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ごはーんとごはーんの間に

 夕方取りに来るとからと袖とかの調整を頼んでやっと店を出た。

 カフェ(?)に入りドーナツと飲み物で一息入れ、ウインドショッピングの後、ランチにした。


 大人なのに、好き嫌いが激しくランチと言っても、パンケーキとミルクティーだけで済まそうとするので、根菜類の料理を追加して食べさせる。

 どっちが、保護者なんだか……あぁっわしだった。


 午後からも似た感じの散策で、何点か小物などを買い、買い物を済ませて宿に帰ってきた。


 唯一、説得が講じて冒険者用のアイテムショップに踏み入れることが出来たのは幸いだった。

 旅をしていることを告げて、この地の風土・特産物などを訊く。ギルドでも訊けないこともないが、ギャラリーが多いとトラブルのもとだ。

 これが土産物屋だと過剰な情報に加えて、不要な物まで買わされそうになるからな。


 いやまあ、捕獲されたまま歩かせてもらえず、通り過ぎる景色をずっと見ているだっこ状態だった。(T^T)

 それはそれとして、いつのまに腕力付けてたんだろう。

 二の腕はぷよぷよなのに。えっ二の腕って、乙πの柔ぁらかさと同じだって?


 熱暴走により思考停止ちう。


 鍵を開けるので部屋に入る前にやっと廊下で降ろされたわし。

 今日の戦利品を代わりに持つ。持つ中に見覚えのある肉まん似とドーナツ似の入った袋があった。

 昨夜ワシが散策した道順と今回のルートが重なる。はぁーん、早いうちからつけられていたんだな。

 今朝、テーブルの袋は空っぽで、ポンコツの胸元は食べこぼしたカケラで、べっとりだったっけ。


 ここは言っておかねばなるまい。


 テーブルでハーブティーに口を付けているポンコツの向かい側に立ち、下から見上げるように話し出した。

「ねぇママー、今日はお洋服ありがとー」すーと一息吸って、「でもねーぇー、おねむのまえに甘ぁーいおやつを食べるのはダメですよぉ」と続けた。

「っ……」

 テーブルの上にある、昨夜と同じお茶菓子の袋に視線をやりかけて、外した。うん、外したね。


 説教タイムの開始だ。


 階下の食堂での夕食で中断する。部屋に運んでもらうと、チップを含めてコストがかかるからね。


 説教タイムの再開だ。


 風呂はねぇ、もう一人で入れるもん!

 些細なことだ。割愛させていただくぞと。

 さぁー明日こそ働かなきゃね。


 わしが風呂から上がり、代わりにポンコツが入った。


 ガサゴソと私物の確認。リアルと繋がるタブレットが点滅している。


 リアルのわし(二番目のヤツな)からのグチメールだ。ふざけすぎて家族の対応が冷たいとか。


 『もう、殺られちゃって下さい』だな。返信してやる。即返ってきたぞ。ボッチか! 構ってちゃんかよっ!


 もともと夜型のわしだが、今日は精神的にまいっている。ソファーに座っているだけで、眠気に勝てなくなってきた。


 おやすみパンツを履いて、おやすみなさい。



 窓の外で小鳥がさえずり、指し込む光りで明るい。


 リアルの身体でなら嬉しいが、その場合はこうにはならないか。


 腕の檻から、身体をねじりながら抜けだし、ギルド登録で手に入った冒険者向けの称号にする。

 初期から持っていた『月光の巫女』だと、昼間の活動に不向きだった。理由とかそのうち分かるかなと放置ちう。


「おーい、飯に行くゾー」

 ベッドに上がり、足で頬をぐりぐりする。昨日の時点で気づいていたが、こいつは就眠時にチチバンドをしていない。まあ必要ないサイズと言えるが、角度を変えると見えそうで、近寄りたくないんだ。


 えっ? どっかで『オレも踏まれてぇー』とか小さな声が聞こえた気がするが、気のせいかな。


 目を覚ましそうになったので、しゃがんで掌で、ぺちぺち。

 どこからともなく『ぺちぺちも萌えー』と聞こえた気がする。うん、忘れよう。

「今日は、ギルドのお仕事しないと、追い出されるよぉー」


 冒険者割引で宿泊予約を取り宿泊したら冒険者として、クエストを受けていないと通常料金になり、下手すると追い出されるので注意して欲しいとAFCから、メッセージをもらっていた。

 加えて、部屋に風呂とトイレがあるなんて、結構お高いんでしょ?

