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ポンコツの腕

 予約投稿でしくじり、この一話を飛ばしていました。


 寝息が脳天に直撃しもんもんとしながら、腕の力が緩まったのを幸いに抜け出した。


 ベッドからソファーへと移り、ふぅーとため息をつく。

 時刻を見る魔道具を探すが、音を気にして悩んでいたが、メニュー画面を開くことを思い出した。

 わし動揺してんのか。

 まだこんな時間だったのか。にしても部屋風呂があるなんて、初日から奮発してるな。


 疲れから、眠たくなっていたが、いまはもんもんと余韻がのこる。

 寝顔は、まだまともなポンコツを見る。

 当初、旅立つまでママ役にいやがっていたのに、すっかりどっぷりママロールが抜けきらない。


 少し外を歩くことにした。

 部屋の鍵は、オートロックじゃない。どちらにせよ一つしかないので、持って出ることにした。

 プレヤー系の共通スキルとも言うべきメニュー画面を開く。

 称号を『旅の冒険者』から、最初から持っていた『月光の巫女』に付け替える。聖女のなり損ないだ。

 ミィは『陽光の神子』を持っていて、こっちは勇者のなり損ないで、これらは図書館で『聖者教会』以前の英雄伝承を調べたときに見かけたものだ。

 もとはエターナルエルフの光と闇に別れる前の伝承で、陽の勇者と

月の聖女が迫り来る脅威を協力して退けるというものだった。

 ありきたりな英雄伝説だが、これが元になっていろいろ派生していったと見ている。

 『聖者教会』以外の伝承では、エターナルエルフは、地上では神に一番近いものとされ、神の降臨、野に下ったともされ、この後に、マナの扱い方の違いからエルフとダークエルフに別れていったともされている。別れた直後は、どちらも強力な力を持ち、頭に高位であることを示すハイを冠する。

 『聖者教会』では、神の姿に似せて人族が神により作られ、人族繁栄を従属し支えるためエルフ、ドワーフなどが後から作られたとか。


 しかしなあ、現状の魔族を含めた多種多様な状態、進化論もどっちも説明しにくいよな。



 さてわしの称号は他にも幾つかあるがレベルが上がると[眷属]のスキルが手に入った。

 プリセットしておいた街探索用の衣服を身につける。


 眷属のスライムを召喚する。


 似たことは以前ヲタ村のダンジョンを潜ったときに手に入れた腕輪型の魔導具でも可能だけど時間制限があるからもっぱら自前のスキルで呼ぶ。


 わしの身体にまとわりつき、手足を延長させるだけで、シルエットだけだが、平均的な若者になる。視線がぐっと上がった。

 廊下に出て鍵を掛け、AFCの方々のいる(はずの)ドアに向かって一礼する。


 今回のAFCメンバーに初期と言うこともありナンバーズと呼ばれる会員番号が1~10の中から何人かが駆けつけてくれている。シューロが発起人で、彼は会長で会員番号は0。

 このナンバーズは別名『パワーストーン』と呼ばれ、各メンバーの頭文字を順に並べると『PowerStone』になることからで、あの魔獣退治の精鋭メンツだったりする。

 彼らはポンコツを『我らの妹』と言っている。できの悪い子ほど、カワイイのだろうね。逆にポンコツからは『お兄ちゃん(たち)』と呼ばれてるとか。"ケッ"ですよね。


 フードを深く被り階下に向かいながら存在感が希薄になる[認識阻害]をオンにする。

 街に出て、遅くまでやってそうな屋台を探した。店舗はたくさんあるが、この姿ではあまり中まで入りたくないんだ。


 ちょっと小腹が空いているのだよ。


 麺類の立ち食い屋台を見つけた。横に椅子もあるなぁ。人気(にんき)人気(ひとけ)も客足もなく閑古鳥状態か。外れの確率が高そうだが、こわいモノ見たさもあるのでここにしようっと。

 値段を見て小銭を(スライムの)掌の中に出して、差し出した。腕は長袖、掌は手袋をしている。

「おやじ、一杯くれ」

 声を掛けた相手には[認識阻害]がオフになる。

 気配すら感じていなかった店主は間近で言われて、ヒクッとしたが、それ以上は特に反応せず、代金を受け取ると作り始めた。

 少々まずくても喰う自信はある。


 出てきたのは、小ぶりのどんぶりにかん水で練った麺、穀醤のキツイ臭いのする濃いスープ、トッピングに海草、チャーシューじゃなくちぢれた感のあるバラ肉か?

