その名前、憶えておかなければなるまい◇
レベルは強さの象徴であり、レベル1の軟弱者なんて私の騎士団には必要ない。
そう考えていたが、誤りだったということだ。
そういえば、アルフォード様は昔から家柄よりも実力重視のところはあったが、あのドラゴン退治からその傾向がはっきり強くなったように思う。
私のような若輩者を隊長に推薦してくれたのも、そのおかげだろう。
そしてあの者たちと出会ったのも、そのドラゴン退治の時だといわれている……。
それはつまり、もしかしたら……。
いずれにしろ、アルフォード様に推薦されるだけのことはある、と認めるしかないだろう。
「名前は確か、カインとライムといったな……」
その名前、憶えておかなければなるまい。
そのとき、テントの外からかすかにうめき声のようなものが聞こえた。
誰かが苦しんでいるような、くぐもった女の声だ。
このあたりの草原には夜行性のモンスターも多い。
もちろんそれを警戒して、交代制で常に見張りはさせているが、夜に紛れる影のようなモンスターがいると聞いたことはある。
シャドーウルフ。あるいは、ナイトメアバットなどだ。
もしそれらが侵入してきたのなら、すぐに退治する必要がある。
私はすぐに剣を取ると、さやから抜き放ってテントの外へと出た。
剣を油断なく構えたまま周囲の様子をうかがう。
ところどころに松明などの明かりを置いてあるが、それで完全に影をなくせるわけではない。
それどころか、むしろ一部の闇を濃くしてしまっている。
そのせいでどこに潜んでいるか容易には見にくくなっていた。
これは松明の配置を考え直す必要があるな。
心の隅で考えつつ、声のする方へ近づいていく。
どうやらそれはあの二人のテントからするようだった。
うめくような女の声は、ライム殿のものだ。
「あの二人が襲われるほどとなると……。よほどの強敵に違いあるまい……」
緊張に剣を握る手に力がこもる。
いつの間にか手のひらに汗をかいていた。
滑らせないように慎重に握り直す。
近づくにつれて声も大きくなってくる。
ライム殿だけでなく、カイン殿の声も聞こえてきた。
はっきりとは聞き取れないが、どうやら二人とも激しく何かをしているようだ。
おそらくは戦闘中なのだろう。
呼吸音も荒く、なにやらもみ合っているようにも思える。
これはますます強敵に間違いない。
闇に潜む魔の者ども。あるいは魔王の眷属か。
慎重に歩を進めるうちに、二人の声も大きくなってくる。
やがてライム殿の声がひときわ鋭く響いた。
「カインさん、早くわたしの服の中に手を入れてくださぃ~」




