものを殺すのは、未熟な証ではないだろうか。


 カイン殿のことを思い浮かべたとき、昨夜のことを思い出してしまい、私は顔が熱くなるのを自覚した。

 私は生まれてから今日まで、立派な騎士になるべく育てられてきた。

 だからそういったことには疎い。

 宮廷の女たちが色恋の話をしていても、私には関係のないことと思って聞き流してきた。

 だが、今となっては……。


 今日は見張りの数が少ない。

 私は誰にも見つからないように、こっそりとテントを忍び出た。

 どうして人に見つかってはならないのか、自分でも答えられない。

 だけど、どうしても、足が向かうのを止められなかった。


 やがてカイン殿のテントが見えてくる。

 それに従って、小さく声も聞こえはじめた。


「カインさん……また入っちゃいましたあ!」

「ええっ、また!?」

「うぅ~、取ってください~」


 静まりかえった夜の闇に、ライム殿の甘い声が響きわたる。

 テントの布越しに影が見える。

 はっきりとした姿が見えないのが、よけいに妄想を駆り立てた。

 心臓が爆発しそうなほどに高鳴っている。

 二人が今なにをしているのか、私にはわからない。

 だからよけいに想像してしまう。


 ライム殿の声はとても気持ちよさそうで、幸せそうだった。

 夫婦の営みをすることは、女としての幸せだという。

 そう自慢げに話す宮廷の女たちの話なんて、今まで信じていなかった。

 だが、この声を聞いていると……。


 私は、フラフラと、二人の影が映るテントに近づいていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました
「横暴幼馴染が勇者の資格を剥奪されたので、奴隷にして再教育してあげることにしました」
https://ncode.syosetu.com/n7380gb/

アーススターノベル様より9/14に書籍版が発売されます!
よろしくお願いします!
i000000
クリックすると特集ページに飛びます
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