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これはスキンシップです

#< やり直しパートとフラグ?



「冗談にも程がありますよ。我々ヴァンパイヤに対する侮辱には相当の罰を与えなければいけませんね」

「その言葉、お返しするよん」

 わしは、指を鳴らした。たいして音は鳴んなかったけどな。

「なっ! なんですかコレは・・・」

 昨日、入る前に周囲に散布しておいたわしの分身(スライム)達がヴァンパイアをおいしく頂きました。

「はい、撤収ー。合体してぇー」

 わしの前にモニョモニョと蠕く名状しがたい存在に、この地での潜伏・繁殖を命じてからポンコツの元へ返る。


#>


 わしは

「ママー、ママったらーどうしたの」

「ふわっ、あフィナちゃん?」

「お外出たら、ずるってズッコケて、また中に入っちゃったけど」

「大丈夫よ。でもなんで・・・・なにか忘れてるような」

「やっぱり空っぽの頭打ったんだ」

「そんなこと無いよ。そんなひどいこと言わないでよぉ」

 血溜まりだった跡は生活魔術の"洗浄"で消し、体も"ヒール"で傷口は塞いでおいた。失った血液は、貧血のほうが意識がはっきりしなくて、なにかとごまかしやすいだろう。まぁ朦朧としていなくても年中混濁したような方だし。


「えんしょ。あっママ、ここ破けちゃってるよ」

 ポンコツの体を後ろから押して起こすお手伝いを演技し、石に貫かれて破れた穴から除く素肌をペチペチする。モニュモニュして「ちょっとお肉が付いてる」とつぶやいたら、きっとにらまれた。まさか演技か?

「えっ、あっ。いつやったっけ・・・・」

「ママって、枝とか気がつかないで、ズンズン森の中とかえも行っちゃうもんね」

「あはは・・・・・はは、は?」

 首をかしげるが、背後からだし、すぐに意識がうつろになったから思い出せるわけがない。

 敗れた穴から手を入れて、なでなで、すりすり。これはスキンシップだからねっ。ふんすっ。


 手を引いて外に出て、携帯の椅子を組み立てる。それにポンコツを座らせ、しばらくしてAFCの5人がやってきた。肩を貸してもらい町へと返る。


「ママをお願いします」

 3人のAFCにお願いしてポンコツを宿へ送り、抱えきれない程の採取品をギルドの納品所で被依頼証明(クエストチェックカード)と伴に見知ったタイラーんトコ持ってった。あっちは分かんなくてもコッチは知ってるし。後ろには無関係を装うAFCから2人いるし。


 真面目かっ。試算しておいた金額通りが支払われて、終了印をもらった。


 あっけなさ過ぎる。ガキだからと嘗めてくれない。暴れる口実がない。つまんねぇー。

 今回のもうけで数日の滞在費にはなるから、ポンコツを休ませるのに今日明日は安静にさせて、わしは町の散策をしよう。

 そうすればナニか八つ当たりするネタが出てくるかも。わくわくだぜい。


 宿でポンコツの様子を見て、わしはフードを変えて飛び出した。いかにAFC・WFCでも昼間にわしが屋外へ一人で出るとは思うまい。ぐわっはっはっはっ。


 走り始めて、後悔した。思ってたのよか広い。地図見て来りゃ良かった。

 見つけた学校近くの駄菓子屋でドリンクを飲む。

 方角はと太陽の位置を確認する。直接だと、キツイから地面に棒を立て、影を見ながら普段忘れていたことを思い出した。ずっと頭上にあるから方角なんて分かんないんだって事。


 まずい道に迷った。いや、まだ終わらんよ。


 ギルドへの道を誰かに聞けばいい。宿とギルド間はもう覚えているし、じっと夜になるのを待って陽が無くなればわしの天下だし。なぁーんだ、焦って損したよ。

 あ゛、ぼーっとしているポンコツも時間が経つと騒ぎ出すかも。


 どぉーしょう。


 駄菓子屋で訊くことに・・・・店のおばちゃんにもらったアメ玉を握りしめた。駄菓子屋がドコにあったのかすら分からなくなった。これは日差しが強いせいだ。


 太陽の馬鹿やろー。わしはいつしか海岸の砂浜を走っていた。夕日に向かってじゃないからな。


 スナに足を取られて体力が激減だ。もうトシじゃのぉ。

 防波堤に腰を掛けて、寄せては返る波をみながら、ふつふつと込み上げている感情を言葉にして叫んだ。


「ネバーギブアーップ!」


 あっ、ギャラリーがいた。こっち向いてる。涼しい雰囲気を取り繕い、早歩きで逃げ出した。


 やべっ、よけいドコにいるのか分かんなくなった。


 ドコをどお走ったのか覚えてないけど、民家が建ち並ぶエリアにいた。五番目状なので、ハマから遠ざかる方向に進んでいくと、商家なのか蔵のある民家が多くなり少しくねりながら行くとギリ街の雰囲気になった。


 よしっ人も多いな。談笑中の3人の男達を見つけて声を掛けることにした。


「すいませーん、冒険者ギルドへはどっちへ行ったらいいですか」


 話を止めわしを見下ろす3人に、フードの奥からにまっと笑って白い歯を見せる。


「ああん、お嬢ちゃんは冒険者ギルドに用があんのかい」


 こくこくうなずいてアピールする。娼館の話しをしていたから幼女趣味ではないはずだ。


 男達はにやにや笑いアイながら、交換条件を持ちかけてきた。

「それぐらいはおやすいご用だけど、ちょっと困っていてね」

「じゃあ、お兄ちゃん達が教えてあげるけど代わりにあそこに積んである、重ーい荷物の間に入った鍵を取ってくれないか」

「狭くてね、お兄ちゃん達じゃ入れないんだ」

「うん、分かったおじちゃん」

「「「お兄ちゃんです(だ)(いやーん)」」」


 わしは男達が指し示す積み上がった荷の隙間を覗き込んだ。ナニカがあるようだけど、手が届かないから、見えてないだろうと分身を手首の下から伸ばして拾い上げた。ちょっと気づいちゃったこともあるから、仕込んでおこう。


「捕ったどー・・・・う゛ぐ」

 振り返ったわしの口を丸めた布で塞ぎ、さらにとれないように別な布をぐるっと後頭部で結び轡にして、手足を縛り大きな袋に入れられた。

 手際の良さから常習犯なんだろう。



 さすがわし、かわいいからプロにさらわれてしまったぜ。えっへん。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


 この世界、球体の外側でなくて内側という設定をすっかりぽっきり自ら忘れておりました。

 物理現象として頭上に太陽の代用品があって、その明暗で一日が形成されるので、日出は起こらないのです。

 えーと、まだ投稿して無かったかもしれませんが、この『箱庭シリーズ』は、球体の表と裏の世界が混在して進みます。

 今言えるのは[Episode 0]は、外側で内側は[1/+][2/a][3/b][5]です。ただ住んでいる者へは視覚操作と意識操作で、頭上の太陽の向こうに地面があることを認識阻害しています。


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