暴れん坊幼女
たいへんながらくお待たせ・・・・あぁはい、待ってないですよね。
ゲスとかイヤミな奴のセリフを考えてたら胃が痛くなりました。
大幅カットで修正しました。はい、こぢんまりとね。
そこで話しを分ける予定だったけど一つに纏めました。
金属がきしむような不快音がつづいて数人乗りの二頭立て馬車が我が愛車を隠していった。
なんて迂闊な行為なんだろうと通り過ぎるのを待ったが、あろうことか真上で止まった。
そこは手引き荷車とかの小型用でその手の馬車置き場じゃないのにな。
異音にお構いなしに複数のエリアをふさぎかつはみ出してやっと停止した。
停止と同時に御者席から10代半ばの小僧が飛び降りてきて、後部側面の扉底部に格納されている乗車タラップを引き出している。
わしは、変形した愛車を引っ張り出すタイミングを計っていたけどポンコツは何かを思い出そうとしていた。
視線を辿ると馬車の乗降扉にある紋章だ。それは貴族を表す形状だった。
ポンコツはリーフ村を譲り受けて領地とするにあたり義兄がなる子爵にちゃっかりなっていた。だから王国内の貴族紋について詳しいのでなく、育つ間に覚えさせられるのだとか。貴族稼業もたいへんなのね。
因みにパパポンコツは、現在侯爵。少し前の世代で辺境伯だったそうだけど、王国が広がり先祖の功績たらなんちゃらで領地替えせずに、そのままほぼ同格の侯爵になったそうな。
敢えて言っておく、義兄を亡きものにしたのは、この"わし"ではないぞ。ある意味、"ワシ"だけどさ。
御者席にはU字型の足掛けしかないが、脇で控えていた小僧が丁寧に扱っているのは斜めに階段状になる形状で、やはり身分の高い者向けなのだろう。ただ、高級っうよかケバく品のない光沢がある。
地に固定した頃を見計らって、身繕いを整えながらちゃらくてうさんくさげな御者がやってきて、シッシッと小僧を払いのけ、昇るとノックをしてから内部の者へと声を掛けノブに手を掛け開くと、顔をほころばせて首だけ中へと差し入れてご機嫌伺いをしている。従者も兼ねてんのか。
相変わらずポンコツは。片方の頬を膨らませ指でぽんぽんとして物思いにふけっている。
指が早くなったり遅くなったりしているから、何かを思い出すのかもしれない。
視野の低いわしは、馬車の下を眺めていた。
チャラい従者に急かされたわけでもなく、やんごとなき成金のセガレまるだしのあんちゃんが出て来た。
中から何か雑音に近い音楽らしいのが聞こえてくるから外の音には気付かなかったんだな。
下に降りてから車内に残るケバイ女性二人に手をさしのべてリードして侍らせる。あー、ギャルっぽいな。自分がチベットスナギツネの目になった気がする。
ほら、予想はしてたけどね。
うーん、小僧が馬の世話を始め、従者がニコニコともみ手をしながらボンボンとハベラシギャルを伽藍へと誘導していく後ろ姿を気にしてない風に眺め、周囲の視線が減ったからしゃがんで馬車の下を確認する。
ふと目に入った馬車底面の構造が気になったのだ。
「こら、ガキっ! 馬車にナニか悪戯してたな」
「えーっ、観てただけ」
「ウソつけっ、お前みたいな下賤なガキが近づいていいもんじゃないんだぞ」
いつの間にか従者が帰ってきて、わしにいちゃもんつけてきた。中まで同行しないってことは、従者って程じゃないんだな。
「クソっ、馬車の下に誰かゴミを放り込みやがって・・・」
下を覗き込んで、我が愛車をゴミだとほざきよるわい。
「ちゃうよ、あんたが後から来たんじゃないか」
「大事な、坊ちゃまの馬車にキヅ付けておいてなに威張ってんだよ」
「あーん、どこにもキヅなんかねーよ。どこにあんだよ。あんた眼も頭も悪いんとちゃう? ねぇママ」
ポンコツは、離れたところで自分の世界に浸りきっていた。役にたたねぇーーー!
