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カインさん、早くしてください~……◇

 ライムの服の中に入ってしまったという虫を取るために、僕はライムの服の中に手を入れていた。

 うん、自分で言っててもなにを言ってるかわからないけど、そういうことになってしまったんだからしょうがない。


 それにしても、服の中の虫を取る、と口で言うのは簡単だけど、実際にやってみるとかなり難しかった。

 ライムの服の中を直接見るわけにもいかないから、どこにいるのかわからないんだよね。

 それに見つけたと思っても、今度は虫が移動して逃げてしまう。

 思っていた以上に捕まえるのが難しいんだよね。


「ううう~……。カインさん、早くしてくださいぃ~……」


 ライムのガマンも限界に達してきたのか、服の形が溶けはじめてきた。


 ライムはゴールデンスライムが人間に擬態した姿だ。

 人の形だけじゃなく、服も擬態して作っている。

 だからライムの意識が乱れると、服の形も乱れてしまうんだ。


 このまま服が溶けると僕の腕まで一緒にライムの体に取り込まれてしまう。

 仕方ないからいったん引き抜こう。


 腕をライムの服の中から出す。

 ライムはベッドに沈むこむようにしてぐったりと倒れており、服は形を失ってほとんど裸になっていた。

 まだかろうじて切れ端が残っているけど……冷静になって見ると、とても直視しずらい姿だ。


 僕が視線のやり場に困っていると、やがてライムが潤んだ瞳で僕を見上げた。


「カインさん、どうしましょう……」


 最初よりもさらに顔を蒼白にしている。


「どうしたの?」


 ライムの様子はただことじゃない。

 心配になってたずねると、震えた涙声が返ってきた。


「溶けた服のあいだに挟まれて、虫がわたしの体の中に入っちゃったみたいなんです……!」

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