 いいえ、奥様……とならず、高い。いくらか財力のあるポンコツといえど持ち金も遠くない未来に、底をつくだろう。

 また傍目にも冒険者とは映らないし、そもそも本末転倒だし。


 先乗りしていた長期滞在中のAFCの皆さんは、ポンコツを見守る班とクエストをする班を交代で行っていたとかで、ご苦労様です。

 今は、なつかしい漢の臭いが充満している彼らの部屋にお邪魔する。

 同じポンコツのお守りとして、なにか贈り物でもしたいなと言ったら、ほっぺたをぺちぺちして欲しいと言われた。


 えっ、そんなんでいいの?


 会員番号順に、ぺちぺちとしていたけど10人ぐらいが過ぎた頃に、わしの手がヒリヒリしてきた。

 ついつい心の中で『元気ですかー!』て、叫んでいたから、きっと力が入りすぎたんだね。


「続きは、明日ね」

「じゃあ、コレを着て踏んでください」

 若いメンバーが奥からなにやらレザーぽい艶のある生地の、ヒモみたいなのを持ってこようとしてナンバーズさんに囲まれ、また奥につれてかれた。『ウチのムスメにナニ着させようてんだ』って聞こえた気がするが、あれはなんだったんだろう。


 雑で悪いけどみんなに俯せになってもらい、順番に肩胛骨辺りをぐりぐりとマッサージして回った。

 リアルのわしは、以前に(2ndでも)言ったが、100kgを越えているから、こんなことをすれば殺人行為だなと、すこし罪悪感がこみ上げてくる。

 ホントにこんな事でいいのか?


 たいして時間は掛かんなかった。ポンコツ曰く、女の鎧装着が終わったみたいなので自室に帰る。

 すっぴんでも大差ないよねって言うとものすごく睨まれた。明日に生きるわしだから、漏れてしまったことは、忘れよう。浄化魔術で、臭いも無くしたしね。


 階下の食堂に降りて、わしは味噌汁とご飯……なんてないから、コッペパンに生ハムと野菜類とコーヒーに似たのをチョイスした。

 ポンコツは蜂蜜を垂らしたパンケーキに、ジャムたっぷりのお茶。

 わしには、その狂気の甘さは凶器ですわい。


 パンケーキを山のように積み上げ、それしか喰ってないのに『甘い物は別腹だから』といいわけを繰り返すポンコツ。

 蜂蜜とマーガリンでべたべたにしたポンコツの口の周囲をナプキンで拭き取り、追い立てて部屋に帰り、冒険者の格好をさせるわし。


 装備点検『良しっ』。念のため、野営の準備もしておく。


 フロントで、今夜の食事をキャンセルし、もし今夜返ってこなければ明日の食事を自動でキャンセルするように依頼する。宿は、数日間外泊する冒険者の都合も理解していて、最初に6泊押さえているので、残り4泊分のうちに帰ってくれば、部屋はそのままに置いてもらえる。

 そして返ってこれない場合もあるので、残りの日数を含め精算をしておく。

 余談だが宿側は、この間に備品などが壊されていないかなどわしらの部屋内をチェックしている。


 金額を聞き、所持金を確認したポンコツの顔色が一瞬変わった。冒険者といえど、大金を持って移動することはトラブルを避けるためにあり得ない。必要最小限にしておいたのだ。


 足りないわけではないが前日、直接冒険とは関わらない衣類とかの購入が響いて、所持金がピンチだとやっと気づいたようだ。この旅がいい修行となればと思う。


 表情が硬くなったポンコツにもフードをかぶせ引っ張ったり押したりして、朝のギルドに着いた。


 ランクがA~Cで、いるだけで目立つAFCには、先に町の外で待機してもらっている。

 中を見回すと、ピークに少し出遅れたようだ。大柄な2人組が、バーのカウンターで飲んでいるだけで、子連れの冒険者なわしらをちらりと一瞥した。

 わしは依頼カードが張り並べられているボードの前に立ち、見上げた。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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