あれやこれやとチャラ御者相手に責任の追及をしていたところへ、ボンボンが帰ってきたらチャラ御者は、ボンボンの近寄ってぼそぼそと耳打ちをしてから、わしを見下ろしてニヤッと笑ってからボンボンの後ろへ回った。
話し始めたボンボンもチャラい感じだった。
そのチャラボンは、自慢話風に個人情報を語り始めた。セキュリティの概念はないのな。
領地はそんなに広くないけど、豪商から献金の功労から陞爵して近くに屋敷をもつメンドー子爵家の嫡男で、ジャンバルトくん。愛称は、ジャン。
王都に近い侯爵家の令嬢と縁談が進み、近々自分も子爵になる予定だとか。
四歳児相手に、良くそんな話が出来るな。と思ったけど、注目されたくて周囲の人にアピールしてんだね。
へいへい、ご苦労なこって。
そんで、チャラボンご自慢の馬車はというと、嫁(予定)の管理地を本拠地にしているマレビトの工房に発注した最高の技術をつぎ込ん超絶レアな一品だと吹く。
うん、超絶だかどうかは別にして、サスは木とか竹を重ね合わせて柔軟性を持たせて工夫していてその一点だけ取ってみればこの技術って和弓に近しいし優れたシナなんだけどね。
出来りゃあウイッシュボーンだけどさサイズ的には耐久性とか考えたら、鍛錬スプリングのサスだよな。ふむふむ。
「マレビト工房って幾つかあるけど、工房名って教えてもらえる?」
「ふん、知らなくても恥じゃないが訊いて驚け『金剛の神子工房』と双璧の『銀影の巫女工房』だ。マークも入っているだろう」
工房は客を選ぶので、強力なツテを使って発注したとか。自慢げに胸を張り周囲へアピールするチャラボンを余所にわしはヤレヤレ感が増し腕に巻いたブレスレットをチャラチャラと鳴らしていた。
工房はアフターサービスも事故処理も迅速だとかで、この世界には珍しい黒いスーツとサングラスをした男女数人が魔石自動車で乗り付けてきて、あっちの関係者からイロイロと聴取をしていた。
エセM○Bな格好だ。いゃ こいつらモブと呼んでもいいか。
で、おっちゃんら二人 どぉしてわしを夾むようにおるん?
わし、恰幅のいい男二人に夾まれていた。
チャラ男達は、なんか無いこと無いこと言ってる様子だ。
チャラ男達から大まかな言い分の聞き取りもほぼ終わったのか、馬車の下の状態を当事者を交え覗き込んだりしている。
マークのついたサスとか、変形したわしの愛車だとかを指し示したりしながら確認作業を進めている様子だ
「やはりセーフティが掛かっているな」
「けっ、このゴミが邪魔なんだよっ」
M○Bが下に巻き込まれている我が愛車のフレームに手を掛けたがそのままにしたのを観ていた、チャラ御者が腰を下ろして脚で蹴りやがったのをわしはブレスレットをいじりながら観ていた、
すこぶるリアクションが大げさなのかチャラ御者が蹴った側の脚を抱えて悶絶していたけど、わししらねぇーっと。
黒服達も呆れてるみたいだ。
リーダーぽいのが、こほんと咳払いしてチャラボンと話している。
長く待たされてるので、ちょっとな。近くにいる黒服に一言云ってみるか。
「なぁ、まだかかりそぅ?」
「はっはひっ、もう少々お待ち下さい」
ガキ相手にどう対応するか迷ったのかこいつ噛みやがったぞ。余韻でちょっとキョドってるようだ。虐めてないぞ。
「・・・・・・・(クレイマーじゃないんだがな)」
声を掛けた男が、あっちに対応中の一人を呼びヒソヒソと耳打ちをするとみるみる顔色が悪くなり、残りの二人へ告げると彼らも裏返った声が聞こえるようになった。なぜに?
