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シルヴィアの思い

 私、シルヴィア=オルベリクは、貴族の家で生まれた。

 子供のころから騎士としてのふるまいを教わり、それが貴族の務めだと思ってきた。

 己を高め、国のため、民のために奉公する。それが騎士なのだと。


 だから修行をさぼるような奴は、実力以前に騎士としての覚悟が足りない証だ。

 騎士の本分を思えば、そもそもサボるなんて発想が出てくること自体がありえない。

 常に己を律し、常在戦場の精神で在り続けることこそが騎士なのだから。


 ましてやレベル1など、そんな軟弱な奴は私の騎士団には必要ない。

 そんなやつをアルフォード様が連れて来た時は驚いたが、それ以上に驚いたのが、その軟弱者がコカトリスの群れを追い払ってしまったことだ。

 私の騎士団が総出でかかって、一匹仕留めるのがやっとだったというのに。


 そもそもミニゴブリンやスライムといった最弱モンスターでさえ、数匹倒せばレベルは2に上がってしまう。

 それすらもないとなると、わざと戦うことを避けてきたのだろう。

 生きていれば不意にモンスターに襲われたり、望まない戦いを強いられることはさけられないはず。

 あの男もそういった場面は何度もあったはずだ。

 にもかかわらずレベル1を貫くとなると、並大抵の覚悟ではない。


 モンスターは殺すよりも、生かして逃がす方がはるかに難しい。

 相手の敵意をくじき、逃げたほうが得策だと思わせなければならないから、相当な実力差が必要になるからだ。

 それをあの男は、こともなげにやってのけた。


 それにあの恋人の女も、コカトリスを素手で受け止めていた。

 予防薬とやらのせいで石化しなかったことに驚いていたため見落としていたが、そもそもコカトリスは普通の鶏ではない。

 雌鶏と毒蛇が融合し、石化の呪いを得た凶悪な魔獣だ。

 冒険者協会も、要注意モンスターのB級モンスターにカテゴリしている。


 その一撃は重く、盾を構えた騎士でさえ押し戻されてしまうほどだ。

 それをあの女は一歩も引くことなく素手で受け止めた。

 何らかのスキルを使ったのはまちがいないだろう。

 しかしスキルを使うところは見えなかった。


 冒険者カードがないからレベルはわからないといっていたが、冷静に考えれば嘘に決まっている。

 そもそもそんな者が存在していることがおかしいんだ。

 おそらくレベルを隠すためにわざとそう言ったのだろう。


 私は若手騎士の中でも実力はあるほうだと自負している。

 もちろん私より上の騎士などいくらでもいるが、決して弱いということはない。

 そんな私でもレベルは50に満たない。

 最近話題の若手冒険者でも、レベルが50を超えているということでかなり話題になっていた。

 アルフォード様もレベルはまだ100には届いていないとおっしゃっていた。


 そもそも、レベルが100を超える人間など、これまでの歴史上で果たして何人いるのだろうか……。

 天才中の天才といわれ、ドラゴンと一人で渡り合ったというアルフォード様でさえそのくらいなのだ。

 だが……。


 あの女はコカトリスの攻撃を素手で受け止めていた。

 しかも防具もなく、スキルを使用した気配さえなく。

 そんなことアルフォード様でさえ無理だろう。


 それが私の見間違いでなければ、そのレベルは100を優に超えることになる。

 それどころか、あのときよそ見をしながら会話をする余裕さえあった。

 もしあれが本気でないとすれば……。


「……ッ!」


 思わず体が震えた。

 あれですら本気ではないのだとすれば、全力がどれほどなのか、底が全く見えない。

 もしかしたらレベルは200を、……いや、300にも達するかもしれない。


 レベル1の最弱冒険者と、レベル300の最強冒険者。

 そんな二人がなぜ一緒にいるのか……。


「いったい、あいつらは何者なんだ……」


 思わず声が口からもれていた。

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