 海草とはのぉ。なぜか尻がこそばゆいわい。

 濃厚な醤油の香りにめまいを感じながら、一口すする。わしは味噌がいいんじゃがのぉ。


 ラーメンのようで、微妙に別物じゃった。


 中華麺を使っていたが、スープがあの独特のラーメンスープじゃなかった。ネギとかが足りなくね?

 物足りなさはあるモノの不味くわないが旨くもねえ。しかし独特の味。ずるずる食べてるとほろ酔いな客がやってきた。絡まれるのもいやだが、座っているところにぶつかられるのもいやなので[認識阻害]をオフにして警戒した。まぁ自我警戒フィールド内には入ってこなかった。器は小さくてのどごしも悪くなくすぐに完食した。

 ふぅ、楊枝はと探すがさすがにねえか。


 まだなんか物足りないのだ。


 いまの称号だと体は幼児だか、喰うことは大人並なのだ。その分、マナの回復は早いのだが、いま消費してねえのだがね。

 少し歩くと、ホットドッグ、肉まん、ドーナツに似てる食べ物が目にはいった。

 なにかぴりっとしたモノが欲しいけど、幼児の舌には刺激があると食べられないのだ。


 肉まん似とドーナツ似のものを数個づつ買って、ブラブラとまだ灯を落としていない店舗を見て回った。

 ポンコツへお土産のつもりで、多く買いすぎたのだが、持って帰ると、『一人で出歩いて……』とママロールが発動するだろかもと悪寒が走った。

 一度歩いたところは避けて通る散策なので、見覚えのない灯のない店舗が多くなった当たりまで来ていた。

 シャッター商店街のイメージがよぎった。



#修正前:{


 満足したしそろそろ頃合いだなと、引き返すために後ろを振り向くと、ゾロゾロとヲマケがくっついてきていた。[認識阻害]がオフになってたんだね。

 食べ物の施しをねだる浮浪児でなく、「カネを出せ」とか言ってるゴロツキ関係?

 20人近くいるな。屍にするなら簡単だがなぁー。殺生やだし。

「くれてやるカネなんてねーよ」

 トスッと衝撃がしてわしの下腹当たりから、刃が飛び出した。

「けっ、バカが。早く出してりゃ痛い目だけで済んだかもしれないのによぉ」

 背後に回ったヤツが、手っ取り早くと挿して来やがった。

「そうだね。穏便に済まそうとしたわしがバカだったよ」

 前面にいる輩は、こうなることを織り込み済みだったのだろう、ニヤニヤしている。同罪だな。

 成人体のわしなら、確かに腹に刺さっていたろうけどね。股間、それもオムツを破って通過している。

「ロデ、こいつ喰っちゃっていいからね。ラブは空から、ポセは土魔法で包囲して逃がさないようにね」

 眷属であるワイバーン亜種の幼体とメタルゴーレムを召喚して逃げ出さないように指示をした。

「あっロデっ! オムツの中は、そんなにきれいにしてくれなくていいよ。そこは、らめぇーっ、はふっ」


 少し離れた暗闇の路地角にWFCのロゴが入ったジャンパーを着た男達を見かけたが、今は構っていられない。


}


#修正後:{


 そろそろ引き返すか。

 振り返ると、刃物を持った数人の男達が黒づくめの者達に取り押さえられていた。

「うちの娘になんて事しようってえのっ」

 聞き覚えがありそうな声を無視して、[認識阻害]をオンにした。

 そーっと、その場を離れようとして、暴漢を取り押さえている方達は、一人を覗いてAFCのナンバーズな方達ではないの?

 背中に、AFCならぬWFCと白く大きなロゴ風の文字が浮かび上がっているんですけど。


 連けられていたとはな。気づいていたさとうそぶくわし。

 この格好、もう知られているとはな。


}



 WFC…『ウィ・ファン・クラブ』。発起人のアンナがリーダーで、AFCのナンバーズが兼務する。『ウィ』のことを『うちの娘』と呼ぶ。後日分かることだけど、MFCもある。

 MFC…『ミィ・ファン・クラブ』。リーダーは不明。AFCのナンバーズ以外と、パリス領の冒険者の多くが加盟する。会員は『ミィ』を『お姉様』または『女王様』と呼ぶ。

 ウィ曰く「なんなんだ、この差と扱いわよぉ!」。


 速やかに宿へ戻り、一つしか無いカギを持ち出しているので、ドアは開いていた。

 食べ残った肉まん似とドーナツ似の入った袋をテーブルに置く。

 偽装を解除してぱぱっと着替え、ソファーに横になるとすぐに睡魔がやってきた。


 小鳥のさえずりに目を開けると、ベッドの上でポンコツの腕の中にいたのだが。


 WFCって、ナニ?


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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