前方注意! ロックオン?
ナル町を抜けて西へ向かう街道を進んでいると、あとどれぐらいで「第一番 帆祠」まで着くのか道標が眼に入る。
途中見逃していなければ、三つ目だけど短い間隔ですな。
民家が少なくなり、道は山に近づいたり離れたり、おっと逆だ。これは山が近づいたり離れたりだ。
だから前方に深い茂みが道に迫っているのが見え始めたのも違和感ないのは確かだけど。
ポンコツ・ママは気づいてんのかな。
いつもはAFCの斥候職が先周りして、安全確認をやってくれてんのだけど今回は人手不足か走ってもらえてないようだ。なんのことはない、人手不足にした原因は、わしだがナニか?。
カビラ・ブラザーズ商会の後始末に交代要員が来るまでの間をお願いしてるだけだけど。
まっあの町は、いずれわしのW因子がV因子を駆逐するのだ。
それにしてもあの茂みん中にゴブリンがいるけどママどおすんのだろ。
わしの乗る三輪車のリアバーをおすママを振り返って見たけど、この表情は気づいてないな。
はぁーっとため息をついた。
「んー、 どうしたのフィナちゃん。どっか痛いの?」
「痛くはないけどね、居たの」
「えっなにが」
「ほら、あそこにゴブリンさん達が」
「ええーっ」
「ママの魅力にやってきたんだねっ」
「ええっー」
「今度は、ゴブリンの弟でも妹でもイイよ」
「いゃだぁーーー」
戦うことを放棄したポンコツが踵を返してナル町へ向かって走っていく様を見ながら、わしは肩をすくめた。
置いてけぼりしたポンコツにはヤレヤレだが、これで邪魔者はいなくなった。
不可視のドローンを飛ばし、カメラとセンサーの情報ではゴブリンが10数体、奥の茂みにホブゴブリン大のが3体居る。共闘じゃないな。
最前線に一際小さなゴブリンも混じっていて、動きに違和感がある。自主的じゃないのだ。らしくないと言うべきか。
もし戦斗が回避できなくなっても、こっちの頭数を腕輪と分身で当たれば十分だろうな。
ふむ。このまま進んで殲滅してもいいが、念のためポンコツのあとを追うことにした。
引き返す途中で、特徴のある音を轟かせてやってくるヤツがいる。手を振って、ここだぞーアピールをする。、
まぎれもなく、現世でおなじみのラフロードバイクに乗った、あんちゃんと幼女のコンビだ。
ヲタ村からこの祠巡りの島へ来る途中であった、この二人とは袖振り合う以上の縁がある。
「ロックー。おひさー」
「おう、フィナちゃんか。じゃあすれ違ったのは、やっぱフィメさんでよかったんだ」
「たぶんねー」
「なんか心ここにあらずって感じで走ってったぞ」
「うん、それね。あそこに見えてる茂みの中にゴブリンがいるみたいだから、こんどゴブリンかオークの弟か妹が欲しいなーって言ったの」
「はあ? 気持ちは分らんでもないけど、娘を放っぽって逃げて行くなんておまえのカーチャン、ホントに残念な人だな。あっ、ごめん」
「いぇ、お構いなく。ポンコツですからー」
わし、くいっくいっと後ろに回ってレビアたんとハイタッチする。相手からしたらロータッチだけど。
「フィナちゃん、こんにちわ」
「旅はどお。疲れない」
「大丈夫…」
「ロックに浮気されてない?」
「おぃおぃ」
「大丈夫、逃がさない」
ぎゅっと背中に回した腕に力を入れている。
「苦しいから、やめでぇー。チカラぬいてぇー」
いいから、そのまま背骨折っちまえ。ケッ!
「じゃ、ママを追っかけるからよろしく」
『前方注意(驚異はその背後にあり)』のハンドサインをだしてそのままレビアちゃんに手を振って分かれた。
キコキコと三輪車のペダルを踏み、元来た道を帰る。
◇
街に戻ると、気分転換にサツマイモベースのスイーツを一ヶ買ってかぶりつく。この容姿のためか、「大人の人は?」の問いに「ママと一緒にいるよ」って答えると、なぜかオマケを一ヶくれた。この体では一ヶで十分なのにな。
迷子の常習者なポンコツには屋外に出るときには、極小の追跡ドローンで尾行しているから、街の公園で黄昏れているところを確保した。
説教タイム。
最初のウチは、シュンとして反省して聞いていたけど、途中からわしの横に置いてるスイーツに視線と意識が行っているじゃないか。
ははーん。
喋りながら喰うと、みるみる絶望の表情になっていくポンコツ。
やっぱニヶ目はキツイ、半分がやっとだわ。
「シェアしよう」
食べられなくて残したとは言わないわし。このタイミングで"シェア"はあり得ないと気付けよポンコツ。
にぱぁーと、表情が変わって手を差し出してくるので、渡すとわしの歯形がしっかりついた残りをぱくっと一口で平らげた。
ヤレヤレ。あんた、本当はいいとこのお嬢さんだろ。それでいいのか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
PCゲームに"尾行"って・・・ありましたっけかね。
次に予定しているエピ3のロックと接触しました。ここから彼らと"ゴブリン"たちとの物語が始まります。




