表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/362

服の中に入っちゃったんです!◇

 草原には多種多様な生き物がいる。

 ほとんどは日中に活動するけど、天敵を避けて夜に活動する生き物も意外と多い。

 そしてそういう生き物は、なぜか明かりに引き寄せられてくるんだ。

 昔は月の明かりに引き寄せられたともいわれているけど、今は人間が作り出したもっと強い明りがあるからね。


 はじまりは小さな羽音だった。

 やがて、僕のとなりで幸せそうに眠っていたライムが急にビクンと体をふるわせた。


「ひゃあっ! な、なんですか!?」


「どうしたのライム?」


「な、なにかがわたしの体の中に……!」


 慌てて飛び起きると、蒼白な顔を僕に向けた。


「カインさん、服の中に虫が入っちゃいましたぁ……!」


「ええっ? 大丈夫?」


「大丈夫じゃないですー! 取ってくださぃ~!」


 えっ?


「取ってって、虫を……?」


「カインさん、早くわたしの服の中に手を入れてくださぃ~」


 ライムが涙声で訴える。


「ふ、服の中っていっても……」


 服の中の虫を取るためには、もちろん服の中に手を入れなければいけない。

 さすがにそれは色々と問題がある気がするんだけど……。


「あっ、そういえばライムは服も自分で作ってるんでしょ。だったら服を消せば……」


「そそそ、そんなこと言っても、無理ですよぅ……! ひゃあああっ! 中で、中で動いてます! カインさん、早くしてくださいぃ~!」


 ライムの全身がぶるぶると波打つように震える。

 どうやら力が入らないみたいで、形もところどころ崩れかかっていた。

 うーん、確かにこんな状態じゃ細かい変化はできないかもしれないけど……。


「わ、わかったよ。中の虫を取ればいいんだね」


「は、はい、お願いしますぅ……」


「それで、虫は今どの辺にいるの? 背中とか……?」


 淡い期待を込めてたずねると、ライムが目に涙を浮かべながら答えた。


「胸のあたりです~……」


 そっかあ。胸かあ。

 できれば背中側が良かったなあ。


 いや、ここでひるんでいたらダメだ。

 誰だって服の中に虫が入ったら嫌に決まっている。

 ライムだって涙まで浮かべているんだ。

 まさかこんなことで忙しいシルヴィアを呼ぶわけにもいかないし、僕が助けなかったら誰が助けるというんだ。


 パッと取って、さっと手を抜けばすぐに終わる。

 なにも恥ずかしいことはない。

 人工呼吸が恥ずかしくないのと同じ。

 これは人助け。そう、人助けなんだ。


 自分に言い聞かせながら、何度も深呼吸した。

 そして決意を込めて宣言する。


「よ、よし、それじゃあ行くよライム」


「は、はい、お願いします……」


 そうしてライムの虫摘出大作戦が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました
「横暴幼馴染が勇者の資格を剥奪されたので、奴隷にして再教育してあげることにしました」
https://ncode.syosetu.com/n7380gb/

アーススターノベル様より9/14に書籍版が発売されます!
よろしくお願いします!
i000000
クリックすると特集ページに飛びます
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