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ティケ・ティケ・テイケ・リ

 駆けていく男達の背中を見ながらステータスを開いた。

 今夜は満月だ。称号『月光の巫女』の陽光補正と月齢補正で、約4倍近いステータスになる。種族がエルフ系だから森の中だともっと上がるのだが、これで十分だ。

 だが固定のはずの種族が本人の意志とは関係なくコロコロ変わったいる。気にしたら負けだ。


陽光補正……ウィのパーソナルスキルで称号を問わず、夜中の0時にはx2、晴天下の正午ではx0.5の補正が掛かる。厚くて暗い曇天などでは、下降度が減少する。


月齢補正……『月光の巫女』の付随スキルでで満月(望)にx2、新月(朔)はx0.5の補正が掛かる。


 昼間はまぶしくてまともに目を開いていられないことがある反面夜目が利くので、上がったステータスで奴らの前に回り込んで、ちらちらとヲウスの後ろ姿を見せて、誘導していく。

 マーカーの動きは把握している。なるべく集めるように人目のない路地に誘い込んだ。


「ヲウスだな」

「奥は行き止まりでそれ以上いけないぞ」

「俺たち相手にちょっと遊びすぎしゃねえか」

 背後から男達は口々に言うので振り返ると因縁の2人と今朝の受取所の職員だ。

 あまし遊んだ感がないなあ。


「持ちつ持たれつの関係で活きましょうよ」

「バカを言うんじゃねぇ」

「だましやがって」

「そうだ。ゆんべ俺たちと飲み交わしたとか行ってたそうだが、おめぇとは飲んじゃいねぇ」


 はは、こりゃバレてますか。おおかたあの役人が隣のテーブルにでもいてたのかな。

 あそこにいた全員にマーカーをしとくべきだったかな。


 この3人以外は路地の入口辺に集まりつつある。

 奥を隔離する気だな。

 一網打尽にしたかったが、まあいいか。

 マーカーのない仲間もいるはずだ。取りこぼしは否めないな。


「じゃあお仲間に加えてもらえませんかね。いえ、ずっとじゃなくてね旅に行くまでの期間だけでも、稼がせちゃもらえませんか。それと他人に言うなんて事元も子もなくなるから言うわけ内じゃないデスかぁ」

 てへっ気味に言ってみたが、甘くはなかったみたいだ。いきなり(?)殴りかかってきた。

「殴られるのは痛いので勘弁して欲しいなぁ」

 いや、殴られるのは物理攻撃があまり利かないスライムごしなので、どーでもいいから誘ったのだが、ナイフも出してきた。

「ちゃんと旅立たしてやるよ。土ん中でおねんねしながらあの世に旅立ちなっ」


 あーそうくるのね。生き埋めの宣言か。


「ぢゃこっちも覚悟をしますか」

 ぺこりと一礼。リズムを付けて『ティケ・ティケ・テイケ・リ』と唱えスライムへ因縁の2人に対して頸から下にある重要器官以外の捕食を許可した。ギルド職員は声と四肢の麻痺だけだ。


「っ……」

「……」

「……」


 男達は声を出そうとするが、躰の動きは既に封じさせてもらった。呼吸の制御も獲ったからうめき声すら出せないはずだ。

 触感などは残しているから頸から下が別な物に置き換わっていく感覚は、いかほどか計り知れない。

 2人に近づいて、スライムの仮面も外しフードを少しずらして、声はヲウスのままだが地貌でにやりと笑って見せた。


「盗られたのを取り返すだけで、済ますつもりだったんだけどね。残念だねぇー」

 まだ眼球と口元など表情は奪っていない。身に起こる現状を無視して、男達は敵意をむき出しにして口をぱくぱくさせている。


「現状認識って言葉知ってるか。この期に及んでなお反抗する志は尊敬するが、哀れだね」

 貌をヲウスに戻して、ギルド職員に向いて忠告をする。


「タイラーさんは、この2人の身体がモンスターに喰われて首だけ残ってんのは気づいてるよね」

 青ざめた顔で、こくこくとうなづく。やっと気づいた2人がぎょっとしてこっちを向いた。


「連帯責任って言葉知ってる。こいつらの仲間なんだから、同罪でもいいよね」

 ぶんぶんと首を振る。

「でもタイラーさんが、こいつらに言わなきゃこんなことにはなんなかったんだよ」

 ぐいっと顔を近づけると、足下から水音とともにプーンと臭ってきた。

 ぱっと背後に跳んだ。こいつ漏らしやがった。( ̄。 ̄;)

 罪悪感をまだ持たない2人は巻き込まれた感も大きいのか、タイラーを冷たい目で見はじめた。


「ばっちいなぁー。そこでね、……」

 ギルド職員に、ココでの件は終わったことにして、お集まりの連中を解散するように丁寧にお願いした。

 聞き入れてもらえない場合は、2人のように意識だけを残して身体をもらうだけだと説明すると脅しているわけでなく、決定事項だと理解してもらった。

 表情筋もいただいた2人とギルド職員が、終結したと説明に向かう後ろ姿を見送って、民家の壁と塀を跳ねて屋根伝いに、音を立てないように注意しながら男達を追いかける。


 集団を見つけて、一気にマーカーが増えてめんどくなるが広範囲にスライムのミストシャワーを浴びせた。これは抵抗(レジスト)される率が上がるが、これ以外の発想がなかったのだ。

 ギルド職員と偽造人格の2人が処理は終わったから早く姿を消すように促すと、解散して夜の闇に消えていった。


 まだ打ち込んだだけで、マーカーとして機能してないが、一斉に機能したら、わしの脳が焼き切れないかのう。心配じゃ。


 さーて、帰って寝るか。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 暗躍する敵を描きたかったのですが、考想を進めるにつれだんだん胸クソが悪くなってきたので、わしTUEEEEと無双するつもりもなかったのですが、後から徐々に出そうと思っていた"古の人"設定を少し早めにちょこっと出していきます。種族に『アールヴ』と出してたのもお察し下され。



 『ティケ・リ・テイケ・リ』な鳴き声が本式と理解していますが、意味を含んでいるためと相手は、現在スライム枠ですのでね。


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