ライムって僕たちとは違うよね
結局鍋が空になるまでライムは食べ続けた。
次々に平らげていくライムの食べっぷりが楽しくて、僕はその様子をずっと眺めていた。
本当は明日の分なんだけど、こんなに美味しそうに食べてくれるのなら全然かまわない。
なくなったらまた作ればいいんだしね。
それよりも美味しく食べてもらうことのほうが、料理だってうれしいはずだ。
それに食べ方が僕たち人間と違うのも興味深い。
やっぱり世界は知らないことがたくさんある。もっともっと色んなところを冒険できるようになりたいな。
ライムの様子をじっと見つめていたら、僕の視線に気がついたみたいだった。
「あ、あの、そんなに見つめられると、ちょっと恥ずかしいです……」
「ああ、ごめんごめん。ずっと見てたら食べにくいよね」
僕の趣味はモンスター観察だ。
最初は、レベル1の僕が戦いなんてしたらあっという間に死んじゃうからどうすれば戦いをせずに済むか調べるためにはじめていたんだけど、そうやって様々なモンスターたちの生態を調べるうちに、だんだんとそういったのを調べるのが好きになっていったんだ。
世界には色々なモンスターがいて、色々な生き方がある。
危険といわれているモンスターが実は大人しかったり、感情がないといわれてるけど実は人間のように感情豊かだったりする。
目の前のライムだってそうだ。
これが元はゴールデンスライムだなんて、誰が信じるだろうか。
まあ、人間みたいっていうか、どう見ても人間そのままだけど。
この世界は知らないことがいっぱいで、それを知るのが楽しいんだ。
じいっと見つめ続ける僕の顔を、ライムがちらちらと気にしている。
「あ、あの、カインさん……」
「僕のことは気にせずにどんどん食べて」
「ううぅ……恥ずかしいっていったのに……。やっぱりカインさんは強引です……。でもそんなところがまた……」
うつむきながらなにやらもごもごと口元を動かしている。
指先で肉をつつくようにしながら、少しずつ体内に取り込んでいた。
一通り観察して満足すると、僕もスプーンを使って食べはじめた。
いちおう一杯分だけは残しておいたんだ。
うん。味がしみこんでて美味しくできてる。
ライムが驚いたように僕を見つめている。
「も、もしかして人間はそうやって食べるんですか……!?」
スプーンの使い方にはじめて気がついたみたいだった。
「僕たちは口からしか物を食べられないから」
「そうだったんですね。ごめんなさい。わたしまだ人間のことよく知らなくて……」
「謝ることじゃないよ。これから知っていけばいいんだし」
言ってから気がついた。
「……もしかしてそのままずっと人間の姿で生活するつもりなの?」
ライムが大きくうなずく。
「もちろんです。元の姿だと命を狙われてしまいますから」
それは確かにそうかもしれない。
でもそれってつまり……。
「もしかして、僕と一緒に暮らすってこと……?」