過保護か? いえ超過保護です!
ここはアワ領ナル町。
大きな島で、4人の領主が協力して治めている。
この町は領主がいなくて、南へ離れた別の町に領主館があり衛星都市の一つだ。
門番に道を聞いていたので、冒険者ギルドへは何事もなく迷わずにこられた。
何事もというのは、おバカな縦ロールとか弱い4歳児であるわしの二人旅だからの。お近づきになりたくない奴らが近寄って来るんじゃ。
二人とも人目を避けるフードコートを羽織り、顔を隠して不気味さを醸し出しているがの。
わしの場合は、普段もかわらんかつたのぉ。
縦ロールを整髪料で軽くウエーブする程度にしたアンナにわしは、時折裾をつんつんしながら『ママ』と呼び、トシマアピールを周囲にする。ポンコツはいやがっておるのが心地よいわい。わーいっ。
旅の安全のため若い女の旅じゃなくて、子連れのおばちゃんに見られるようにな。自衛のためだからねっ。
作りはどこも似たり寄ったりだが、パリス・バケットのと比べると小さいが、ビュッフェもあり何人かがたむろしている。
「移動報告に来たヲタ村のフィメとフィナだよ」
ギルドカウンターによじ登り、狐ミミの受付嬢にニッと笑って二人分のカードとタグを置いた。
「遠いところからお疲れ様です。記録のため少しお預かりしますね」
「おねがいすまし」ぺこっとしてアンナを向き「ママー言えたよぉー」とにまっとする。演技だよ。
ちなみにアンナがフィメで、わしがフィナぢゃ。
ときおりポンコツが『フィ』を『ヒ』と発音するから、回し蹴りをお見舞いしている。
自称41kgの17歳に、『このドドが、大法螺ふくんぢゃねー』と耳元で罵ってやることにしている。
パリス領からだとアワ領は遠い。またヲタ村のギルドは出来てからたいして月日が経っていないのにこのギルドで認知されているには訳がある。
そうAFCの力だ。わしらが立ち寄るルートの露払いにAFCから数組のパーティを先行させ、その過程でヲタ村の宣伝もかねてもらっているのだ。
まぁ何かあれば、わしに連絡が来るようにもなっている。
そんなにいたんだAFCってぐらいのメンバー数の規模にわしすら驚いた。
魔獣退治にいたメンバー以外にも、パーティーを組むメンバーがイタと言うことである。
どんだけ人集めたんだよ>シューロさん。
過保護か? そうだね超が付くよね。
わしも助力はナシの方針だったのだが、身の丈に合ったサーベルにしとけと言ったのにナイト姿にこだわって腕力ないのにクレイモアを持ちたがるポンコツナイトさんなのでね。幸か不幸か、でかい剣は目立つからの。
わしの装備はガンソードならぬダガーピストルじゃ。手足が短くて、あっちのわしの装備では、振り回せんのじゃよ。コンパクトだろ。
ちなみにアンナは下位クラス中でFランク、わしは中位クラス下でDランクじゃから、どっちがDでFか
を誤魔化すために、二人分一緒に置いたんじゃよ。
すねるからのぉ。うっとおしくてかなわんわんのじゃ。
それはそれとして、「疲れちゃった。はやく、宿に行こーよ」と、ガキっぽくせかして注意を引いた。
すぐ声は無くなったが、背後からアンナのことを『子持ちにしては若く見えねえか』、『声かけようか』とかささやきが聞こえてきたからもある。
入ってくるときに見たギルドの中にいる冒険者の半数は、AFCの方達がいて、発言の主達を外へと連れ出していた。
お勤めご苦労様です。
受付嬢にリーズナブルで
「じゃあ今日はクエスト受けないで、ゆっくり休みましょうね」
「うん(ポンコツ)ママっ」
カウンター横にある観光パンフまでカウンターを肘だけで移動していくつかもらった。
だって足が届かないんだもの。
抱えられて、床に着地。飛び降りたかったけどね。
宿はしゃれた感じだ。
わしはエントランスの椅子にうんしょとよじ登って腰を掛け、足をぶらぶらさせていると、ポンコツが手続きを終えて、鍵をちゃらちゃら鳴らしながら、部屋は二階だと告げに来た。
「はーい、(ポンコツ)ママっ」
すとんと飛び降りて横に立つと、笑顔で見上げた。演技だよ。
部屋へは女中さんが先頭に立って案内してくれた。
左右の部屋は、いち早くAFCのメンバーが固めてくれているはずだ。
部屋に入るなり、一つしかない大きなベッドに突っ伏した。
あー、人前での幼女ロールは、精神的にまいってしまう。
うとっと来たとき、呼ばれた。
「フィナちゃーん、お風呂にしよっか」
「んー(ポンコツママっ)」
そういやここ何日も風呂に入ってなかったっけ。
衣服を脱いでまっぱになってから風呂場にはいると、全裸のポンコツがいた。
突然意識がはっきりした。
「あっ、きょ、今日は間に合ってますから。必要ないです」
回れ右して、わしは逃げ出して新しいオムツに履き替えているところを拉致られた。
後頭部に左右に分かれた腹の肉が当たってるんですけど。なんか先っちょのグミみたいな感触もあったりと。
言ってないけど、見た目は幼女。心はオッサンなんだぞ。
「何日もお風呂に入れなかったんだから、きれいにしなきゃね」
「いえ上官殿。自分は浄化魔術でいつも清潔であります」
「やっぱり、お湯を使わないと気持ちよくないでしょ」
「お言葉ですがそんなことはありません。質素倹約がポリシーであります」
お湯を掛けられ、背面を手洗いきれた。
「さぁ、前も流しましょぉね」
くるっと半回転させられた。勿論トドなんか見たくないので、目をぎゅっと閉じてたさ。
「お湯はこわくないよ。おめめに入っても大丈夫なんだよ」
「どもっす」
わし、言葉が安定してないっす。
「はいお湯につかりましょうね」
両脇に手を入れられて、湯船に入れられた。
目の前には交差されたポンコツの腕が見える。絶叫マシーンのバーだな。
同じ方向を向いて抱きかかえられるような体勢だ。少しばかりミツチャク度が高くないかい?
お尻の辺りにサワサワ、ゆらゆら海草があるみたいな感触がするのですがね。
試て確認したわけじゃなくて、意外と毛深いのでしょうかねえ。
のぼせ気味になっているわしは、水揚げされた後、でかいタオルでくしゅくしゅ拭かれた。
隙を見て抜け出したわしは、とりあえずオムツだけは自分ではき、ソファーを目指したが捕獲されてしまった。
「ママと一緒におねんねしよーね」
抱きかかえられて、一つしかないベッドに運ばれるわしっ。
そのまま抱き枕にされて、密着度が増す。このプルるんなニクがニクい。どこのとかは言わないぞ。
ねっ、ねむれんわい。これはどぉゆぅ罰ゲームなのじゃ?
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