「急かしているんじゃないよ。お仕事なんだから抜かりの無いようにやってくれたらいいんだ。ただ、あとどんくらい掛かりそうなのか訊きたかっただけだよ」
「はひっ」
なんか、わし要注意人物なの?
会話が止まった。チャラボンはなんかふて腐れている。わめき出す一歩手前かな。
おお、侍らせたギャル達になんか説明してるな。苦し紛れそうだから、あと少しでキレるかも。
もぅ 気にしないで動くことにする。
スタスタと馬車までいき、ブレスレットがぶらぶらしないようにしてから下に潜って変形した愛車を取り戻した。
なんかチャラ組も黒服達もじっと見てる。照れるぜ。
変わり果ててぐちゃっとしている我が愛車に向かって声を掛けた。
「五式ロケット丸よ『痛いの痛いのとんでけー』」
『オッケー声紋確認したよ。コマンドを実行しまーす』
愛車から合成音がして、フィルムの巻き戻しみたいに元の形状へみるみる戻っていった。
何が起こっているのか判っていないチャラ組と愛車を取り囲む黒服達。
「お仕事ご苦労様です。んーとね、時間がもったいないのでわしの参式ロケット丸で周囲に遮音などの結界を張りました。関係者だけ、内部にいます。て、事でいいかな」
ぺこりとお辞儀をして続けた。
「確認事項ですけど・・・」
チャラギャルは、やっとわしの存在に気づいたみたいで、ナニコイツな眼で観てやがる。
黒服達は、ナル町に営業所を置く職人集団「金銀パール工房(仮)」のサービススタッフ達だ。
なぉ、わしは『拗らせちゃったマッドクリエィター(MC)たち』と呼んでた時期もある。
ここから登録機器からのエマージェンシーコールがあったから慌てて事故処理にやってきた。
エマージェンシーコールは、通常のサービスコースではなく上得意の顧客からなど緊急を要する場合に発生する。もちろん社員の安否確認も兼ねている。
現場を到着したけど、コールを出した対象物がない。自社製品が充からないって事な。
チャラボン達はコールをしたのは自分たちだと主張した。
しかし彼らは顧客名簿に載っていないし、これだと主張する彼らの"馬車"は、自社製品ではない。
困り果てた黒服達の前で、わしが愛車の復元を行った。
「こんな感じだったのかな」
「「「「「はい、そうです」」」」」
わしの問いに整列した黒服がハモらないで返事をした。
「なに仕切ってんだお前は」
チャラ御者にフードの上から、ポカリと殴られてフードが外れてしまった。
日焼け止めスライムで覆っていたから痛くはなかったけどここはノリで。わしは、両手でかばうように頭を押さえてしゃがみ込んだ。
「痛ってぇー」
みるみる黒服達の顔色が色あせたように変わっていく。
「お貴族様の前でにナニ庶民のガキがほざいてんだよ。ねぇ、ジャン様」
「ふっふっ、少々の傷なら慰謝料ぐらいで緩そうかと思ったが、子供とは言え身の程を知らぬのなら(ちらっとポンコツを観て)、監督責任も込めて母子で借金奴隷になってもらうしかない」
「ジャン様のおっっしゃるとおりですよ」
しゃがんだ姿勢で反論した。
「まだ爵位もらってないんだから貴族じゃないよね」
「まだ云うか」
「近々僕は準男爵を陞爵するんだ。そして子爵の女性との縁談が進んでいるだ」
(あー、それ二度目だよ)
指のトントンが止まった。
「・・・・・メンドー・・・・・ジャン・・・・・・」
思い出したと呟いて、ぽんと両手を合せて音を出した。これをする人物に初めてであった。
「うん、縁談の話し来てたけど速攻で断ったわ。だって子爵のお父様ってヘンな噂ばかりなんですもの」
思い出せたのが嬉しくて、ポンコツまで自分の個人情報と王都の友人から仕入れていた噂話をさらけ出していた。
これでポンコツの正体が知られてしまったが、まだ些細なことかも。
