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仕込みはOk!

 周囲からは、多勢にぶつかった反動で倒れた、、新米冒険者に映ったのだろうか。


 ポンコツはモロにもらってしまったようで、苦悶の呻きが続き駆け寄るAFCの支えで、なんとか宿に帰り着きベッドへ横たわらせた。

 あばらを痛めたのだろう、いまも治まらない苦痛に、うめき続けている。


 宿の者に、状態を伝えて医者を手配して貰った。

 しばらくしてやってきたのは女医でおばさんだった。青黒く腫れた左脇腹を丁寧に診て、骨は折れていないようだが痛みはしばらく続だろうから、少なくても明日一日は安静にしておくようにいって、治療らしいことはせずに帰って行った。


 なんだったんだ?


 診察料は宿が立て替えた形だったので、受付にいき支払いついでに皮肉って訊くと腹を押さえていたので産科を呼んだらしいくて、強縮しまくりだった。


 んー、リアクションに (>.<)。


 受注証明と一緒に苦労して採取したのを奪われたのは、痛かったな。

 ソファーで体育座りをしながらわしは考える。

 相応の仕返しは覚悟しているだろう。


 犯行は朝に見かけた二人だった。

 ポンコツは何のことか分からなかったみたいだが、アイテム屋は、遠回しに新人から搾取する者がいることを仄めかしてくれていた。奴ら以外にもいるだろうが、少なくとも今は奴らだ。

 そして受注者が違うのにもかかわらず受注証明まで取り上げたと言うことは、ギルドの受取所に協力者がいるのだろう。


 窓の外は色が変わり始めている。もうすぐ夜になるな。

 冒険者称号を外して、隣の部屋へおじゃますると一人の男が跪いてぼそぼそと話しかけてきた。とりあえず聞くことにして、言葉が止まったので「元○ですかー」と、頬をぶってやった。

 反対側もぶってから、周囲で見守る男達に「あともよろしくお願いします」とぺこりと頭を下げて自室に帰ってきた。


 称号を巫女に替え、ポンコツにヒールは軽くマヒとスリープを掛ける。

 わしの場合、ステータス値とスキルは称号で変化する。外見は、

 これに気づいたのは、マレビトとして来ていたわしにメニュー画面とステータス画面の開け方を教わり、称号の欄の右に下向きの三角(▼)を見つけて、付け替えてみたからだ。

 他にも欄の右に下向きの三角(▼)があるので試しておこう。かな。

 ジョブは、攻撃力の双剣士から、多彩な道具が使えて身のこなしもよい器用なレンジャーにしておく。


 部屋に女が入ってきた。男ばかりでは不都合もあるだろうと同行するAFCの女性だ。

「脇への痛みで苦しんでいたのでスリープを駆けて眠らせています。起きて知ったら私を追いかけてくるはずですから、適当にはぐらかせて決してどこに行ったとか言わないでください」

「わかっているわよ。あなたが強いことは知っているけど、無理しないでちょうだいね」

「ありがとうございます。窓から出ますので後で閉めてくださいね。それと帰ってきたら合図をしますから、今度は開けてください」

「うん、任された」


 旅立つ前に、わしはシューロにAFCが入れ替わりで道中を見守ると聞かされていたが、道中のトラブルでポンコツにナンバーズとあの女性が補助としてついて来ていることは、バレている。

 ただポンコツにはAFCという、存在でなく別な何かと説明をしたようなのだが、わしには教えてくれなかった。


 それはそれとして、しばらく腰を下ろして路銀を稼ごうとしている地での障害は、潰しておきたい。


 わしは窓を開けると飛び降りた。下は柔らかな土のうえで、注意を引くような音は立てていない。

 二階の窓から身を乗り出す女性に、手を振った。

 昼間はどの称号も、森以外ではレベルに応じた充分な力は奮えないけど、特に巫女は夜だと何割も跳ね上がる。

 少し移動して、どことなくほっぺを腫らしているような男を見つけ、その後ろをついて行く。


 あのときナンバーズなら受取所で蹴られる前に、阻止することも可能だったが、あえて旅の修行の一環だからと、わしからのサインがあるまでは何があっても手を出さないようにと言っていた。

 そして去って行く男達に追跡者のスキル持ちを追わせて、関係者と居場所を突き止めてもらっていた。ほっぺたびんたは、ご褒美でした。

 ほっぺた男があれがそうだと一つの建物を指し示している。

 わしは左手を地面に向け、甲を右手の手刀でポン。

 ありがとうのサインを出して、帰らせた。


 入口を見るといかにもな飲み屋だ。扉は閉まっているので入らずに壁を登り、窓から中を見る。例の二人が、水商売か娼婦のような女にそれぞれ抱きつきながら酒を飲んでいる。

 あー、他にも似たり寄ったりでそれらしいのが屯している。


 見覚えのある二人の他に数人が一つのテーブルを囲み猥笑している。受取所でわしらの受注証明と依頼物で奴らに支払いをしたギルド職員の特徴に合致する者もいた。おそらく全員仲間だな。


 奴らに近い窓へと移り、覗くとそこは角度が重なって全員が見えない。元の位置に返り、気づかれないように、窓に隙間を作った。外気との温度差もあまりなくて、気づかれることもないだろう。

 喧騒の響で今ひとつ聞き取れないが、ポンコツがこのまま稼ごうとしたら、また巻き上げて、町を逃げ出そうとしたら街道のどこかで捕まえ、楽しんでから売り飛ばすと話しているようだ。

 一度ポンコツには、そういった経験も受けさせてみたいが、オマケも纏めてとか言っているので、今回は却下だ。


 この世界は、この手の輩が多いなあ。降りかかる火の粉は事前に消すことにした。おかげさまで良心はこれっぽっちも痛まない。


 スライムを呼び出し、細長い筒の中に、切り離した一部を入れた部分を凍らせる。

 狙いを付けて息を吐く。男の首筋に吸い込まれていった。さぁ次だ。

 同じテーブルに付く全員に種を仕掛け終わったので、引き上げることにした。


 窓を閉めて、壁を降りる。

 人目に付かないよう注意しながら宿へ駆け出した。


 宿の自室の下で、小石を拾い窓に投げると、コッンと音がして、女が顔を出したので小さく手を振り、壁を這い上って部屋に帰ってきた。

「ありがとうございます。あとは予定どおりよろしくお願いしますね」

 笑顔を返してきてそのまま無言で部屋を出て行った。なにも言葉を残さなかったのは、^別段なにもなかったと言うことだ。


 ソファーで仮眠をとることにした。

 まだ暗いうちに起き、ポンコツに軽くマヒとスリープを掛けて窓から出た。


 飛び降り、宿からも見られないところまで移動し、スライムをまとわりつかせて成人男性ぐらいの背丈になった身体を、インベントリーからヲウス・セットと呼ぶ装備に変えた。

 やはりフードが付いていて、手も手袋をして極力肌を隠したものだ。

 ポンコツとランク差が離れそうなので旅の途中で、ウィでやっても良かったが内緒で作った貢献度回避のアカだ。この島へ渡る直前で受けた依頼で、フィナ名義よか一つ下のクラスまで上がってしまい、ポンコツを追い抜いてしまっている。


 スライムの感応力で奴らの何人かがギルドにいることが分かっている。

 目以外の顔を隠し、フードを深く被ると、ギルドへ足を向ける。

 照明のない道だが、称号を巫女にすると、冒険者で何となく分かる程度の『夜目』が、格段によくなるのだ。


 まだ時間的にも暗闇の中に、中からほの暗い灯火が漏れているギルドが見えてきた。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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