真の騎士
僕の提案でお昼休みは、ハウンドドッグが嫌う草の群生地で行うことになった。
ここなら彼らに襲われる心配がないからね。
お昼ご飯の準備をしていると、シルヴィアが僕たちのほうにやってきた。
どうしたんだろう、と思っていたら、急に頭を下げてきた。
「今日は仲間の危ないところを助けてもらったそうだな。礼を言わせてくれ。感謝する」
「そんな、いいですよ。困ったときはお互い様ですし。頭を上げてください」
慌てて顔を上げるようにいったけど、シルヴィアの態度は変わらなかった。
「それだけではない。昨日は二人に失礼な態度をとってしまった。その非礼も詫びさせて欲しい。すまなかった」
そういってますます深く頭を下げる。
失礼な態度ってなんのことだろうと思ったけど、そういえばレベル1の冒険者なんて信用できないとか何とかいっていたっけ。
「気にしないでください。それが普通の反応ですし」
普通の子供だってレベルが2か3くらいはあるもの。
レベル1の冒険者なんて信用できなくて当たり前だからね。
なのにわざわざ昨日のことを謝るために来てくれたみたいだ。
さすが騎士団の隊長だけあってとても真面目な人なんだな。
「それに、この場所に誘導してくれたのも我が隊のことを考えてのことだろう。ここなら先ほどのハウンドドックに襲われる心配もなく、しかも奴らの縄張りだから他のモンスターに襲われる心配もない。野営するにうってつけの場所というわけだ」
「さすがに気がついてましたか。さすがオルベリクさんですね」
「む……」
一瞬顔をしかめると、わざとらしく咳払いをした。
「それと、私のことはシルヴィアでいい。オルベリクは家の名前だからな。私のことは、私の名前で呼んでくれ」
そういって、少しだけ頬を赤くした。
昨日は名前を呼ぶなと怒られたんだけど、どうやら許してくれるみたいだ。
少しは認めてくれたってことなのかな?
密かに感激していると、シルヴィアがなにやらちらちらと僕たちのほうを見ていた。
「どうしたんですか?」
気になったのでたずねると、シルヴィアがわざとらしく咳払いした。
「う、うむ。実はな、二人に少し尋ねたいことがあるんだがいいだろうか?」
これだけ真面目で物怖じしないシルヴィアが言いよどむようなことってなんだろう。
「もちろんいいですよ。なんですか」
「うむ。ありがとう。実はその、なんというか……」
なにやら言いにくそうにもじもじとしたあと、意を決したように尋ねてきた。
「貴殿たちは、昨夜テントでなにをしていたんだろうか?」