前もって遮音結界を張っていてよかったよ。あとは拡散しないようにするだけだ。
口をアングリと開けて思考が停止してしまったようなチャラ男達と密着してたのに少し距離を置いてるギャル達。
あー、オカネの切れ目が縁の切れ目コースかな。
わしも肩書きを一つ晒した。
「わしの愛車『五式ロケット丸』は主に日緋色金合金を使った我が工房のオリジナルなんだけどね、毛ほどの傷でもあったらおっちゃんのとーちゃんとこの領地と私財を売り払ってもまだまだ足んないよ」
参式ロケット丸で多方向から撮影しておいた、映像を立体投影して説明をした。
愛車『五式ロケット丸』は、盗難防止などセーフティ機能が満載で、停車地にロックすれば解除しない限り移動できなくなる。
他には消費魔力が多いが衝突判定で状況により形状を変形させて"躱す"機能もある。
停車していたところへ後から衝突する形で馬車がやってきたことを了承してもらう。
黒服の中に加入していた保険の代理店を兼ねているものが居たので、後はお願いしていた。兼業オッケーな明るい職場なんだよ。
わしの愛車に対する悪意ある行為として、主犯チャラ御者。監督責任と行為の後追い容認をしたチャラボンを共犯。
加えて、自爆したが蹴りつけたチャラ御者。
根拠のない罪で、わしとポンコツを借金奴隷にすると恐喝したチャラボンを主犯、同調したチャラ御者を共犯。
わしに対する暴行。主犯チャラ御者。静止しないで傍観したチャラボンを共犯。
ギャルさんらと取引した。
彼らの暴挙を黙認したことで共犯の罪になるが、彼らが行ったことを証人として証言すれば罪を問わないってね。
結果は快諾しかないよね。
彼らには、変形と復元による消費した"魔力"チャージ料をはじめ恐喝と暴行の慰謝料を請求する。
あとはそら、犯罪者として告発するって言うのと、馬車が我が工房のニセモノだったので押収?
後処理は黒服達のお仕事ね。関係者で現地における最高位っうのはおいといてだってわし、クライアントだもん。
「んじゃねーアトヨロ」
わしらは次を目指した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
やはりσ( T - T )には、"ざまあ展開"はHARDでした。
今回、一発限りの使い捨てキャラなのに、ネームを付けました。
因みに、父親は『クセー』にしようかと考えてました。。。
"金銀パール工房(仮)"
《金》ミィ、《銀》ウィ、《パール》(語呂の勢い。敢えて言おう、ポンコツとは明言しない)。
ポン○とナナ○が工作好きなマレビト達を工房に纏めた後、外部相談役となった。
"黒服"
ユーザーの行動範囲内に何カ所か営業所を設けていて"黒イスーツ"なのは、オーナーの趣味でサービス担当の制服。
職にあぶれたマレビトの現地採用が多く、互助会的要素もある。どうも社畜、低ヒエラルキーを拗らせていたものが多い。
○ロケット丸シリーズ(ウィとミィの専用ガジェット。後にマィ、ユゥ、ミル、ウィルも利用する)
零式ロケット丸 ブレードローラーが、ホバー (ヲタダン)
壱式ロケット丸 ランドセルがガトリング (ヲタダン)
弐式ロケット丸 剣先が爆発付与する剣。ガンソード (ヲタダン?)
参式ロケット丸 魔導科学ハイブリッドドローン (ポンコツ遍路)
四式ロケット丸 サイドカー付きチャリ風カート (改をmtoW)
五式ロケット丸 防衛機能付き三輪車 (ポンコツ遍路)
※ 用意していても、ばっさりカットして搭乗してないこともあり。
フィメとフィナの巡礼遍路旅自体は続きますが、とりあえず今回で一度閉めておきます。
新しい情報が届けば再開するかもしれません。




