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凄腕のアイテムクリエイター

 シルヴィアが僕の作った薬を石化した騎士の腕に塗る。

 すると灰色になっていた腕が徐々に元の肌色を取り戻していった。

 よかった。うまくいったみたいだ。

 僕はほっと胸をなでおろした。


 シルヴィアたちはすごく驚いていた。


「本当に石化が治った……。こんなもので……」


「コカトリスが自分で石化しないのは、石化しないための成分を自分で持ってるからなんだ。だから、それを手に入れることができれば、石化を治すこともできるんだよ」


「理屈の上では確かにそうかもしれないが、しかし、あんな簡単なもので治るなんて、聞いたことが……」


「もちろん羽から取れる分じゃ成分は薄いんだけど。本当は血とか、しっぽの蛇の牙とかが一番いいんだ。

 でも石化はいきなり全部石になるんじゃなくて、徐々に範囲が広がっていくものだから、石化した直後なら皮膚の上の部分だけしか石化してないんだよ。それなら成分が薄いこの薬でも治せるんだ。

 もっとも、皮膚を越えちゃうと効果がなくなるから、時間との勝負だったんだけどね。まにあってよかったよ」


「ありがとう、あんたのおかげで助かったよ……!」


 石化していた騎士が、感極まったように僕の手を握る。

 まだ治ったばかりだから激しい動きはできないはずなんだけど……。

 それくらい感動してくれたと思えば、僕も薬を作って良かったって思うよね。


 僕たちが住む町にも石化を治せる人なんていないから、治すために戻るなら王都まで戻ることになる。

 そうなったら石化は腕だけじゃすまなかったかもしれないからね。

 石化が心臓にまで及ぶと血液が巡らなくなって体が腐りはじめるし、頭まで石化すると解呪の成功率は一気に落ちてしまう。

 高位の司祭はたくさんいるわけじゃないから、こんなところまで一緒に来てもらうわけにもいかないし。


「やっぱりカインさんはすごいですね!」


 感謝される僕をライムがうれしそうに見ている。


「そういえば君もコカトリスに噛まれたはずなのに、どうして石化しなかったんだ……?」


「わたしですか? わたしは石化しないんです」


「石化しない……?」


 シルヴィアが怪訝そうな表情を浮かべる。

 そういえば最近ではすっかり忘れてしまっていたけど、ライムの正体はゴールデンスライムが人間に擬態したものだ。

 そのためほとんどの攻撃がきかないのはもう慣れてしまっていたけど、それは普通ではありえないことなんだった。

 ライムの口ぶりだとコカトリスを食べたことがあるみたいだったし、きっとそのときに耐性が付いたのかもしれないね。


「ええと、ライムはその……。体質的に効かないというか、石化しにくい体になったというか……」


「石化しにくい体になった? まさか、石化予防薬まで作ったというのか!?」


「はい、カインさんはすごいんですから!」


 ライムがうれしそうにうなずく。

 たぶん僕が褒められたのがうれしいだけで、シルヴィアたちの言ってる意味はよくわかってないだろう。

 だけどそのおかげでシルヴィアたちは誤解してくれたようだった。


「そうか……。さすがはアルフォード様に推薦されるだけはある、ということか……」


「あ、ええと。まあ、大体そんな感じ……かなぁ?」


 何もしてないのに褒められるのは、なんだか申し訳ない気持ちになる。

 すごいのは僕じゃなくてライムなんだけど……。

 でも本当のことを言うわけにもいかないので、そのまま黙っていることにした。

 おかげで騎士たちのあいだでは「どんなものでも作れる凄腕のアイテムクリエイター」と思われちゃったみたいだ。

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